「あっ……」
トブの大森林にある拠点内の広間でインベントリの整頓をしていたモモンガが漏らした声に、後ろで控えていたクレマンティーヌが何事かと声を掛ける。
「如何いたしました?モモンガ様」
「あ~、いや。私としたことが、例の樹のモンスターの素材を回収するのを忘れていたなと思いだしてな。今からでも回収に向かうか……」
「それでしたらお供致します」
「え?」
クレマンティーヌが供回りを買って出るなど珍しいなと、モモンガは彼女を見た。
実のところ、クレマンティーヌは自身が追われる身であることから、普段モモンガに随伴出来ない事を悔しく思っていた。しかし、今回はエイヴァーシャー大森林の深い場所だ。人目のある街中と違い、風花聖典などの目を気にする必要はない。
「いや、ちょっと行って素材をインベントリに突っ込むだけだから別に供は―――」
そこまで口にしたモモンガは、クレマンティーヌの頭にぺたんとたたまれる犬の耳を幻視した。明らかに落ち込んでいる。
「―――いらないが、別に断る理由も無いな。付いてくると良い」
次の瞬間には幻視した耳はピンと立ち、今度はぶんぶんと揺れる尻尾を幻視した。
「は、はい!」
モモンガは転移門を開くとそれを潜った。すぐ後にクレマンティーヌが続く。
「これは……」
破滅の竜王の反応が消えた原因を調査しに来ていた調査隊の5人は、その異様な現場を見て硬直していた。
まるで天変地異でもあったかの様な荒れ具合だ。大地には巨大なクレーターが幾つも出来ており、木々はなぎ倒され、山が削れている。そんな事が可能なのは―――
「これは、破滅の竜王が行ったのか……」
この臨時に組まれた調査隊の隊長を務める漆黒聖典第1席次の男はそう考えて首を振った。
彼は破滅の竜王を支配下に置くための作戦に参加していた。その時にその凄まじいまでの力を目の当たりにしている。破滅の竜王の触手は木々を持ち上げそれを自身の元迄運び食らっていたし、吐きだした種の様な物は確かに大地をえぐるだけの威力を誇っていた。だが、今彼が目の当たりにしている惨状は、それらを遥かに上回る威力の攻撃で出来たように思えた。いや、これは本当に攻撃の跡なのだろうか?だとすれば、破滅の竜王は一体何と戦ったというのだろうか。
想像し、ゴクリと唾を呑む男の前に、突如として漆黒の門が出現した。
男は勢いよく飛びのきその門から距離を取ると、手にしていた貧相な槍を構えた。
漆黒の門から現れたのはアンデッドであった。スケルトン……ではない。恰好からして魔法詠唱者だろう。エルダーリッチだろうか?男が相手を考察していると、その後ろから見知った女が現れた。驚きのあまり男は声を漏らした。
「お前は!?第9席次?!」
声に驚いた女もつられて声を上げた。
「げえぇ!!隊長?!」
106話の【つわものどもが夢の跡】の最後の方、調査隊にチャイナ服カイレを追加しました。