エ・ランテルからカルネ村に向かう道中は、割と平和なものだった。途中ゴブリンとオーガの集団と戦闘になったものの、問題なく勝利することが出来た。その戦闘の際に見せた二人の力に【漆黒の剣】の一同が興奮を隠しきれない様子だ。
「お二人とも、お強いんですね!ミスリル…いや、もしかしたらオリハルコン級のお力が有るんじゃありませんか?」
馬車に揺られながら、ペテルが興奮気味に二人に話しかけて来た。
「ブリタちゃんがあんなに強い何て知らなかったなぁ。何で鉄級なの?どう考えても鉄級にしておくのは勿体ないでしょう。モモンガなんて銅級だし」
ルクルットに訊ねられて、ブリタは自身に昇格の話が出ている事を思い出した。
「そう言えば、組合から昇格の話が来ていたわね。最近ドタバタしていて忘れてたわ。私は銀級に、モモンガは鉄級に昇格だって。カルネ村から戻ったら組合でプレートを交換して貰いましょう」
「了解しました」
そんな【鉄の闘志】の会話にしかし他の者たちは納得していない様子だ。
「銀級、ですか。それでもつり合いがとれませんね」
ニニャとしては、この二人が自分たちと同じ階級なのが恐れ多いといった感じだ。
「焦らずとも、二人なら直ぐにミスリル急に昇格するはずなのである」
ダインがそう締めくくった。
その後談笑しながら暫く馬車に揺られ、野営に良さそうなポイントに差し掛かったところでンフィーレアが声を上げた。
「皆さん、今日はこの場所で野営しませんか?」
ンフィーレアの提案に代表してペテルが答える。
「了解しました。皆、野営の準備を」
ペテルの号令で皆が手際よく野営の準備を進める中、野営の知識など全くないモモンガはブリタの指示でテントの設営を手伝うが、これが思うようにいかない。
「モモンガ、アンタ意外に不器用なのね」
「うっ……面目ない」
「ふふ、モモンガにも苦手な事があるのね。テントは良いからニニャと薪を集めてきて」
「了解しました。ニニャさん、お手伝いします」
そんな二人の様子を見てルクルットが二人は付き合っているのかしつこく訊ねてきたり、チーム名の由来を教え合ったり、モモンガがこの世界特有の魔法に興味を持ってニニャを質問攻めにしたり、モモンガが食事が出来ない理由を必死にでっち上げたりと、野営はつつがなく進んだ。そんな中モモンガが一番興味を持った話はアゼルリシア山脈に住むというフロストドラゴンの話だった。
ドラゴンはユグドラシルでも最強の象徴だった。フロストドラゴンはドラゴンの中でも弱いモンスターだったが、トロールとは比べ物にならない程の経験値が手に入る。ブリタの次のレベル上げの場所はアゼルリシア山脈だなとほくそ笑むモモンガの横で、何となくモモンガの考えている事を察したブリタがぐったりとした顔をしていた。