一同がカルネ村に入ると割れんばかりの歓声が沸いた。ンフィーレアと【漆黒の剣】のメンバーが何事かと驚いている。どうやら歓声は【鉄の闘志】に向いているようだ。
「何だ何だ?!一体何事だ?」
事情を知らない面子が慌てふためいていると、初老の男性が近づいてきた。
「ブリタ様、モモンガ様、ようこそカルネ村へ。今だ復興は完全とは言えず、満足なおもてなしも出来ない事をお許しください」
「お構いなく、村長。本日は此方のンフィーレア・バレアレさんの護衛で来ました。直ぐにトブの大森林に薬草を取りに入りますので」
「なるほど左様でしたか、案内の者は必要ですか?」
「いえ、それには及びません」
村長の対応をモモンガがしていると、少し離れてそれを見ていたブリタにルクルットが近づいて来て小声で話しかけて来た。
「これ、どういう事?ブリタちゃんたちこの村で一体何をやったのさ?」
「話すと長くなるから簡単に言うと、人助け?ちょっと前にこの村が襲われた事があって、たまたま近くにいた私たちが助けに入ったのよ」
「へえ、村人の反応を見るとそれだけじゃなさそうだけどなぁ」
二人が話していると村長との挨拶を終えたモモンガが戻ってきた。ンフィーレアがエンリと話したがっていたが、彼女への口止めが済んでいない【鉄の闘志】がそれを防いだ。日が傾くと夜の森は危険が多いからとトブの大森林へ急かした。結局ンフィーレアはエンリと殆ど話も出来ないまま、一行はトブの大森林へ赴いた。
トブの大森林に入るとンフィーレアが森の賢王なるモンスターについて語った。トブの大森林の南部をテリトリーにしている四足獣で100年の時を生きる大魔獣だとか。今まで柵も無かったカルネ村がモンスターに襲われずにすんでいたのは、その森の賢王が居たおかげらしい。
「あの、森の賢王と遭遇した場合、倒さずに追い返して貰えませんか?」
「うぇ!?」
ンフィーレアからの高すぎる難易度の依頼にルクルットをはじめ【漆黒の剣】皆の顔が歪む。
「理由をお聞きしても?」
モモンガに訊ねられてンフィーレアが答える。
「今までカルネ村が襲われなかったのは、この周辺一帯が森の賢王のテリトリーだからだと思うんです。ですからそれを退治してしまいますと……」
「なるほど」
森を抜けたモンスターにカルネ村が襲われる心配があるという事だろう。そう判断したモモンガだが横から疑問が上がった。
「そうかも知れませんが……並みのモンスターにあの塀が突破出来るとは思えません。むしろそれが可能なのは森の賢王ぐらいなのでは?」
疑問を呈したのはペテルだ。ペテルに言われて皆がカルネ村の方を見る。
「確かに……ゴブリンやオーガにあの塀をどうにか出来るとは思えねぇな」
「倒してしまった方が安全という可能性まであるのである」
「そうですね」
【漆黒の剣】の一同の意見が一致する。ただ、その視線は【鉄の闘志】に向いており、もし森の賢王と戦闘になれば誰が相手をするのかはその目が物語っていた。
「しかし、カルネ村はこの森の浅い部分で取れる薬草を売って生活の足しにしていますし。森の賢王が居るからこそそれが可能なんです。ですからやはり……」
尚も粘るンフィーレアに【漆黒の剣】は難色を示すが、【鉄の闘志】は違う反応を示した。
「わかりました」
あまりにあっさりと、まるでそれが簡単な事であるようにモモンガが答えた。
「おいおい、相手は100年以上生きる伝説の魔獣だぞ?!」
「強者にのみ許された態度であるな」
モモンガとしては森の賢王とやらの経験値は欲しいが、それだけだ。有名人であるンフィーレアにそれしきの事で恩が売れるなら安い物だと考えた。
結局、もし森の賢王に遭遇した場合は【鉄の闘志】が相手をし、【漆黒の剣】はンフィーレアを護衛しつつその場を離れるという事に決定し、一同は森を進んだ。