森の賢王を目撃したモモンガは驚愕を露わにした。
「ふふん、どうやら某の異様に畏怖している様でゴザるな!」
森の賢王は鼻をならし、胸を張っている。しかしモモンガが驚愕した理由は畏怖によるものでは無い。
白銀の毛皮と蛇の尾を持つ四足獣……そう言われれば確かにその通りである、しかし―――
「一つ聞きたい。お前の種族名はジャンガリアンハムスターとか言わないか?」
そう聞かれると、突然森の賢王はパァーと明るい表情になった。
「なんと?!某の種族を知っているでゴザるか?知っているなら教えて欲しいでござる。子孫を残さねば生き物として失格でゴザるが故に……」
そう言われてもモモンガは困る。何故なら彼が知っているジャンガリアンハムスターとはあまりにサイズが違うのだから。目の前の獣は明らかに人間よりも大きいのだ。
「済まない、それはサイズ的に無理だ」
森の賢王は今度はしゅんと肩を落とした。中々表情豊かなハムスターの様だ。
「そうでゴザるか……」
「済まないな」
「良いでゴザる。それよりも、闘いの続きをするでゴザる!命の奪い合いでゴザるよ!!」
その言葉にブリタが直ぐに大剣を構え直すが、モモンガは既にやる気をそがれていた。大きなハムスター相手に戦いだなんて、と。それに元々倒してはいけない相手だ、真面に相手にしてもブリタの経験値にすらならない。モモンガは剣を収め、スキルを発動した。
「<絶望のオーラ・レベル1>」
モモンガがそう言うと、森の賢王は突如震え上がり、腹ばいになった。
「ひぇ~!降参でゴザる!殺さないで欲しいでゴザるよ~」
「殺さないから安心しろ」
その様子を見ていたブリタが大剣を収め近づいてくる。
「モモンガ、今何をしたの?」
「相手に恐怖を与えるスキルを使って屈服させました」
「スキル?それって武技みたいなヤツ?」
「私は武技について詳しくないですが、恐らく似たようなものですね。そう言えばブリタさんは武技は使えないんですか?」
問われてブリタは肩をすくめて首を振った。
「いえ、私は使えないわ。でも最近強くなった強くなった実感もあるし、練習すれば使えるようになると思うのよね」
「でしたらペテルさんに教わるのはどうでしょう?」
唐突なモモンガの提案にブリタに首を傾げる。
「ペテルに?」
「道中にゴブリンと戦う時に、彼は武技を使用している様でしたし、武技を手ほどきしてくれという指名依頼でも出してみてはどうでしょう?」
「なるほど……指名依頼ね。依頼を出すっていう発想がなかったわ。それじゃ戻ってペテルに頼んでみましょう」
「はい」
二人が踵を返して戻ろうとすると、森の賢王が声を掛けて来た。
「待って欲しいでゴザる!」
「ん、何だ?」
森の賢王は起き上がり姿勢を低くした。
「某、殿の強さに感服したでゴザる!忠誠を誓うので家臣にして欲しいでゴザる!」
「……は?」
静かな森にモモンガの間の抜けた声が響いた。