ブリタさん可愛がり   作:ミソカッスン

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02話・ブリタ

 モモンガの姿を見て半狂乱になった女にいきなり斬りかかられたが、パッシブスキル<上位物理無効化>をもつモモンガには女の攻撃は一切ダメージが無く、モモンガは何とか彼女を落ち着かせる為に言葉を尽くした。

 しばらく暴れた女だったが、いくら攻撃してもダメージを与えられない上に、相手は一切攻撃してこない。やがて女は攻撃を諦めて剣を収めた。

 

 「……信じられないけど、アンタはアンデットだけど生者を憎んだりしていないから、私の事も攻撃する気は無いって言うのね?」

 

 肩で息をしながら女はモモンガの言葉を繰り返した。

 

 「そうです。もしそのつもりなら貴方がモンスターと戦っている間に後ろから攻撃していたと思いませんか?」

 

 モモンガは正論を述べるが、女はまだ納得しきってはいないようだった。

 

 「…まぁ、そうね。取りあえず、約束通り報酬の銀貨20枚は渡しておくわ」

 

 女はそう言って腰のポーチから銀貨を取り出した。

 

 「そのことなのですが、私は見ての通りアンデット、なのでお金を貰っても使い道がないかもしれません。しかし、無一文というのも心もとない。なので半額の銀貨10枚にまけるので代わりに情報を頂けませんか?」

 

 「情報?」

 

 女は訝し気にモモンガを見る。

 

 「私はこの辺りの地理に詳しくありません。後は物価やモンスターの分布、その他注意すべきことなどあれば教えて欲しいのですが」

 

 「……アンデットがそんな事知ってどうするつもりよ」

 

 女はモモンガのすべてを疑っているようだ。ユグドラシルではアンデットのプレイヤーなど別に珍しくもなかったが、どうもこの世界ではアンデットは嫌われているらしい。

 

 「情報は大切だと思いませんか?例えば先ほどの銀貨20枚の価値が私にわかりません。価値を知らないと先ほどの交渉のような場面で損をする可能性が高いでしょう。逆にこちらから提示する場合はいくらの値を付ければ良いか分からない。地理に関しても近づかない方が良い場所や、逆にアンデットでも安心して生活できる場所の情報とかあるかもしれませんし、兎に角色々と教えて下さい」

 

 「……まぁ、そういう事なら」

 

 女は渋々といった感じで納得した。銀貨を半分ポーチに戻すと残り半分の10枚をモモンガに手渡し、周辺の都市についてなどの情報を離し始めた。

 

 現在モモンガがいる場所はリ・エスティーゼ王国王国と言う国の東に位置する場所らしい。

 女はこの場所から一番近くの城塞都市エ・ランテルという街を拠点に冒険者として活動しているらしい。

 

 冒険者と聞いてモモンガの心は躍ったが、実際はモモンガの想像したものと違い、報酬を受け取りモンスターを退治するのがメインの仕事らしい。

 

 (それじゃあ、ただのモンスター駆除業者じゃないか)

 

 モモンガはがっくりと肩を落とした。

 

 モモンガはその他に隣国の情報や、物価、現地の人間やモンスターの強さについてなど、様々な事を女から聞くことに成功した。

 

 かなり時間が経って、日が傾き始めたので話を切り上げることにしたモモンガは人の街に興味があるので街の中に入れないかと女に訊ねてみた。

 

 「エ・ランテルに入りたいって?いや、アンデットは入れないと思うけど……」

 

 「変装してもダメですかね?」

 

 「変装?どんな?」

 

 「例えば……」

 

 モモンガはインベントリに手を突っ込む。女から見れば手首から先が闇に飲まれて消えたように見えて、女はギョッとした。そんな女に構わずモモンガはインベントリの中を漁り、一つのアイテムを取り出した。

 怒っているようにも、悲しんでいるようにも見える不気味なお面だ。名を<嫉妬する者たちのマスク>という。

 

 「コレを付けて、手にガントレットでもすれば旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)って事で通りませんかね?」

 

 「いや、イケるかもしれないけど……物凄く怪しいわよ?怪しいってか、不気味?」

 

 「駄目ですか……それなら。<上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>」

 

 モモンガが魔法を唱えると、彼の体が漆黒の全身鎧に包まれた。背中には二本の大剣を背負っており、歴戦の戦士の風格を醸し出している。

 

 「これなら旅の戦士って事でいけませんか?」

 

 モモンガのその姿を見て女は眉間に皺を寄せ、しばし考え込む。

 

 「さっきよりはマシね。ただ、有名な冒険者でもそこまで立派な鎧を身に着けている人は少ないわ。もう少し鎧のデザインを質素に出来ない?」

 

 女の意見を聞いて、今度はモモンガの方が考え込んだ。

 

 「うーん、そうすると…鉄製に見える色に変えて、態と傷を作ったりとかですかね?」

 

 「そうね、ボロ布のマントとか、動物の毛皮とかあるとそれらしいかも」

 

 それから二人はモモンガの鎧のデザインを話し合った。

 

 「こんな感じですかね」

 

 「うん、まだちょっと豪華な気がするけど、問題ないと思う」

 

 鉄製(に見える)全身鎧に赤いボロマント、肩には動物の毛皮。腰には一本のショートソードというスタイルに落ち着いた。

 

 「あ~、でも。もしかしたら検問で兜を脱がされるかも」

 

 「一時的になら魔法で人の顔を再現することが可能ですよ」

 

 「そんなことも出来るのね。……本当に行くの?」

 

 「はい、この世界の人の街がどんなところか楽しみです」

 

 呑気に浮かれるモモンガを前に、女は深いため息を吐いた。

 

 「じゃあついて来て。私もエ・ランテルに戻るところだったし……そういえばアンタ名前は?」

 

 「あ、申し遅れました。私はすず――モモンガと申します」

 

 「モモンガ?変わった名前ね。それともアンデットの中では普通なのかしら?私はブリタよ、よろしく」

 

 二人は握手を交わしエ・ランテルに向かった。

 

 

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