【漆黒の剣】はトブの大森林の入り口付近で【鉄の闘志】の帰りを待っていた。彼らの実力は知っているが、相手は100年以上生きる伝説の魔獣だ。無事でいられる保証はない。しかし、その心配は直ぐに徒労に終わった。【鉄の闘志】がケガ一つなく無事に帰還を果たしなのだ。しかし、その後ろには見たことも無い巨大なモンスターの姿があった。森の賢王に追われて逃げて来たのかと、一瞬身構える【漆黒の剣】の面々であったが、どうもそのうな様子でない。森の賢王らしきモンスターはまるで【鉄の闘志】に付き従うように、彼らの後ろをゆっくりとついて来ていた。
無事にンフィーレアと【漆黒の剣】たちに合流した【鉄の闘志】は事のあらましを説明した。
「これが、森の賢王」
ペテルが息をのむ。
「今は私どもの支配下に加わっているので、皆さんに危害を加えることは御座いませんのでご安心ください」
(いくら強くて有名な魔獣とはいえ、見た目が大きなジャンガリアンハムスターでは格好がつかないよなぁ……)
皆を安心させる言葉を発しつつも、モモンガは頭の中で膝をついていた。しかし、皆から上った感想はモモンガの予想とは違うものだった。
「なんて精強そうな魔獣なんだ!」
(ふぁ!?)
「強大な力と英知を感じるのである!」
(強大な力?英知?」
「私たちでは皆殺しにされていましたね」
(ええ~?)
皆の意外な感想に、ひょっとして自分の感性がずれているのではないかと不安になったモモンガは、ブリタの意見も聞いてみることにした。
「ブリタさんはどう思います?」
問われてブリタは森の賢王を観察してから答えた。
「そうね、ちょっと前までの私なら怖くて直ぐに逃げ出してたんじゃないかと思うぐらいには強そうに見えるわね」
「そ、そうですか……」
どうやらこの世界の人間にはハムスターの姿は畏怖の対象らしい。
(いや、元の世界でもこのサイズなら怖がられるか?)
モモンガが自分の感性が人様とはずれてしまっている事実に打ちひしがれていると、ンフィーレアが質問してきた。
「あの、モモンガさん。森の賢王をこの森から連れ出してしまうと、縄張りがなくなったことによって、カルネ村にモンスターが襲い掛かったりしませんか?」
しかし、ンフィーレアの問に答えたのはペテルだった。
「それはそうかも知れませんが、最初にお話しした通り、あの村の塀なら余程のモンスターではない限り大丈夫ですよ。森の浅い部分で取れる薬草を売って生活の足しにしているというお話でしたが、今日の森の様子を見る限り暫くは問題なく採集は可能でしょう。理由は別途調査が必要かも知れませんが、この周辺には何故か殆どモンスターが居ませんでしたし」
「それは……いえ、そうですね」
ンフィーレアはまだ何か言いたそうにしていたが、結局それを飲み込んだ。
カルネ村に戻ると【鉄の闘志】は他のメンバーに用があるから少しだけ村の入り口で待っててほしいと良い、急いでエンリとその妹の家に向かった。
【鉄の闘志】はエンリたちを説得し、モモンガの正体については絶対に他言しないように強く言い聞かせた。大恩ある【鉄の闘志】たっての願いだ、もちろん二人は頷いた。
その後、ンフィーレアはエンリと二人きりで話がしたいという事で、その間に【鉄の闘志】はペテルに武技を教えるという指名依頼を受けて貰えないかと説得していた。
「お二人は武技を使えないんですか?あれだけお強いのに……」
「使えませんね」
「私は……なんか、こう……使えそうな感覚はあるのよね。感覚さえ掴めば使えると思うんだけど」
ブリタは自身の手をグーパーさせている。どうやらレベルアップの時の感覚を思い出しているようだ。
「ああ、その感覚は何となくわかります。私の時もそうでした。分かりました、そういう事でしたらお教えします。依頼などではなく手ほどきさせて頂きますよ」
「良いの?冒険者にとって武技は飯の種でしょ?」
「構いませんよ。正直、今回の依頼では私たちは何も出来なかったようなものでした。これぐらいの事はさせて下さい」
ペテルは剣を構えた。
「それでは、先ずは要塞からお教えします。これは前衛の戦士職にとってかなり有用な武技ですから」
そうして、ペテル先生による武技講座が開かれた。
サブタイトルの割に全然薬草採集してないですね。