「<疾風走破><超回避><能力向上><能力超向上>」
姿勢を低く屈めたクレマンティーヌが幾つもの武技を重ね掛けしていく。これを見たモモンガが「ほぅ」と声を漏らした。<能力向上>は被っているが、他の3つの武技はブリタの扱える武技と被っていない。つまり目の前の女に利用価値が生まれたのだ。
「それじゃ、行っきまっすよ~」
先ほどまでより数段早いスピードでクレマンティーヌが距離を詰める。ブリタが咄嗟に大剣を振り下ろすが、クレマンティーヌは容易くそれを避けるとブリタの肩にスティレットを突き刺した。ガキンと鈍い金属音が周囲に響いた。クレマンティーヌはブリタから距離を取ると愚痴をこぼした。
「かったいな~その鎧、一体何で出来てるのさ」
「なるほど、態と肩を狙ったのね。本当、悪趣味」
「分かる?私はね、じわじわとなぶり殺すのが大好きなの。という事で次は~鎧の無い太ももを狙いま~す。防げるもんなら防いでみなよ!」
きゃはははと笑いながらクレマンティーヌは回避能力とスピードに任せて正面から突っ込んでいく。先ほどの様に大剣を避けて右の太ももにスティレットを突き刺す予定だった。だが、実際はクレマンティーの予定通りには行かなかった。
「<能力超向上>!」
「うそ?!」
ブリタが大剣を振り下ろす。威力、スピード共に先ほどまでよりも増している。クレマンティーヌは何とかその一撃を回避した。振り下ろされた大剣は石畳を砕き、その石片がクレマンティーを襲った。動きやすさを重視して軽鎧を装備しているクレマンティーにとってそれだけでも結構なダメージとなりうめき声と共にバックステップで距離を取らざるを得なくさせた。
「テメェ……」
「ふう、ぶっつけ本番だったけど、上手く発動したみたいね」
その言葉を聞いたモモンガが反応する。
「さっきの武技、今覚えたんですか?」
「何となく感覚で使えるってわかったのよね。多分<能力向上>を習得してたからだと思う」
「ふむ……習得可能レベルに到達していると、後は見聞きするだけでも覚えられるのか?いや、最初に習得するときは確かに練習が必要みたいだったし、上位互換系の武技だけか?それとも他に条件が……」
考え込むモモンガにブリタが声を掛ける。
「考え込むのは後にしてくれない?今はコイツを片付けるのが先でしょ?」
「それもそうですね」
二人の軽い物言いがクレマンティーヌをイラつかせる。
「調子に乗ってんじゃ―――」「いつまで遊んでおるクレマンティーヌよ」
クレマンティーの言葉を遮って、ローブの男が出て来た。今度は一人だ。
「ナーイスタイミング、かじっちゃん。手を貸してよ」
「ほう、お前が手を焼くほどの相手か?」
「まぁ、ね。多分ガゼフと同じぐらいか、ちょい強いかも」
「ならば計画の邪魔になるな。良かろう、手を貸してやろう」
かじっちゃんと呼ばれた男はフードを脱いで手に持った丸い石の様な珠をかざした。