意外な事に、検問はすんなり通る事が出来た。
モモンガがエ・ランテルを訪れた目的は冒険者登録する為という適当な理由を検問で述べたため、その理由を事実にするためにモモンガとブリタの二人は冒険者組合に来ていた。
ブリタの話では誰でも簡単に冒険者になれるらしい。モンスター駆除業者のようなこの世界の冒険者にはあまり興味のないモモンガだったが、現在手持ちの資金はブリタに貰った銀貨10枚のみ。路銀を稼ぐためにも冒険者になるのは悪くない手だろうと考えた。何せモモンガのレベルは100、ブリタの話通りならモモンガにとって苦戦するようなモンスターはいないだろう。一般の人間には命がけの仕事でも、モモンガにとっては楽で安全な仕事になるわけだ。
「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用でしょうか?」
二人が受付に行くと、気だるげな雰囲気の受付嬢が対応した。
「これ、モンスターの討伐部位よ。あと、コイツの冒険者登録をお願い」
ブリタが革袋に入れたモンスターの討伐証明部位を提出し、その後モモンガを指さした。
「かしこまりました。討伐証明部位を確認させて頂きます。冒険者登録は彼方の窓口でお願い致します。読み書きが出来ない場合は受付に言って下されば代筆が可能ですのでご利用ください」
「分かりました」
モモンガは一時ブリタと別れ、登録窓口に向かった。
ブリタがその背中を眺めていると受付が声を上げた。
「まぁ!これはオーガじゃありませんか?鉄級の貴方がお一人で狩られたのでしょうか?だとすれば上に言ってランクを審査して貰わないと」
「あ、いや。それはさっきの人と二人で討伐したの。だから昇格とかはまだ……」
ブリタは申し訳なさそうにそう断った。実際、モモンガの魔法で能力の上がったお陰で倒せたが、あのままではオーガにやられていただろう」
「まぁ、あの方。結構凄い方なんですね。貴方は今後あの方とチームを組むんですか?」
「え?」
受付に言われるまでそんな事は考えた事がなかった。が、まぁそんな事にはならないだろうとブリタは考えた。モモンガと自分とではあまりに実力差があり過ぎる。モモンガにとって自分とチームを組むメリットが無い。そもそもアンデットが人間とパーティを組むのだろうか?そんな事を考えているとモモンガが銅級のプレートを携えて戻ってきた。
「いやぁ、冒険者登録ってビックリするぐらい簡単なんですね。もう済んでしまいましたよ」
戻ってきたモモンガを見て、そういえば自分の方はまだ用事が済んでいなかったと、ブリタは受付嬢をせかした。
「あの、討伐報酬を貰える?」
「あ、そうでした。私としたことが失礼いたしました。こちらオーク一体とゴブリン二体ですね。銀貨2枚と銅貨4枚になります」
「ありがと」
ブリタは報酬を受け取ると、銀貨1枚と銅貨2枚を腰のポーチにしまって、半分をモモンガに差し出した。
「はい、モモンガの分」
「え?私も受け取って良いんですか?」
「二人で倒したんだから二人で分けるのが当然でしょ、ほら」
押し付けるように渡された貨幣をモモンガが受け取る。そのやり取りを見ていた受付嬢が声を掛けて来た。
「お二人はチームを組まれるんですか?」
またその話かと、ブリタは嫌な顔をした。が、モモンガの反応は全く違った。
「あ、そうそう。先ほど冒険者登録する時に受付の人が言っていたんですけど、冒険者の多くはチームを組んで活動するとか、ブリタさんは誰かとチームを組んでいるんですか?」
「いや……私はソロだけど……」
嘘をついても仕方ないのでブリタは素直に答えた。
「それはちょうど良かった!でしたら私とチームを組んでくれませんか?」
「はぁ?!」
先ほどブリタが考えていた想像とは全く逆の提案に、驚きの声を上げる。
「私とモモンガとじゃ実力が違い過ぎない?正直、足手まといになるわよ、私」
自分で言っていてブリタは少し虚しくなった。
「ブリタさんは私に色々教えてください。冒険者やこの国の常識とか、代わりに私は装備やアイテムを提供します。あとパワーレベリングにお付き合いしますよ」
モモンガの提案にブリタが首をかしげる。
「ぱわーれべりんぐ?って何?」
「ああそうか、こっちにはそんな言葉無いのか。えーっと、何て言えば良いですかね。修行?ブリタさんの修行にお付き合いするという意味です」
「修行ねぇ……う~ん」
ブリタとしては悪い話ではない。ただ相手はアンデットだそう簡単に信用して良いものかと悩む。
「如何ですか?」
ブリタが声を掛けて来たモモンガを見る。短い付き合いだが、気の良いヤツの様に思えた。少なくともこの骸骨がブリタの命の恩人である事には違いない。
「わかったわ。これからよろしくね、モモンガ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ブリタさん」
二人は再び握手を交わした。
「チーム結成おめでとうございます。チーム登録をしておきますね。それでお二人のチーム名は如何なさいますか?」
受付嬢にそう問われ二人はパーティ名を考える。
先に考え付いたのはモモンガの方だった。
「ブリタとモモンガでブリモモでどうでしょう?」
「うん、モモンガは黙ってようか?」
どうやらこの骨にはネーミングセンスというモノは無い様だった。
その後チーム名はブリタの一存で【鉄の闘志】となった。
これはモモンガの装備が鉄だと周囲に誤認させる目的と、自身が鉄級だからというう理由からだ。なお闘志の部分は何となくで特に意味は無い。
「なるほど、チーム名は何々の何々って感じで付けるのがセオリーだったんですね。だからモモブリは駄目だったのか。だったらブリタと愉快な仲間とかどうです?」
とかモモンガが言ってきたがブリタは無視した。