ドラゴンは驚愕していた。虫に等しい存在だと思っていた人間のその戦いぶりに。振り下ろした爪は槍で弾かれ、されには自慢のブレスさえも効いていない様だ。逆に相手の突きは自分に驚くほどのダメージを与えてくる。このままではやられてしまうのも時間の問題だ。
『ぐっ!お前たち、手を貸せ!こいつは強い』
言われて、観戦していた3匹のうち2匹のドラゴンが前にでる。ただ1匹は距離を保ったまま様子を見ている。その視線は現在戦っているブリタではなくモモンガに向いていた。
『キーリストラン、何をしている!貴様も手を貸せ!!』
『……』
しかしキーリストランと言われたドラゴンは動かず、ジッと様子を伺っている。
『ちっ!臆したか!!ドラゴンの風上にも置けぬ腰抜けが!!所詮あのへジンマールの母親か。コイツを倒したら制裁を加えてヤル。覚えていろよ!』
ブリタはドラゴン3匹を前に槍を構える。
「ふぅー……3体同時は結構しんどそうね。モモンガ、支援魔法は掛けてくれないの?」
「今回は止めておきましょう。手を貸すと経験値が分散されてしまいますし、今のブリタさんなら支援魔法無しでも倒せる敵ですから」
「そういうモノなのね。分かった私一人で倒して見せるわ」
『ほざけっ!!』
ドラゴン3匹が同時にブレスを放つがブリタはそれをモノともせずに突っ込み、一番体の小さなドラゴンに槍を突き出した。
戦いは10分も経たずに終わりをむかえ様としていた。ブリタは最後に残った一番体の大きなドラゴンの喉元に槍を突き刺し、ドラゴンは絶命した。
「はぁ……はぁ……流石に疲れたわね」
「お疲れ様です、ブリタさん……それで?戦闘に参加しなかったお前はどうするつもりなのか聞こうか?」
【鉄の闘志】の2人が最後に残ったドラゴンの方に視線を向けると、そのドラゴンは地面に頭を付けていた。
「なんだ?その恰好は?」
『はっ―――これはドラゴンにおける最大の敬服のポーズでございます』
「敬服……つまり降伏するという意味で良いのか?」
『ははっ!』
キーリストランと呼ばれたドラゴンはちらりとモモンガを見やる。彼女のドラゴンのしての本能が言っている。真にヤバイ敵は人間の方ではなくこのスケルトンだと。この群れのボス、一番体の大きなドラゴン、名をオラサーダルクというが、彼は人間の事をネクロマンサーと言っていたが、どう見てもあの人間は戦士系だった。それにスケルトンの方は戦闘には一切参加せずただ観戦していた。スケルトンを前衛に出さないネクロマンサーなどいないだろう。だとすればあのスケルトンはなんだというのか、その正体は分からないが、その身に纏う法衣の価値は人間が装備している鎧を遥かに凌いでいる様に感じる。主従関係には思えないが口ぶりからしてスケルトンは人間の成長の為に手を出していたないだけの様に思えた。ならば、自分が真に誠意を見せる相手はスケルトンの方という事だろう。
「なぜ急に服従を選んだ?」
『それは勿論、御身が只ならぬお方だと見抜いたからで御座います。偉大なるお方に服従以外の道が御座いますでしょうか?いえ、御座いません!!』
「うーん……ドラゴンの素材は色々と使い道があるんだがな。服従するのか……そうか……」
素材、その言葉を聞いてキーリストランは冷汗を流す。
『い、偉大なる御方に絶対の忠誠を誓います!!』
「分かった、お前の忠誠を受け入れよう」
『ははーっ!ありがたき幸せ!!』
キーリストランは精一杯頭を地面に押し付けた。