「何?あの忌まわしいドラゴンたちが姿を消しただと?」
ここの所ドラゴンたちから宝石などの催促の声が届かない事を不思議に思ったグアゴアという亜人の氏族王であるぺ・リユロは万が一の時に備えて貢物を待たせた者数名に偵察を命じた。そして、帰還した者たちによる報告がドラゴンたちの消失だった。
「その情報は確かか?お前たちはどのくらいの期間ドラゴンたちの巣になっているあの城を見張っていた」
「7日ほどです。そこで食料が不安になったので撤退致しました。その7日間の間、一度たりともドラゴンたちの姿を目にしておりません。また、財宝等はそのまま残されているようでした」
「なんだと?あの業突く張りのドラゴンどもが財宝を手放すか?はやり何らかの理由で一時的に巣を離れたと見るべきか……一応完全に撤退したかの確認は必要だ。部隊を再編制し、今度は30日ほど粘れる装備で事に当たれ、その期間中に一度もドラゴンを見かけなければドラゴンどもは完全に撤退したとみなし奴らの財宝を奪う」
「それは危険すぎます!!」
リユロの判断に兵士は異を唱えた。
「もしその後に奴らが戻り、財宝を奪ったのが我々だと判明すれば、ドラゴンどもは間違いなく我々を滅ぼしにかかるでしょう。そうなれば我々の氏族は全滅です」
しかし、そんな兵士の意見をリユロは鼻で笑った。
「確かに、我らの氏族は大きな被害を被るだろうな。だが、考えてもみろ。我々が奴らに献上……いや、略奪された金属に加え、奴らが溜め込んだ希少金属も奪えるならば今いる子供たちの中から英雄と呼ばれるほどの強さを持つ者を多く生み出すことも可能になるだろう。このままでは我々はいつまでたってもドラゴンどもの奴隷に近い立場を脱出出来ない。いつかは手を打たねばならんのだ。こんなチャンスをみすみす見逃すわけにはいかん」
「しかし……」
尚も難色を示す兵士に、リユロはさらに不安を払拭させるような案を提示する。
「お前たちが奴らの巣を見張っている間に別働部隊にドラゴンの動向も探らせる。奴らの動向が分かれば居なくなった理由もわかるだろう。戻って来そうな気配があれば当然財宝には手をださん」
「……かしこまりました」
まだ思う所があるのだろう、兵士は渋々と言った感じで了承しその場から下がった。
(これは賭けだ。このままドラゴンどもの奴隷として生涯を過ごすか、それともドラゴンの怒りを買って滅ぼされるか……或いは……)
リユロはクアゴア氏族の未来を憂い、そっと目を細めた。