ブリタが常宿にしている低ランク冒険者御用達の宿の彼女が取っている部屋で二人は今後の方針を話し合っていた。
「当面はブリタさんのレベル上げをしたいと思うんですけど」
「ギルドで言ってたわぱーれべりんぐってやつ?具体的にはどうするの?」
二人は室内に二つあるベッドにそれぞれ腰かけて、向かい合いながら話をしている。
「とにかく沢山モンスターを倒す。ただそれだけですよ。今の職業レベルが上がりにくくなったら別の職業レベルを上げましょう」
「モンスターを?そんなんで強くなれるなら冒険者は皆強くなってるわよ」
ブリタとて冒険者として活動をしてそこそこの時間を過ごしている。
当然、モンスターを倒した数も10や20では無い。
「それってゴブリンとかですよね?自分よりレベルが低いモンスターを倒しても殆ど経験値にならないんですよ。この辺りで強いモンスターが沢山生息している場所とかご存じありませんか?」
ブリタは直ぐにある場所を思い浮かべるが、その場所の名を言い淀んだ。
「知ってるには知ってるけど……あの場所は最低でもミスリルの冒険者じゃないと太刀打ち出来ない場所よ?」
「どんなモンスターが出るかご存じですか?」
「確か、ゴブリンやオーガは勿論、バーゲストやトロールまでいる上に森の賢王っていうとんでもない化け物までいるって話よ」
モモンガの記憶に森の賢王は存在しない。ただ、バーゲストやトロールなど物の数では無い。
「う~ん…バーゲストにトロールですか……まぁ、ブリタさんのレベルならその程度の相手でも十分レベルは上がるかな?上がりにくくなったら別の場所を探しましょうか」
「ちょっとちょっと!本当に行くつもり?オーガでも精一杯だったのにトロールの相手なんて無理よ!」
「私の魔法で簡単に倒せたじゃないですか。とはいえ装備は整えないとですね。ちょっと待ってください。確か人族でも装備出来る鎧がインベントリに―――」
モモンガ徐にインベントリに手を入れる。その光景を一度見ていたブリタだったが、これには慣れそうもない。
「有った有った。これサービス終了前に雑魚モンスターからドロップしたのを宝物殿に移すほどの物でもないし、かと言って売るのも勿体なかったから何となく取っておいたんだよなぁ」
そう言ってモモンガが取り出したのは鎧をはじめとする防具一式だった。
「これセット装備なんですが、こういうのってなんか揃えたくなるんですよねぇ。どうせ装備も出来ないのに。これなら種族が人族ならレベル制限はないので装備出来る筈ですよ。セット効果も付きますしおすすめです」
【見習い
「ねぇ、これ何の金属?見た事ないんだけど?」
見習い戦乙女セットは深い蒼色している。その光沢はまるで宝石のように美しかった。デザインも至る所に羽のモチーフがあしらわれ、芸術品の様な美しさがある。
「え?さぁ…すみません。それドロップアイテムなので素材までは。フレーバーテキストも……読んだ気がしますが、覚えてないです」
「そう。ねぇ、これも凄く高価そうだけど、本当に借りて良いの?」
「え?借りる?いえいえ、差し上げますよ。無課金で手に入る
「いやいや、どう見てもゴミアイテムじゃないでしょ。金貨何枚するのよ。ひょっとしたら白金貨――いや、流石にそこまではいかないか…………本当に貰って良いの?」
「どうぞどうぞ」
モモンガが手を差し出して、貰ってくれとジェスチャーをする。それを見てブリタはさっと鎧を抱き寄せて、えへへとだらしない笑みを浮かべた。
「それと武器ですね。ブリタさんは主力武器は片手剣ですよね。それだと―――」
それから、モモンガはブリタの装備を全て見繕い、片手剣と丸盾、それと指輪を二つを渡した。全てを装備したブリタはすっかりフル装備といった様相を呈していた。
「うん、それならトロール如きの攻撃ではダメージは受けないので安心してください。武器も、トロールには再生能力がありますが、一撃で致命傷を与えれば問題ないでしょう」
フル装備のブリタを見て、モモンガは満足そうにうなづいた。
「何か鎧に着られている気分。それにしてもスカートって履きなれないから変な気分ね」
「似合ってますよ」
「そりゃどうも……」
ブリタはスカートの端をつまんでヒラヒラさせながら何とも微妙な顔をしている。
「ところで、さっきブリタさんが言っていたバーゲストやトロールが出没する場所って、何て言う場所なんですか?」
ブリタは少し溜めて答えた。
「………トブの大森林よ」