ブリタさん可愛がり   作:ミソカッスン

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45話・オリジナル武技

 「よう、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」

 

 野党の根城にしている洞窟の奥から姿を現したその男は、自身に溢れる表情でモモンガたちに歩よって行く。その男の腰には刀と呼ばれる剣が携えられており、モモンガはこの男がブレイン・アングラウスだと、確信した。

 

 「ブレイン・アングラウスだな?」

 

 モモンガにそう問われ男の目つきが変わる。場の空気が張り詰めていく、弱い者なら直ぐさにこの場から逃げ出そうとするだろう。だがモモンガはそれを意にも介さず、ブリタとクレマンティーヌも武器を構えるだけで当然逃げ出そうとはしない。

 

 「俺を知っている様だな。知っていて喧嘩を売ってきていると思って良いんだな?」

 

 はやりこの男がブレインの様だ。ブレインは刀の柄に手をかけると、腰を落として戦闘態勢に入る。

 

 「俺をそこに転がっている雑魚どもと一緒にしてくれるなよ」

 

 「当然だ。ガゼフ・ストロノーフと同程度なのだろう?お前には期待している」

 

 モモンガの言葉にブレインの肩眉がピクリと上がる。

 

 「期待だと?」

 

 「なに、こちらの話だ。さて、ブリタさん。成長を実感できる良い機会ですよ?戦士長殿と同程度だというアイツを倒してみて下さい」

 

 「え”っ?!私がやるの?!」

 

 ブリタが驚いてモモンガを見る。

 

 「この前成長が実感出来ないみたいな事言ってたじゃないですか。良い機会ですよ。どうせその鎧着てたら死にはしませんって。ささ、サクッと倒しちゃって下さい。あ、殺したら駄目ですよ?アイツからは武技を教えて貰わないといけませんからね」

 

 いつもの調子で軽く言うモモンガに軽い苛立ちを覚えつつも、ドラゴンに比べれば怖くは無いと自分に言い聞かせ、ブリタは槍を握る手に力を入れて一歩前に出た。

 

 「分かったわよ、やるわよ。やれば良いんでしょ!」

 

 半ばやけくそにブリタは槍を構えた。

 

 「…………お前、強いな」

 

 ブレインからは先ほどまでの不遜な態度は消え、今は真剣な眼差しでブリタを見ていた。

 

 「らしいわね、実感は無いけどね」

 

 対するブリタも、口調はふざけているが表情は真剣そのものだ。

 

 「最初から全力で行かせて貰うぜ。武技<能力向上><能力超向上><領域>っ!!」

 

 ブレインは幾つかの武技を使うと、その場から微動だにしなくなった。

 

 「カウンタータイプの武技かしら?」

 

 「その様だですね。クレマンティーヌ、さっきの<領域>という武技を知っているか?」

 

 クレマンティーヌはモモンガに問われ必死に記憶を探るが該当する武技は無かった。

 

 「いえ、聞いた事のない武技です。それに私が知る限りではブレインの使える武技にその様な物はなかったかと……」

 

 クレマンティーヌの言葉を聞いてブレインがニヤリと笑う。

 

 「へぇ、随分俺に詳しいんだな。この領域はガゼフに敗れた後、アイツを倒す為に生み出した俺のオリジナルだ」

 

 そのブレインの発言を聞いたモモンガのテンションが急に上がった。

 

 「オリジナル!武技を生み出しただと?!素晴らしい!素晴らしいなブレイン・アングラウス!」

 

 「あん?」

 

 先ほどまで良い顔で笑っていたブレインだが、モモンガの突然の賛辞に呆気に取られてしまう。もちろん苦心して生み出した武技が褒められるのは本来ならうれしい事なのだろう。だが、今は余りに場違いだ。

 

 「あの、モモンガ様。私の<疾風走破>も私のオリジナルですが」

 

 対抗心からか、クレマンティーヌがそう告白すると、モモンガはぐるりと首事クレマンティーの方に視線を移し、がしっと両肩を掴んだ。

 

 「なんだと?!なぜそれを早く言わない!今お前の価値は格段に上がったぞ!そうか、お前もオリジナル武技を持っているのか!どうやって生み出した?それはブリタさんにも再現が可能か?必要な条件は?武器か?レベルか?他にもオリジナル武技を持っていたりしないのか?どれぐらいの期間で生み出した?」

 

 モモンガはまくし立てるように思いつく限りの質問をクレマンティーヌに投げかけていく。

 

 「え、あ、あの。私の場合は訓練中に自然と身に付いたもので、気が付いた時には”出来る”という感覚だけがありました。ですから詳しい条件までは、それと他のオリジナル武技は御座いません。お役に立てず申し訳ございません」

 

 しゅんとするクレマンティーヌにモモンガが我に戻る。

 

 「あ、いや。ゴホン――こちらこそ、興奮して悪かったな。それに役に立たないなんて事は無いぞ?オリジナル武技を生み出した前例があるのはデカい。条件さえわかればブリタさんもオリジナル武技を生み出せるかも知れないしな。だから気を落とすな」

 

 モモンガはクレマンティーヌを慰めつつ、その肩に置いている手でポンポンと彼女を励ました。

 

 「おい、茶番は終わりか?こちとら早く始めたいんだがな」

 

 痺れを切らしたブレインが発した声には怒気の様なものが含まれていた。モモンガはゴホンと咳をすると手をスッと前に差し出した。

 

 「悪かったな、さ、私に気にせず始めてくれ」

 

 「全く、緊張感の無い奴らだぜ……さて、改めて名乗ろう。ブレイン・アングラウスだ」

 

 「オリハルコン級冒険者チーム【鉄の闘志】のブリタよ」

 

 ブリタのその名乗りにブレインは内心で首を傾げた。強くなるには強者と戦うのが一番の近道と考えたブレインは活動拠点を中心に近郊の有名な強者を調べ上げたのだが、その中に【鉄の闘志】などと言う名前は無かった筈だ。

 

 「エ・ランテルにはミスリル級冒険者までしかいないと聞いたが。別の都市から派遣されたのか?」

 

 「昨日オリハルコンに昇格したばかりよ。だけどそんなことどうでも良いでしょ?早く始めたいって言ったのはアンタじゃ無かった?」

 

 「ふっ、そうだな……来い!!」

 

 ブレインのその言葉と同時にブリタは一歩下がったのだった。

 

 

 

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