ブリタが1歩下がったのを見てブレインは機嫌を悪くする。
「おいおい、まさか今更臆したのか?」
挑発の様なその言葉を無視して、ブリタはその辺に落ちていた拳ほどの大きさの石を拾い上げ、それを思い切りブレインに向かってぶん投げた。
「<神閃>」
ブレインの目にも止まらなぬ居合い抜きがブリタが投げた石を真っ二つにする。二つに割れた石はブレインの両サイドを通り抜けて壁に小さな穴をあけた。
「何の真似だ?俺にそんなちゃちな攻撃が通用するとでも思ったか?」
益々不機嫌になるブレインに、ブリタは対照的に淡々と答えた。
「まさか、そもそも今のは攻撃じゃないわ。私の相棒は信じられないぐらい強いくせに結構慎重派なのよ。初めての敵と戦う前は情報収集を欠かさないわ。あ、相棒ってのはそこの鎧の男で、名前はモモンガよ。で、そんな奴とコンビを組んでるからかな。最近は情報収集って結構大事だなと思う様になったわけよ。初めてみるカウンター型の武技に対して無策に突っ込まない程度には、ね」
そう言いながら、ブリタは手ごろな石を拾うっては投げるという行為を繰り返し、ブレインはその悉くを切って捨てた。
「で、俺の武技の攻略法は見つかったかい?」
油断なくブリタを見据えつつブレインが訊ねる。
「そうね……ま、何とかなるでしょ。それじゃあ、こっからは私も本気を出すわ。<能力向上><能力超向上><流水加速>」<不落要塞><回避>」
ブリタが幾つもの武技を重ね掛けしていく。ブレインはその様子を伺いつつ刀を握る手に力を籠める。
ブリタはまた石を拾うとそれを先ほどまで同様にブレインに向かって投げた。
「バカの一つ覚えか!」
ブレインが居合いでその石を切り落とす。しかし、ブリタの攻撃はそれで終わりではない。
「その技、一々鞘に剣を戻さないと使えないみたいじゃない?」
ブリタは一気にブレインとの距離を詰めると槍を突き出した。肩を狙ったその一撃をブレインは寸でのところで躱す。しかし僅かに避けきれず小さな切り傷から血が吹いた。
「ちっ!」
体制を崩しながらもブレインは刀を返して振るう。ブリタはバックステップでそれを躱すと再び距離を取った。
「今のを躱すなんてやるじゃない。クレマンティーヌの真似をして肩を狙ってみたけど、腹辺りを狙った方が良かったかしらね。でもどうする?アンタのその技、槍相手には相性良くないんじゃない?」
「……」
ブレインは黙ってブリタを睨み返すと、スッと構えを解いた。
「降参かしら?」
「はん、まさか。アンタの言う通り、カウンターは相性が悪そうだ。だったらコッチから攻めるまでさ」
そう言うとブレインは刀を正眼に構えた。
「この技は、あんまり使いたく無かったんだがな」
ブレインが1歩前に出る。ブリタは槍を両手で構え反撃の体制を取った。
「行くぜ……<四光連斬>!!」
ブレインの放った刀の一振りは4つの光の軌道に分裂し、それぞれがブリタ目掛けて襲い掛かった。ブリタは咄嗟にバックステップで距離をとるが、まるで意志でも持っているかのような光の筋は必要にブリタ追う。ブリタは咄嗟に槍を回転させると4つの光の筋を弾き飛ばした。だが、完全には弾き飛ばせず、ブリタの頬から血が流れ落ちた。
「今のを防ぐか……本当に強いな」
今までの攻防で大分体力を消耗していたのか、ブレインは肩で息をしていた。
戦いの終わりは近い―――