ブリタさん可愛がり   作:ミソカッスン

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05話・おいおい、痛ぇじゃねーか。

 ブリタが眠りについた後、モモンガはインベントリから遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)というアイテムを取り出した。これは遠くを目視できるアイテムでこのアイテムで確認した場所には転移の魔法で移動できるようになる。

 モモンガの目的は勿論トブの大森林だ。ブリタに大まかな位置を確認していたモモンガは、この鏡でその場所を確認しようとしたのだが、ユグドラシルの時と操作方法が変わっていて、中々操作出来ない。しばらく鏡の前でタコ踊りを繰り広げていたモモンガだが、不意に鏡が反応した。どうやら操作に成功したようだ。

 一度コツを掴めば後は簡単だ。モモンガはぐんぐんと視界を進めていく。幾つかの村の上空を行き過ぎ、漸く森が見えて来た。森のほど近い場所に村もあるようだ。

 

 「あった、ここがトブの大森林だな。近くにあるのはカルネ村という村かな」

 

 ブリタに聞いた情報を頭の中で整理しつつ、森の中に視界を進める。

深い森の中を鏡の視界を進めてい行くが、なかなかモンスターを見つけられない。これは経験値稼ぎとしてはあまり効率は良くないかも知れない。

 モモンガがそんな事を考えていると、ようやく第一モンスターを発見した。青い巨躯に手には棍棒を携えている。ユグドラシルにもいたモンスター、トロールだ。

 

 「一匹か……ゲームの時とは違って巣があるかもしれない。少し尾行してみるか」

 

 モモンガに監視されているとも知らずにトロールはのしのしと歩き続ける。やがて、トロールは洞窟に入っていった。遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)は建造物の中は確認出来ないが、洞窟もそれに含まれるらしい。モモンガはアイテムを取り出して使用すると、鏡の視点は洞窟の中に移った。

 そこには無数のトロールがいた。何やら動物の骨をかじっている。

 

 「ビンゴ。結構な数が居るな。これなら良い経験値稼ぎになるな」

 

 モモンガがしめしめと皮算用に勤しんでいると、洞窟の奥に一匹、他のトロールと雰囲気が違うトロールがいた。

他のトロール達より一回り大きい、変異種だろう。その変異種は手に棍棒では無く大剣を持っていた。大剣と言っても人間にしては、だ。このトロールならばそれを片手剣の様に使えるだろう。

 

 「あの剣、マジックアイテムか?ちょっと気になるな」

 

 モモンガのコレクター魂がほんの僅かに擽られる。が、その程度のアイテムと判断した。

 

 モモンガはその後、ブリタが起きてくるまでの間に森の他の場所も確認したが、目ぼしい場所は見つけられなかった。精々小さなゴブリンの集落があったぐらいだ。

ブリタのレベル上げはトロールの巣で行うのが効率的だろうと判断したところで、ブリタがのっそりと身を起こした。そして、体を伸ばし大きく深呼吸をする。

 

 「ふあぁ~!……おはよ、モモンガ」

 

 「おはようございます。ブリタさん」

 

 目を覚ましたブリタが最初に目にしたのは、鏡を覗き込むモモンガの姿だった。その鏡を見るとモモンガの姿ではなく、森が映し出されている。

 

 「なに、それ?」

 

 「これは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)というマジックアイテムで、遠くを確認できるアイテムですよ。昨日ブリタさんから聞いたトブの大森林を偵察していたところです」

 

 「へぇ~、そんな便利なマジックアイテムがあるのね。どれどれ……」

 

 ブリタが布団から出てきて、モモンガの横から鏡を覗き込む。その姿は下着姿だが、あまり色気は感じさせない。それはモモンガがオーバーロードとしての特性を持っているからだろうか。

 

 (そういえば、垢BANについては検証してなかったな。とはいえブリタさんの胸を揉みしだく訳にはいかないし、諦めるか。まぁ流石にここまで来て垢BANも無いだろう)

 

 モモンガがそんな事を考えていると横から声が上がった。

 

 「それで、れべる上げってのに適した場所は見つかったの?」

 

 「ええ、準備が出来たら転移の魔法で行きましょう」

 

 「転移の魔法、ね。もう何でもありね」

 

 二人は宿の一階で朝食を取った後にトブの大森林に向かう事にした。とは言ってもモモンガは食事が摂れないので食べるのはブリタのみだ。

 

 二人が一階に降りるとチンピラ風の男がニタニタと下卑た笑みを浮かべて声を掛けて来た。

 

 「ようブリタ。男連れかぁ?冒険者を辞めて娼婦にでもなったか?」

 

 「チームを組んだのよ。あと、死にたくないならいつも見たいに新人だからと言ってコイツに絡まない方が良いわよ」

 

 「あん?何だそりゃ?私の相棒に手を出したら殺すわよって脅しか?あつあつだねぇ」

 

 「ただの忠告よ。まぁ、アンタがどうなろうが私の知ったこっちゃ無いけどね」

 

 ブリタが男の横を通り過ぎた後、モモンガがそれに続いて歩き出す。するとモモンガの前に男がスッと足を伸ばしてきた。男は相変わらず下卑た笑みを浮かべている。

それを横目で見ていたブリタが首を振る。

 

 「やれやれ、私は忠告したわよ?」

 

 男の意図を汲んだモモンガは男の足を蹴り飛ばしそのまま歩き出した。

足を蹴られた男は大げさに悲鳴を上げて転げまわる。

 

 「いっでえええええ!!折れた!骨がぁああああっ!!」

 

 それを見ていた連れの男が駆け寄る。

 

 「お、おい。少しやり過ぎじゃないか。別にそこまでしなくても――」

 

 言いかけて、連れの男は気が付いた。チンピラ風の男の足があらぬ方向に曲がったいることに。

 

 「おいおい、痛いじゃないか」

 

 声を上げたのはチンピラ風の男……では無く、モモンガだ。

 

 「これはひょっとしたら骨が折れてるかもなぁ。どう落とし前つけてくれるんだ?」

 

 「お、お前なに言って……骨が折れたのはコイツで――」

 

 連れの男が何か言っているがモモンガはそれを無視して話し続ける。

 

 「これは慰謝料を貰うしかないなぁ。大人しく慰謝料を置いて去るのと、残り()()の足もへし折られるのと、どっちが良い?」

 

 モモンガがすごむと、男たちは悲鳴をあげ、革袋を置いて、連れの男がチンピラ風の男に肩を貸して走り去っていった。

 

 「やり過ぎじゃない?」

 

 ブリタが訊ねるとモモンガは肩をすくめた。

 

 「どうせ向こうも似たような事をやるつもりだったんでしょう。問題ないと思いますよ」

 

 「それもそうね」

 

 ひと悶着あったが、ブリタは無事朝食を済ませた。

 

 

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