「お帰りなさいませ、モモンガ様」
クレマンティーヌは片膝を付いて頭を垂れて主をむかえた。
「うむ、クレマンティーヌよ。ブレインに説明をしておいてくれたか?」
「はっ、御指示通りに」
クレマンティーヌの返事に満足し、モモンガはブレインに視線を移した。
「既にクレマンティーヌに聞いていると思うが、お前を生かして連れて来たのはこのブリタさんに武技を指南して貰うためだ。さて、お前の返事を聞かせてくれるか?素直にブリタさんに武技を教えてくれるかどかの」
「アンデットだったとは驚いたな。……武技は教える。ただその前に彼女に聞きたい事がある」
ブレインは真剣な眼差しでブリタを見ている。
「なに?」
「俺との戦いのとき、最後に使った武技。六光連斬というあれは誰に教わった?お前のオリジナルか?」
「私は武技を生み出したり出来ないわよ。アレは王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフが使っていた武技よ。別に教わったわけじゃないけどね……」
「ガゼフの……はは、そうか……俺は強くなった。アイツより強くなった。そう思っていたが、アイツはさらに前を歩いていたんだな……くははは」
何やら呟いて笑っているブレインの顔は、悲しんでいる様にも喜んでいる様にも見えた。
「教えてくれ。アンタから見て今の俺とガゼフ、どちらが強い?」
不意に真剣な表情に戻ったブレインに問われブリタは真剣に考える。が、答えは出ない。
「ガゼフと戦ったことが無いから何とも言えないけど、同じぐらいじゃない?」
「同じぐらい……そうか……なぁ、アンタは何でそんなに強いのに無名なんだ?俺はエ・ランテル周辺の強者はある程度調べたが【鉄の闘志】なんて名前もブリタなんて名前も聞いた事が無かった。実力を隠していたのか?」
再び真剣な表情で問われ、ブリタはぽりぽりと頬を掻いた。
「いやぁ~、私はつい最近まで武技を一つを使う事の出来ない普通の鉄級冒険者だったから、知らなくて当然じゃない?」
「何?どういう意味だ?」
「どうもこうも、そのままの意味よ。私はそこのモモンガにれべる上げってやつをやらされるまで何処にでもいる冒険者で、最近になって急に強くなった。それだけ」
「そんな事が可能なのか?」
「可能みたいね。私も最近まで半信半疑だったけど、アンタと戦ってみて自分が強くなってるって実感したわ」
ブレインはモモンガを見やる。ブレインは強くなった、ただ最近は目に見えて成長が遅くなっている。いや、止まっているとさえ感じた。限界を感じていた自分の前に現れた一筋の光がこのアンデットだった。れべる上げなる行為がどういうものか知らないが、それを行えば自分もさらに高みへ登れるのではないかと考えたら体が勝手に動いた。手足を拘束されたまま身をよじりモモンガに滲みよる。
「モモンガ!頼む!!俺も強くしてくれ、俺はまだ、ぐはぁ!!」
言葉の途中でブレインはクレマンティーヌに腹を蹴り飛ばされ派手に吹っ飛んだ。
「おい、モモンガ”様”だろうが!調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
尚も蹴りを入れようとするクレマンティーヌをモモンガが手で制した。
「よい、クレマンティーヌ。私は気にしない」
「はっ、失礼しました」
クレマンティーヌは頭を下げるとモモンガの後ろにまで下がった。
「さて、ブレイン・アングラウス。私が君を強くするとして、私には何のメリットがある?」
「ごほ……ごほっ……、メリット?ブリタに武技を教えるだけじゃダメなのか?」
「それは君を野盗として組合に差し出さない替わりの条件だ。それだけでは弱いな」
そう言われブレインは自信が強くなれることでモモンガたちにどの様なメリットがあるかを考えた。
「例えば…俺が強くなれば新しい武技を覚えられると思う。今後俺が生み出した武技は全てブリタに教える、それでどうだ?」
「ふむ……」
悪くない、とモモンガは考えた。あくまで可能性なので無駄に終わる可能性もあるが、ブレインには既に2つも武技を生み出した実績がある。これに賭けるのは悪くないだろう。
「よろしい。ブレイン・アングラウス。私がお前を強くしてやろう。どうせちょうど色々実験したかったところだしな。クレマンティーヌ、ついでだ、お前のレベル上げも本格的行うとしよう」
「よし!」
「はっ!」
ブレインは拳を握り、クレマンティーヌは静かに頭を下げた。