「はぁ……疲れた……本当に……」
プレゼンは無事に成功し、フールーダの協力は無事に取り付けた。しかし、モモンガの足取りは、魔法省を訪れる時よりも宿に向かっている今の方が遥かに重い。
「はは……お疲れ、モモンガ。それにしても、フールーダのあの豹変ぶりには流石に引いたわね」
ブリタの言葉に、モモンガは思い出したくもない先ほどの光景を思い出す。
モモンガが魔法で出来た鎧を消すと、フールーダは一瞬驚きはしたものの直ぐに冷静になった。
「これは驚いた。モモンガ殿はアンデットの類であったか。スケルトン…いや、エルダーリッチ……いや、それとも違うな。失礼だがそなたの種族名を聞いても宜しいか?」
「へぇ……モモンガの正体を見ても意外に冷静なのね。流石は魔法省のトップって感じかしら?」
フールーダの平常心を崩さない態度に、ブリタが感心する。
「ほっほっほ、永い時を生きていると、アンデットの知り合いの1人や2人居るものだよ、お嬢さん」
「いや、普通は居ないとおもうけど……」
ブリタが訝し気な目をフールーダに向けた。モモンガは脱線した話を戻すべく、先ほどのフールーダの問いに答える。
「私の種族名はオーバーロードと申します。フールーダ殿はオーバーロードをご存じですか?」
フールーダは暫し記憶を探るが、該当する名前は出てこない。
「いや、寡聞にして知らぬな。ところで、お主が着ている装備から察するに、魔法詠唱者系の職を習得していると思われるが……実は儂には相手が第何位階までの魔法が使えるか、オーラの色で判断出来るというタレントを持っておるのだが、お主からは何のオーラも見えぬ。これはどういうことだろうか?」
「ほう。その様なタレントが?」
(おいおい、クレマンティーヌの資料にはそんな事書いてなかったぞ。知らなかった……何てことはないよな?くそぅ、後で説教してやる)
モモンガは心の中でクレマンティーヌに愚痴りながら、オーラが見えないというその理由を考えた。思い当たるのは一つしかない。自身の指に嵌めている指輪のうちの一つに探知阻害系の指輪がある。恐らくそれが相手のタレントを阻害しているのだろう。
「恐らく、原因はこれですね。この指輪は探知系の魔法を阻害できるマジックアイテムでした。その効果がフールーダ殿のタレントにも影響を与えたんだと思われます」
そう言って、モモンガは指輪を外した。
そして、数秒後には指輪を外したことを後悔した。
指輪を外したモモンガを見たフールーダの豹変ぶりは、それは凄まじかった。突然立ち上がると、目をかっぴらいて硬直したかと思えば、涙を流してその場に膝から崩れ落ちた。そして地面に額を擦り付けながらモモンガを神と讃えだした。そしてそのまま地面を這いずる様にモモンガに近づくと、モモンガの足の甲にキスをしながら、自分を弟子にしてくれと懇願しだしたのだ。
モモンガはその余りの異容にオーバーロードの姿になって初めて恐怖に似た感情を抱いた。
その後、フールーダはブリタに羽交い絞めにされながら交渉に応じた。
「我々の真の目的は、カッツェ平野で強力なアンデットを生み出すことだ。フールーダも知っての通り、アンデットは間引きしなければより強力なアンデットが発生する。それを利用し、私の魔法と合わせて強力なアンデットを生み出したいのだ。お前にはその祭に帝国から邪魔が入らないようにして欲しい」
「具体的にはどのように?」
「魔法省の地下には捕らえた
「質問が。主はあの
「いや?その様な魔法は知らんな」
モモンガの答えに、フールーダは内心がっかりとするが、顔には出さない様に努める。
「それでは、実際に暴走させるのですか?上手くカッツェ平野に誘導できますかな?」
「何をいっている?そんな不確かな方法を取るわけなかろう。あの
「今、
フールーダが身を乗り出そうとするが、ブリタが必死にそれを抑える。
「う、うむ。言ったぞ。あの程度のアンデットで良いなら日に20体ほど生み出せるな。ただし媒体となる死体が無い場合は時間が来れば消滅するがな。まぁ媒体となる死体は適当にこちらで用意するから気にするな」
「あの程度……ふは……ふははははははは!!やはり、貴方こそが神だ!!今まで魔法を司るという小神を信仰しておりましたが、今、その小神は死にました!!本日より、私の神はモモンガ様のみ!!我が信仰の全てを貴方様に捧げますぞ!!!!あーっはっはっは!!!」
「お、おう……そうか」
モモンガはドン引きしつつ、つい威厳のある喋り方など忘れて返事をした。フールーダを抑えているブリタも、正直今すぐフールーダから離れたかったが、離してしまうとモモンガの身に危険が(精神的な意味で)ありそうだと、必死に放り出したくなる衝動をこらえていた。
回想を終え、モモンガとブリタはそろってため息を吐いた。
「暫くあの爺さんとは会いたくないです……」
「同感、でも直ぐに会う事になるのよね……」
「「はぁ~」」
再び二人のため息がそろったのだった。