「陛下!!至急のご報告が!!」
執務室で仕事をしていたジルクニフの元に、選ばれし30人と呼ばれるフールーダの高弟の1人が飛び込んできた。
「何事だ!?」
「魔法省の最奥にて封印されていた死の騎士が暴走!魔法省の職員をなぎ倒して脱走しました!現在は魔法省の外の敷地内で騎士たちと戦闘中です!!」
「何だとっ――!?」
ジルクニフは以前報告を受けていた魔法省の地下にいるアンデットの事を瞬時に思い出した。確か報告ではかなりの高難度のモンスターで、制圧にはフールーダの力を必要としたはずだ。しかし、今そのフールーダはカッツェ平野に赴いていて不在だ。だとすれば―――
「四騎士を全てそのアンデットにぶつけろ!フールーダが戻るまで時間を稼げ!
ジルクニフが幾つかの指示を飛ばすと、報告に来た魔法詠唱者は勢いよく退室した。それと入れ替えに騎士が入ってくる。
「ご報告します!帝国4騎士、不動のナザミ様が謎のアンデットと戦闘後負傷!現在は神殿に運び込まれ治療中です」
「バカな!?先ほど戦闘に入ったばかりだろうが!」
ジルクニフは信じられないと言った感じで声を荒げる。
「騎士たちの損害は甚だしく、既に死者は20人を超えております。また戦闘不能の重傷者は100人を超える見込みです!」
「たった数分でか?!……一般の騎士は下がらせろ、万が一アンデットが街に出た時の事を考えて民の整備をさせる。魔法で遠距離攻撃をしながら隊長以上の騎士たちで足止めさせろ。良いか足止めだ。倒そうとするなよ」
「はっ!!」
騎士が礼をする時間すら惜しんで急いで現場に向かう。そして直ぐに別の騎士が執務室に入室して来た。
「ご報告します!アンデットは目下移動中!目的地は分かりませんがカッツェ平野方面を目指している模様です。また現場にバジウッド様が到着し指揮を執って下さっているお陰で被害は減少しつつあります」
「そうか……」
漸く届いたマシな報告に、ジルクニフは安堵の息を漏らした、が―――報告は続く。
「なお、バジウッド様とほぼ同時に現場に到着なされたレイナース様は、契約に基づいてアンデットとの戦闘を拒否、現在はアンデットと一定の距離を保ちつつ様子を伺っている状態のようです」
「……そうか」
ジルクニフは先ほどとは別の意味を持つ息を吐き眉間に皺を寄せた。
「元々レイナースとはそういう契約だ。仕方ない、ニンブルはどうした?」
「アンデットが出没したさい、かなり離れた位置にいらっしゃったようで、現在現場に向かっている最中の様です」
「そうか、お前は現場に戻って引き続き事にあたれ」
「はっ――!」
走り去る騎士の背を眺めつつ、ジルクニフは愚痴をこぼした。
「爺め、随分と面倒なペットを飼っていたものだ。きちんと責任は取って貰うぞ」