side:ジルクニフ
「ご報告します」
先刻から様々な人間が出入りを繰り返すジルクニフの執務室に皇室空護兵団の騎士が報告のため入室してきた。彼はフールーダの元に飛んだ者で本来なら彼がフールーダに報告をした時点でフールーダが転移の魔法でこの場に戻って来ているはずだった。
「私はパラダイン様をお連れするためにカッツェ平野に向かった騎士です。しかし、パラダイン様と接触したところで、魔法省の魔法詠唱者がパラダイン様に伝言の魔法を使用して来たとの事。その内容は帝都で暴れていたアンデットがカッツェ平野に移動を開始したという内容だったとか。パラダイン様はアンデットの狙いが自分にあるのではと仰っておりました。その言葉の真意は分かりかねますが、もしアンデットの狙いが本当にパラダイン様だった場合、自分が帝都に戻ればせっかく帝都を離れたアンデットを帝都に引き戻してしまう恐れがあると帰還を拒否なされました。私は真相を確かめた上で、再びパラダイン様に報告に戻れと命を受けました。報告は以上です」
「……」
ジルクニフは騎士の報告に違和感を覚えた。
(あの爺が伝言の魔法の報告をそこまで重視するか?いや、そもそも一度転移の魔法で戻り、報告の真偽を確かめた後で真実ならばもう一度転移の魔法でカッツェ平野に向かえば問題ないのでは無いか?魔法力の温存?そもそも何故死の騎士は暴走した?爺のいないこのタイミングで……爺が仕組んだ?どんな理由で……きっかけになりそうなことと言えば【鉄の闘志】の接触ぐらいだ。やつらが関係しているのか?だとすれば奴らにどんなメリットがある?王国の工作?いや、それならば死の騎士をカッツェ平野に向かわせる意味がない。それこそ暴走か?分からんな……)
「伝言の魔法を使った魔法詠唱者に確認は取ったか?」
「はっ…間違いなくその様に報告したと申しておりました」
「その者が何故伝言の魔法を使って連絡をとったか聞いたか?」
「はい、緊急事態だったからだと証言しておりました」
「ふむ……」
確かに、緊急時に置いて伝言の魔法以上に素早く連絡を取れる手段はない。しかし、緊急の事態だからこそ確実性に欠ける伝言の魔法は避けられる傾向にある。
それに――
「報告のタイミングがおかしいな。何故アンデットが暴れた時点ではなく、アンデットが帝都を出たタイミングでフールーダに報告したのだ?」
「本人曰く、その者は今日は別の場所で仕事をしており、騒ぎを聞きつけて現場に向かった時には既にアンデットはその場を離れようとしていたそうです。その後情報を精査しパラダイン様に伝言の魔法で報告したと」
「ふむ……」
(つまり、伝言の魔法で報告する様に決めたのはその魔法詠唱者個人の判断だったというわけか?それともそれも爺の指示か……情報が足りんな)
「直接その魔法詠唱者から話が聞きたい、ここに連れて来てくれ」
「はっ……」
その後、魔法詠唱者への聞き取りでも大した事は分からず、今後の方針についてジルクニフが頭を悩ませていると、死の騎士の討伐に成功したと報告がもたらされた。
結果として、アンデットの研究は危険すぎるとされ、研究は凍結された。それに伴い帝国と【鉄の闘志】との契約も打ち切られた。お詫びにと帝国側は【鉄の闘志】が今後カッツェ平野でアンデットの実験、研究をすることを黙認することになった。ただし、神殿勢力といざこざになった場合、責任は取らないとの事だった。