「う~ん、やっぱり近づけませんね」
中央区と貴族街をつなぐ道に設けられた関所で止められたモモンガは、憲兵の後ろを覗きこんでいる。
「申し訳ございませんが、いくらオリハルコン級冒険者の方々といえど、許可が無ければここをお通しする訳には参りません」
憲兵は真面目実直と言った感じの顔を崩さず、きちりとした姿勢で道を閉ざす様に立っている。
「確か、アダマンタイトなら入れるのよね?」
「はい。アダマンタイト級冒険者の方には貴族と同等の権利が認められております」
ブリタの問いに、正面を向いたままの憲兵が答えた。
「ふ~ん、どうするモモンガ?今日はもう諦めてアダマンタイトになってからもう一回くる?」
まるでアダマンタイト級冒険者に昇格することなど容易いと言わんばかりのその発言に、ようやく憲兵の表情が僅かに揺らいだ。
「そうですねぇ……ちなみに、許可が無い人間は入れないって事ですけど、誰の許可があれば入れるんですか?」
「は!許可証は役所ここの区画への出入を管理している部署が御座いますので、そちらで発行しておりますが、この区画に住んでいる貴族の方々、或いは王族の方々などの紹介でもない限り、許可証が発行されることは無いかと思われます」
「それって、フールーダの紹介でも良いの?」
「……フールーダ?……もしや、フールーダ・パラダイン様のお知り合いの方ですか?」
「ええ、まぁ……」
「パラダイン様の紹介があれば問題はありません」
「だってさ、どうするモモンガ?」
ブリタに問われ、モモンガは熟考してから答えた。
「……………いえ、止めておきましょう。フールーダも何かと忙しいでしょうからね。こんな事で手を煩わせるのは悪いでしょうから」
「そんなこと言って、ただ避けてるだけでしょ?」
「はっはっは…………」
モモンガとしては、会うたびにテンション高めで魔法の事を質問攻めにしてくるあの老人は苦手でしょうがなかった。だいいち、モモンガはゲームのシステム的に魔法を習得したのであって、理論とか新しい魔法の開発とか言われても理解が出来ない。
(新しい魔法の開発には興味があるが……あいつの相手はあまりしたくないしなぁ)
「それじゃあ、この後どうする?ホテルに戻る?」
「そうですねぁ、まだ日も高いですから、もうちょっと――」
【鉄の闘志】が今後のスケジュールについて話し合っていると、モモンガの目に貴族街の方から歩いてくる一人の少女の姿が目に映った。
その少女はまるで冒険者の様な恰好をしていた。しかしその胸元には冒険者プレートは見受けられない。なにか訳アリの貴族の子供かもしれない。
(たしか、この区画に住んでいる貴族の紹介があれば入れるんだったな―――)
鳥)まだホテルに戻るには日が高い?
スライム)ギルティ!ギルティ!
骨)骨相手に何言ってるんですか。