その日、アルシェ・イーブ・リイル・フルトという少女は、自身が所属するワーカーチーム【フォーサイト】の面々とカッツェ平野にアンデットを狩りに来ていた。
彼らだけでなく、カッツェ平野のアンデット狩りはワーカーたちにとって貴重な収入源だ。しかし、その実入りはそれほど良い物でもない。
先日、帝都で謎のアンデットが暴れるという騒動があったため、帝都はアンデットに賭ける懸賞金を少しだけ上げたが、それも僅かだ。
アルシェは2人の妹を連れて家を出ようと考えているが、それには先立つものが必要だ。出来るだけ多くのアンデットを狩ってはいるが、このままではじり貧だ。
最悪、僅かな手持ちの金貨だけで家を出なくてはならなくなる、そうなれば妹たちをどうやって養っていくか、彼女はここの所そればかりを考えていた。
「アルシェ?大丈夫?」
アンデットの討伐に集中出来ていない様子のアルシェを仲間が気遣う。声を掛けたのは
「問題ない」
アルシェは頭を振って雑念を払った。相手はスケルトンを中心とした雑魚アンデットばかりだが油断は死を招く、それがワーカーの仕事だ。
「そりゃ良かった。アルシェの魔法を頼りにしている身としては、アルシェが不調なら撤退せざるを得ないからな」
おちゃらけた感じを出しつつも、仲間を気遣うこの言葉は、【フォーサイト】のリーダー、ヘッケラン・タ―マイト。彼はアルシェの様子がおかしい事気が付いてはいたが、その内容は本人が言って来なければ詮索するきはないようだった。
「任せて欲しい、必ず役に立つ」
「おう。頼りにしてるぜ」
うっかりと、ヘッケランがアルシェの頭を撫でたくなる衝動にかられて、瞬時に手を止めた。彼女は子供扱いをされることを嫌う。そうでなくてもワーカーとして、同じチームの仲間だ。子供扱いするのは良くないだろう。
「皆さん、おしゃべりはそこまでの様ですよ」
人の良さそうな神官風の男が、腰に吊るしていたモーニングを手に取って行った。彼はロバーデイク・ゴルトロン。元神官で信仰形魔法詠唱者だ。
ロバーデイクの声に全員が臨戦態勢をとるが、イミーナがそれを僅かに緩める。カッツェ平野に立ち込める深い霧の奥から現れた2つの人影が、直ぐにスケルトンのものでは無いと分かったからだ。しかし、完全に警戒を解く訳にはいかない。もっと人に近いアンデットの可能性もあるし、同じワーカーだとしても気は抜けない。ワーカーなぞならず者と大差ない者も多いのだから。
「スケルトンじゃないわ。恐らく人間、ワーカーか冒険者だと思う」
「分かった。おーい!俺たちはワーカーだ!スケルトンと間違って攻撃しないでくれよ!!」
ヘッケランが2つの人影に声を掛けると直ぐに返事が返ってきた。
「了解です!!我々はオリハルコン級冒険者チーム【鉄の闘志】です!」
こうして、モモンガは目的のアルシェと接触する事に成功した。