「実は、王国にあるカルネ村という小さな村が最近スレイン法国の工作部隊に襲われて、村が損害を受けたのですが、その村が今移民を募集しているのです。どうでしょうアルシェさん。その村に引っ越すというのは?」
モモンガの提案に、ヘッケランが口を挟む。
「おいおいモモンガさんよ。アルシェは帝国民だぜ?そんなに簡単に王国の村に移民として住む訳にはいかんだろ?」
「考えたのですが、アルシェさんが冒険者登録してしまえば、問題なく拠点を移すことが出来ると思うのです」
「それは……」
確かに、王国に移り住むのであれば、ワーカーより冒険者として活動する方が良いだろう、というより、王国にはワーカーは居ないとヘッケランは聞いた事があった。
「提案はありがたい。でも、私には2人、妹がいる。あの子たちを置いて私だけが移り住む訳にはいかない」
アルシェは小さく首を横に振った。
「その妹さんたちも冒険者登録をして貰って、一緒に移り住めば良いのでは?」
「妹たちはまだ幼い。とても冒険者になんてなれない」
「いえ、登録だけしてして、実際は村人として生活すれば問題ないかと」
「………………なるほど。だけど、今すぐ決める事は出来ない。先ずはそのカルネ村を見てみたい。それに、妹たちにも相談したい」
「おいおい、アルシェ。見てみたいったって、王国の村だぞ?そうほいほいと行ける場所でもねぇだろ?」
「それならば、私が良いマジックアイテムを持っていますよ。とはいえ今は持ち歩いてないので、後で私たちが滞在するホテルにお越しください。勿論、心配なら皆さんご一緒にどうぞ」
「マジックアイテムって?」
イミーナが問いかけて来たので、モモンガは以前使った設定を口にする。
「私は各地を旅して回ったのですが、ある遺跡で発見したものです。遠くの場所を映し出す鏡です」
「そんなのがあるのか?!」
「ええ。あ、勿論内緒にしてくださいよ?そんなものを持っていると周囲に知られると余計な問題が発生する恐れがありますからね」
「あ、ああ……分かった」
「これ、私たちが宿泊しているホテルの場所と名前です」
そう言ってモモンガは小さな紙にメモをして、それをアルシェに手渡した。
「それでは、私たちはもう行きますので、興味があれば来てくださいね」
「分かった………ありがとう」
立ち去る【鉄の闘志】の背中を見送るアルシェを、仲間たちは静かに見守っていた。
さて、一度滞在するホテルに戻った【鉄の闘志】だが、来客時のためにブリタを残し、モモンガはトブの大森林にある拠点へと転移した。そしてそこからカルネ村に歩いて向かうと、村長たちに挨拶をして、カルネ村の中に新しい家を建築する許可を貰った。
無事許可が貰えたモモンガは、拠点制作系の魔法を用いてアルシェたちの家を建築する。彼女たちが移住を拒否した場合は別の村人か、他の移民が来た際に住まわせれば無駄にはならないだろう。
外装は鏡で確認した帝国の貴族街にある住宅のデザインを元にする。モモンガはデザインセンスに自信が無いため、殆どまる写しだ。この時、モモンガは周囲との調和もデザインであることをまるで考えていなかった為、かなり浮いてしまっている。が、そこさえ目を瞑れば立派なこの建物は文句の付け所が無いだろう。
ちなみに、建設中は危険なので決して誰も近づかない様に徹底して欲しいと伝えてある。さらに、モモンガは正体を見られない様に、自身の姿を魔法で透明化して建築いるため、周囲から見れば、突如建物が生えた様な奇妙な光景が出来上がった。
「ふむ、我ながら中々の出来だな。しかし、周囲の建物と比べて浮いてしまったな。こうなったら今後、この近くに似たような建物を建築してバランスを取るのもありか?うーむ……」
その辺はブリタさんやクレマンティーヌにでも相談するかと考えながら、転移の魔法を使用し、帝都のホテルへと戻って行った。