ブリタさん可愛がり   作:ミソカッスン

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76話・アルシェの決断

 「へぇ~、本当にこんなマジックアイテムが存在するんだな」

 

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を覗き込みながら、ヘッケランが呟いた。

 

 【フォーサイト】が【鉄の闘志】が滞在しているホテルの部屋を訪ねて来たのは、日が沈みかけた時刻だった。ロバーデイクは用事があるという事で、彼を覗く3人と、【鉄の闘志】の2人、計5人がホテルの部屋にいて、全員が鏡を覗きこんでいる。

 

 モモンガは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)の性能を見せるため、しばらく帝都を上空からの景色を映した。そして、3人が鏡の機能を理解したところで、視点を最高速度でカルネ村に移動させた。

 およそ20分ほどで、鏡はカルネ村付近までその視点を移動させ、その外壁を映し出した。

 

 「なんだ、こりゃ?これが村だってのか?」

 

 そこに映し出されたのは、要塞かと思える程立派な城壁に囲まれた村だ。視点が城壁を超えると、確かに中には村が広がっていた。所々に村にしては立派な建造物も見受けられるが、外壁程のインパクトは無い。

 

 「以前お話したように、この村は以前、他国の襲撃を受けた事があります。その経験から外壁を作り襲撃に備える様になったのです」

 

 「いや、それにしたって立派過ぎないか?」

 

 「外壁は丈夫であればあるほど良いと思いますが?」

 

 「そりゃそうだけどよ……そういう事じゃなくて……なんというか」

 

 ヘッケランが言葉を探している間にも、モモンガは鏡の視点をスイスイと進め、先刻建築した屋敷を映し出した。

 

 「あぁ、ここです。ここにアルシェさんと妹さんに住んで貰いたいと思ってます」

 

 映し出された立派過ぎる屋敷に【フォーサイト】の3人は口をあんぐりと開け、目を見開いて固まっている。そして、ブリタはというと、手で目を覆い天を仰いだ。

 

 「……やりすぎ」

 

 そうポツリと漏らしたブリタの声は誰にも届くことは無かった。

 

 「どうですアルシェさん。元貴族のアルシェさんにも納得して頂ける物件だと思いますが」

 

 「えっと……なぜ、こんな村の中に貴族向けの屋敷があるの?」

 

 アルシェに問われ、モモンガはしまったと焦る。その辺の設定は一切考えていなかたのだ。モモンガは慌てて設定をひねり出す。

 

 「あ、あぁ。なんでも王国の貴族が別荘として使うつもりだったらしいですよ?外壁を創るのにも一肌脱いだ人物だとか?ただ、その貴族の方が突然大病を患ってしまって、とても別荘などに遊びに行けない体になってしまって、別荘は村に寄付したんだとか、ただ、村人たちは今まで小さな家にしか住んだことのない人ばかりですから、あそこに住みたがる人が居ないんですよ。その点、元貴族のアルシェさんたちには持ってい来いの物件じゃないかと思いまして。ははは……」

 

 モモンガは思いつく限り矛盾の少なそうな嘘の設定をペラペラと語った。そんなモモンガをブリタが横でジトリとした目で見ていた。

 

 「そう、それは奇特な貴族。理由は分かった。でも無理、私の稼ぎではとてもあんなに立派な屋敷は借りれない。普通の民家を希望する」

 

 「ああ、その点なら問題ないですよ。あの屋敷自体は無料ですから。王国に払うのを土地分の税だけで良い筈です」

 

 「……は?」

 

 「元々カルネ村にはお金を使う習慣があまり無いんですよ。村人が住む家は村人たちが自分たちで作るし、手伝ってもらった報酬は野菜とか肉とか、あとは自分たちも相手の時に手を貸すとか、そんな感じで。だから家を売り買いするっていう習慣がないらしいです」

 

 「確かに、帝都でも国の目が行き届いていない小さな村では、そういった方法を取っている村があるな」

 

 ヘッケランが頷きながら言う。

 

 「そうね、それにしてもこの御屋敷がタダっていうのは……」

 

 イミーナは鏡を覗き込みながら屋敷をマジマジと観察している。

 

 「まぁ、タイミングが良かったんですよ。それでどうしますアルシェさん?」

 

 「正直に言う。話が上手すぎて怪しいというのが本音」

 

 アルシェはそう告げた後モモンガの目を見た(ヘルム越しに目の辺りをだが)。

 

 「だけど、この話を逃せばもうチャンスは無いかも知れない。妹たちに相談した後にはなるが、その移民の話、受けさせて貰いたいと思う」

 

 モモンガを見つめるアルシェは覚悟を決めた目をしていた。

 

 

 

 

 

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