side:フォーサイト
「行っちゃったわね」
アルシェと別れを済ませた【フォーサイト】の3人は、帝都にある酒場兼宿屋である歌う林檎亭の1階で、いつものメニューを口にしていた。そこでイミーナがポツリと呟いた。
「そうだな。最近はアルシェの魔法ありきので作戦を立ててたからな。戦略を練り直す必要がありそうだ」
昼間からエールを煽るヘッケランに、注意をする者は居ない。誰だった飲みたい時というのはあるものだし、ヘッケランにとって今だという事は皆にも分かるのだろう。
「この祭、私たちも身の振り方を考えた方が良いのかもしれませんね」
ロバーデイクがコップの水を眺めつつポツリと言う。
「どういう事?」
「アルシェがチームを抜けたの機に、お二人もワーカーという生き方を考え直して見ては?という事です」
「おいおい、ロバーデイク。今更神官らしい説教か?」
「まさか。自身がワーカーである私に、その様な事は出来ませんよ。しかしヘッケラン。何時までもワーカーのままでは、イミーナと一緒になるのも難しいのではないですか?」
「それは………」
口ごもるヘッケランに対して、イミーナは沈黙を貫いている。
「コレを機にお二人も冒険者登録をして、王国に移り住むのも有りなのでは無いですか?」
「カルネ村にって事?確かに移民を募集しているって言ったけど、別に王国じゃなくても帝国内でも良くないかしら?アルシェの場合はクソ親から逃げる意味もあったでしょうけど……」
「端的に言えば、妹分が心配じゃないか?って事だろ?それに、言ってることは分かるしな。ワーカーってのは後ろ暗い仕事もしなきゃならん事もあるし、捨て駒にされる事だってある。その点冒険者になればその辺を組合が面倒見てくれる。だが、帝国じゃあ冒険者の仕事は多くない。少なくとも帝都周辺ではな。だったら王国に移住するのは有りだ。冒険者ならそれも可能だしな」
「なるほどね。でも私たちが王国に移るとして、ロバーデイク、アンタはどうするの?」
「私は残りますよ。気ままな独り身ですし、冒険者が治癒魔法を使用するのに神殿の許可が必要な事に変わりありませんからね」
「お前だけを残して王国に行けって言うのか?」
ヘッケランがエールが入ったジョッキをダンと勢いよくテーブルに置く。
「ヘッケラン。間違ってはいけませんよ。貴方にとって、何が、誰が一番大事なのか。横をごらんなさい、その方こそ貴方が一番に考えなければならない相手ではないですか?」
「……」
ヘッケランはちらりとイミーナの方を見ると、黙ってエールを煽った。
「帝国に残るにしろ、王国に移住するにしろ、しっかりと考えてから選択した方が良いと思いますよ。後悔が少なくて済むように―――」
その後、3人は黙って食事を続けた。3人を取り囲む歌う林檎亭の騒音をBGMにして。