アルシェが【鉄の闘志】の二人の後について森を行くと一軒のコテージが建っていた。そのコテージの横の開けた場所に、4つの人影が見える。
「ブレインのやつ、また剣の修練をしているのね」
「あれは趣味ですね。クレマンティーヌも付き合っているみたいですね」
【鉄の闘志】の会話を聞きながら、アルシェは人影を注視する。恐らく、あの4つの人影のうち、1つはブレインという人物。もう1つはクレマンティーヌという人物の者だろう。だとすれば、後の2つは?
そこに居たのはアンデットだった。アルシェは咄嗟に杖を構えるが、ドラゴンの時の様にブリタに止められた。
「アレはネクロマンサーが召喚したアンデットよ。あの二人の訓練の相手をさせているだけ。決して襲って来ないから安心して」
「……わかった。それで、そのネクロマンサーは何処?その人も【鉄の闘志】のチームのメンバー?」
「そうね。ちなみにあの2人は【鉄の闘志】じゃないわよ?【鉄の闘志】は私とモモンガの2人のチームだから」
「……?さっきはネクロマンサーが居ると言っていた。少なくとも三人は居ないとおかしい。二人とも威力系魔法詠唱者ではないはず」
「ん?それは装備で判断しているのか?だったら浅はかだな。相手を欺く為に戦士の振りをしているだけかもしれないぞ?」
モモンガが腰の剣をポンポンと叩く。この剣はお飾りかもよ?っと言っている様だ。
「違う。私は相手が使えるのが何階位の魔法か、オーラで見えるタレントを持っている。でも、2人からはオーラがまるで見えない。つまり2人とも魔法詠唱者、少なくとも威力系魔法詠唱者ではない」
「ほう、フールーダと同じタレントを持っているのか」
「そう。だから分かる。二人とも魔法は使えない」
「残念ながらアルシェ嬢。君のタレントは万能ではない。私は探知阻害の指輪を装備している。君が私のオーラを確認出来ないのはその指輪のせいだろう」
「指輪?そんなマジックアイテムは聞いた事が無い」
「その指輪を外す前に、先ずは魔導書を渡しておこうか」
モモンガは徐にインベントリに手を突っ込んだ。突如モモンガの手が闇に飲み込まれたのを目撃したアルシェはビクリと肩を揺らした。
「な、何?!どうなっている??!?!」
「初めてだと驚くわよね、あれ」
ブリタは流石に慣れてしまっているが、アルシェのリアクションに分かる分かると頷いている。
「これはインベントリという…スキル?まぁ、魔法の様なものでな。中に色々なアイテムを収納しておける便利な能力だ。っと、あった、これならレベル1で装備出来るはずだ」
モモンガがインベントリから取り出したのは【初心者の書】という魔導書系の初期装備だ。分厚いハードカバーのその本は、角を金具で装飾されていて、表紙にはアルシェには読めない文字で何かが書かれている。
「この文字は、どこの国の文字?」
「さて?私は知らないな。まぁ、その本は只の武器だ。君が今まで使っていた杖の代わりだと思ってくれ」
「……分かった」
アルシェはモモンガから魔導書を受け取り、パラパラとページを捲ってみるが、中の文字もはやり読むことは出来なかった。
「さてと、それでは次に約束通り指輪を外すが、指輪を外すためには鎧が邪魔だな」
そう言ってモモンガは魔法で出来た鎧を消した。