「スケルトン……?」
モモンガの鎧の中の姿を見たアルシェの最初の一言がそれだった。
「スケルトンでは無いが、まぁ似たようなものだな。オーバーロードという種族だが、知っているか?」
「……知らない」
モモンガの正体がアンデットだと知ったアルシェは、モモンガから一歩距離を取り杖を握りしめる。
「当然と言えば当然だけど、警戒されちゃったわね」
「まぁ、この世界ではアンデットは人間、というか生命体の先天的な敵らしいですからね。しかしこの程度の反応ならまだマシなのでは?ブリタさん何ていきなり攻撃してきましたからね」
「ちょっと、責めないでよ。普通いきなりスケルトンに出会ったら攻撃するでしょ」
「別に責めていませんよ。さてアルシェ、確かに私はアンデットだが人間を憎んでなどいないし、危害を加えるつもりも毛頭ない」
「……わかった」
アルシェは素直に杖から手を離すと、警戒を解いた。
「あら?案外素直に信じるのね?相手はアンデットよ?」
「アンデットの中にも知能を持っている個体が居ることは知っている。それに、モモンガさんは私たちに救いの手を伸ばしてくれた。少なくとも、私たち家族から搾取することしか考えてない商人や、簡単に切り捨てた貴族や王族より信じられる」
「確かに、人間の中にだって野党とか詐欺師とかいるものね。そんなやつらよりモモンガの方が信じられるのは同感だわ」
うんうんと頷くブリタに、モモンガが怪訝な態度を示す。
「比較対象が微妙過ぎませんか?そりゃ聖人君主みたいなのと比べられても困りますけどね」
「ははは、いじけないでよモモンガ。モモンガの事はちゃんと相棒として認めてるってば」
ブリタは機嫌良さそうに、モモンガの背中をバシバシと叩いた。
「まぁ良いですけどね。それではアルシェ。今から君のタレントの能力を妨害している私の指輪を外す。―――が、出来るだけ平常心を保ってほしい。フールーダの様なリアクションを取られると疲れるのでな」
「モモンガさんは師とあったことがあるの?」
「師?」
モモンガのオウム返しの問いに、アルシェがコクリと頷いてから答えた。
「私は一時期、フールーダ・パラダインに師事を仰いでいた。両親が貴族位をはく奪されてからはそれどころでは無くなってしまったが」
「そうだったのか。とにかくその通りだ。私はフールーダに会った事があり、その祭に指輪を外して見せたら、あの老人は狂喜乱舞してな。爺さんに泣きながら足の甲にキスをされるのは中々の恐怖体験だったぞ?二度と御免被りたいな」
アルシェは頭の疑問符を浮かべる。彼女が知るフールーダは厳格な人間であり。何事にも動じそうにない人物だ。とてもモモンガが言うような姿は想像が出来なかった。
「とは言え、あんな変態はそうそう居ないだろう。では、指輪を外すぞ?」
モモンガは徐に指輪を外した。
その瞬間、モモンガの周辺のオーラが爆発した。それは凄まじい力の本流となって周囲を荒れ狂う。
師をも超える圧倒的な力。彼は一体第何位階の魔法の使い手なのだろうか。
その考えは恐怖となってアルシェの体を震わせた。
そして、その恐怖に勝てなくなったアルシェは吐物をぶちまけてしまった。