ちょっと話が飛びます。
side:カルカ
アルシェがレベル上げを始めてから10日が過ぎた。今ではアルシェはレベル20代半ば程になり、モモンガの目算よりも早く第5位階魔法を使用出来るようになっていた。
その辺りから、アルシェのレベルの上りが遅くなってきたので、モモンガは亜人の中でもある程度のレベルのある者にターゲットを絞ることにした。
亜人たちは色々な部族ごと、種族ごとに分かれており、各部族を束ねる長と呼ばれる者たちはある程度のレベルがある様だった。そこでモモンガはアルシェを連れて各部族の中心部に転移し、その場の亜人たちを全滅させて経験値を稼いだ。
アルシェのレベル上げを開始して20日が過ぎ、アルシェのレベルが30を超え、第6位階の魔法が行使出来るようになり、亜人の集落の半分が陥落したころ、その異変は亜人たちのみならずローブル聖王国の人間たちの耳にも届く事となった。
「カルカ様。お耳に入れたい事が――」
ローブル聖王国の国王である聖王女、カルカ・ベサーレスの元に、数枚の資料を片手にやってきたのは、聖王国神官団の団長で、神殿の最高司祭であるケラルト・カストディオだ。
「アベリオン丘陵の亜人たちの事かしら?」
「はい、黒色の報告では亜人たちはかなり混乱している様です。不確かな情報ではありますが、既に10傑のうち、半数が討伐された可能性が高いとの事です」
「そう―――」
カルカはケラルトから資料を受け取ると、それに目を通していく。
「それで、亜人たちを討伐して回っている者について、何かわかったのかしら?」
「いえ、目撃情報から察するに冒険者の様なのですが……」
「冒険者……聖王国が何年にもわたり苦汁を舐めさせられてきた亜人たちを手玉に取れるほどの冒険者ですか。アダマンタイト級冒険者チームが、一体何チーム終結すればその様な事が可能なのでしょうね?」
こんなものは当てにならないとでも言うように、カルカは手に持っていた資料をぱさりと机の上に置いた。
「数も質もですが、その目的までも検討が付きません。冒険者なら依頼を受けて行動するはずですが、冒険者組合に確認したところ、そんな馬鹿げた依頼を出す奴も受ける奴もいるわけ無いと一蹴されてしまいました」
「ふふふ、それはそうでしょうね」
会話を始めてから初めてカルカが笑みをこぼした。
「さらに、討伐部位の提出に来た冒険者も居ないとのことです。まぁこの国にこの様な事が可能な冒険者がいるとも思えませんが」
「だとすれば、他の国の冒険者という事になるわね。……スレイン法国の工作員かしら?」
「実力だけを考えれば可能性はありますが、彼の国は口ばかりで実際は何も成せない者たちの集まりです。彼らが重すぎる腰を上げたとは思えませんね」
「あらあら、辛辣ね。でも、スレイン法国でも無いとなると本当に検討が付かないわね」
「幸い亜人たちの侵攻は緩んでいますから、手の空いた者たちに調べさせましょう」
「守りが薄くなることは無いわよね?」
「スケジュールの調整は抜かりなく」
「よろしくね、ケラルト」
「はい」
カルカは部屋を後にするケラルトを見送ると、窓の外、距離的には見ることの出来ないアベリオン丘陵の方を見ると、小さくため息を吐いた。