聖王国の聖騎士団副団長、グスターボは【鉄の闘志】とアルシェに幾つかの聞き取り調査を行った。
「あなた方は冒険者なのですよね?この周辺の亜人を討伐する依頼を受けておられるのですか?」
「いえ、そういった依頼は受けていませんね」
グスターボの問いに代表してモモンガが答える。グスターボも相手の対応で鎧の男、モモンガが一団の代表なのだと考えて、質問をモモンガに向けた。
「では、一体なぜこの辺りの亜人の討伐を?冒険者組合に確認したところ、討伐部位の提出も無い様ですが?」
「ほう?随分と此方の行動を把握していらっしゃいますね、聖王国は」
「……亜人どもは我々にとって怨敵ですから。それらを討伐して下さっている相手の情報ぐらいは調べますよ」
グスターボは言葉を選びながら会話を続ける。
「でしたら調べはついていると思いますが、亜人たちを討伐したのは此方の銅級冒険者のアルシェ嬢です。私たち【鉄の闘志】はただの引率ですからお気になさらずに」
「っえ?」
ここで自分に押し付けるのかと、アルシェがモモンガに非難の視線を送るがそれは無視されてしまった。
「はい。国の調べでもアルシェ様がお一人で亜人たちを討伐してい―――下さっていると報告を受けています。アルシェ様に心から感謝を―――」
グスターボが頭を下げると、彼の後ろに控える聖騎士たちも一斉に頭を下げた。
「い、いえ。私はべつに」
「我々が長年手を焼いた亜人たちを僅か数十日で半壊させてしまわれたのです。さぞ高名な冒険者かとお見受けしますが、寡聞にしてアルシェという名の冒険者を存じ上げません。よろしければ貴方様の武勇伝など、お聞かせ願えませんか?」
「ぶ、武勇伝?!な、無い。そんなの無い」
アルシェがぶんぶんと首を振りながら一歩下がる。そんなアルシェの肩をポンと叩いたモモンガが代わりに答えた。
「彼女は最近冒険者になったばかりですからね。彼女の事を知らないくても無理ありません。現に彼女は銅級の冒険者ですからね。まだ冒険者として武勲を立てたこともありません」
「そんなお方がこれだけの偉業を?」
「まぁ、彼女は元々帝国で有名なフールーダ・パラダインの弟子ですからね。冒険者になる前から自力はありましたよ」
「なんと!?あの有名な魔法詠唱者の弟子であらせられたか!」
『おおーっ!』と聖騎士たちから驚きの声が上がった。
「ええ、まぁ……」
嘘では無いが、アルシェがフールーダの元で身につけた魔法では決して今回の様な事は出来なかっただろう。というか、現在の強さでもモモンガに貸与された装備が無ければ難しかもしれない。
「失礼ですが、アルシェ様は第何階位の魔法を使用出来るのでしょうか?貴方の師であるフールーダ・パラダイン様は第6位階魔法まで使用できると聞き及んだ事がございますが……」
「…一応、第6位階魔法まで行使できる……(ようになった)」
最後にぼそりと呟いた声は誰にも届かなかっただろう。
「おお!!その若さでパラダイン様と同じ階位の魔法まで習得されているとは!」
再び聖騎士たちから『おおー!』という歓声が上がる。
アルシェは気恥ずかしそうにローブのフードを目深にかぶり、更に一歩下がったのだった。