「私は、聖王国の招待を受けようと思う」
アルシェの決断を後押ししたのは、数日前にブリタに言われた言葉だった。
『妹さんたちの為にも先立つものは多い方が良いでしょ?受け取っておけば?』
そう、今のアルシェの貯えでは妹たちを育てていくのに不安があった。そこに、先ほどのグスターボの言葉、お礼を約束するというものだ。
一国からの報酬ともなればかなりの額が期待できる、妹たちの為に資金はいくらあっても困らないのだ。
「おお!それは聖王女様もお喜びになられます。では、我々は一度本国に戻り歓迎の準備を致します。皆様の連絡先をお教え願えますか?準備が出来次第迎えの者をよこしますので」
「連絡先か……」
モモンガ達が普段寝泊まりしているのは、トブの大森林内の拠点でアルシェはカルネ村の屋敷だ。そこから転移門の魔法で通っているので一瞬だが、聖騎士たちはそうもいかないだろう。
別に相手方に合わせる必要もないだろうが、余計な面倒は避けたい。
「我々は普段、アルシェ嬢の魔法で王国から転移して来ているのですが、聖王国側にそれは可能ですか?」
「………申し訳ありません。聖王国側にそれが可能な魔法詠唱者は存在しておりません」
グスターボの脳裏に聖騎士団団長の妹君の顔が過った。彼女は第5位階の魔法が行使出来るのでは無いかという噂を耳にしたことがあったからだ。だが所詮は噂、真相は確かでは無いし、何より彼女は信仰形魔法詠唱者だ、仮に第5位階の魔法を習得していても転移の魔法を習得している可能性は低いだろう。
「では、聖王国でおすすめの宿を教えて頂けますか?」
「聖王国に滞在されるのですか?」
「アルシェは今まで通り王国から魔法で通って貰いますが、我々が聖王国内に居ればすぐに連絡が取れるようにしておきましょう。私の趣味は観光でしてね。そちらの準備が整うまで私たちは聖王国の観光を楽しませて貰うとしましょう」
「趣味が観光?……ごほん、分かりました。私が知っている中で一番の宿に招待状を書いておきます。勿論宿泊費も聖王国側が負担させて頂きますのでご安心ください」
「それはそれは、お心遣い痛み入る。ああそうだ。私とブリタさんはこのまま貴殿らに付いてい行って関所を通って入国するつもりだが、アルシェ嬢は魔法で出入国することになるだろうから、その辺の許可取りもよろしくお願いする」
「畏まりました。他に何かご要望はございますか?」
「ん?そうだな……それなら」
少し考えてモモンガは要望を口にした。
「観光名所を教えて頂けますか」