アルシェのドレスについて聖騎士たちに相談したところ、直ぐに貴族御用達の店に案内するとのこと、モモンガは直ぐにアルシェに転移の魔法で聖王国に来るように伝えた。
流石に今からではオーダーメイドなど間に合う訳も無く、既存のドレスでアルシェのサイズに合うモノからアルシェが気に入るものを探す。
アルシェは以前貴族であったことから、そういう事には慣れており、直ぐにドレスを見繕った。アルシェが選んだのはシックな感じのドレスだ。主役たるアルシェが着るには少々地味に思えるが、貴族の頃からあまり派手な物は好まなかったそうだ。
アルシェのドレスが選び終わると同行していた聖騎士がブリタに向き直り、「次はブリタ様のドレスを選びましょう」と言うと、ブリタは首を傾げた。
「何故?」
聖騎士たちは一瞬その言葉の意味が分からなかったが、直ぐに一つの答えに辿り着く。
「ブリタ様は既にドレスをお持ちなのですか?」
「持ってないわよ?冒険者がドレス何て持ってる訳ないじゃない」
「でしたら、ブリタ様の分のドレスが必要でしょう?」
「だから何故?」
ブリタと聖騎士2人は3人して首を傾げる。
「城に来ていくドレスが必要でしょう?」
「え?私たちは行かないわよ?」
「「っえ?」」
ブリタの発言に聖騎士たちが驚きの声を上げ呆けている。そこにモモンガが声を掛けた。
「呼ばれたのはアルシェ1人でしょう?我々は観光目的とアルシェとの連絡係として聖王国に滞在していましたが、登城するつもりはありませんよ」
「い、いえ。今回の催しはこの国の恩人たる御3方を歓迎するためのものですから、是非【鉄の闘志】の御2人もお越し頂きたい」
「あら、亜人たちと戦ったのはアルシェだけよ?私たちは只の付き添い」
実際にはアルシェのレベルがある程度まで上がるまで、モモンガがアルシェにバフをかけていたので完全にアルシェ一人で戦っていたわけでは無いが、そこは伏せる。
そもそも【鉄の闘志】の二人は、以前王国の戦士長であるガゼフが、城に来て欲しいと嘆願した時も、面倒だからと断っている。
もちろんその理由の1つはモモンガがアンデットだということがある。
全身鎧の兜で顔を隠しているが、王族や貴族の前で顔を晒さないのは失礼がすぎるだろう。きっと王侯貴族サイドから兜を脱げと言われるに違いない。適当にこの鎧は呪われているのとかの理由をつけるか、幻覚の魔法で偽の顔を創るなどの対応策はあるが、どちらも欠点がある。緊急事態以外では出来れば避けたい。
「しかし、国からは3人を招待するようにと……」
「亜人たちの討伐に手を貸していない我々【鉄の闘志】が参加すれば、南の貴族たちに付け入る口実を与えるのでないですか?」
モモンガの言葉に、聖騎士たちはハッと目を開く。
「な、何故その事を」
「観光をしていると、北部聖王国と南部聖王国の話は良く聞きましたからね。そこから憶測しただけですよ。とにかく、国には【鉄の闘志】は不参加とお伝えください」
「…………わかりました。そのようにお伝えします」
二人の聖騎士のうち1人が頭を下げ、走って店を出て行った。報告の為に城に向かったのだろう。
そんな4人の会話を聞いていたアルシェはポカンと口を開け、一言漏らした。
「え?……私1人で行くの?」