ローブル聖王国の首都ホバンス。聖王国の信仰の中心である神殿があり、政治の中心であるここに、聖王国の主要な貴族たちが一堂に会していた。それはもちろん、北部、南部関係無くだ。
理由は、長年この国を困らせていた亜人たちの殆どが駆逐されたとの報がもたらされ、それを一人で成した若い女冒険者をもてなす催しを行うからだ。
しかし、多くの貴族はこの情報に懐疑的にとらえている。
当然だ、そんな事を出来る人間がいるわけがない。ローブル聖王国最強と言われる聖騎士団団長でさえ、十傑と呼ばれる亜人と相対せば1対1で何とか戦える程度だと噂されていた。
そんな化け物たちをたった1人の冒険者が駆逐したというのだ。しかも、そんな事が可能な冒険者なのにこの場に居る誰も、今まで名前すら聞いた事が無かった。
「銅級冒険者アルシェ……ねぇ」
「あり得ませんな。北部の連中はそんな与太話を信じたのですかね?」
「さてね。しかし亜人どもの殆どが姿を消しているのは確かだ。現在私も私兵を走らせ情報を探らせているが、件の冒険者3名以外の名前は一切出て来ぬ」
「今回の催しはそのアルシェを称え、感謝の意を示すものとの事だが、本意は何処にあるのでしょうか?」
「北部の連中が亜人たちを駆逐できる戦力を手に入れたというのなら、それを南部に隠匿している証拠を見つけ、北部の連中にを突きつけてやりましょう。我々は聖王を仰ぐ同じ国の人間なのですから、戦力を分け合うのは当然ですからね」
「おや、今は聖王女様ですよ?間違えると怖い番犬に手を噛まれてしまいますよ」
「はは、そうでありましたな。お~こわいこわい」
南部の貴族たちの間では、今回亜人たちを駆逐出来たのは北部の連中が何かしらの兵器か魔法、または薬物など、劇的戦力を向上する何かの開発に成功したのではないかという憶測が出ており、この場に集まった南部の貴族たちの多くは、その真相を探ろうと動いていた。
貴族たちが談話をしつつ、情報交換などをしていると会場の二階部分のテラスになっている部分にいる音楽隊がファンファーレを奏でだした。
これは聖王女カルカが入室してくる合図だ。
貴族たちは談話を止め、扉の方に注目する。
巨大で荘厳な扉が左右に開く。
しかし、そこから姿を現したのは質素なドレスに身を包んだ見知らぬ女性だった。
皆が頭上に疑問符を浮かべていると、その後ろから3人の女性が続いて姿を現す。聖王女カルカ、聖騎士団団長レメディオス、神官団団長ケラルトだ。
先頭の女性は見るからに緊張している。
それに続く3人のうち、カルカとケラルトは冷静な面持ちだが、レメディオスだけは明らかに機嫌が悪い。憮然とした顔でヅカヅカと歩いている。
4人は会場を一直線に突っ切り、会場の端にある一段高い場所に登った。そこで先頭にいた女性を横に立たせたカルカがスピーチを始めた。