近々敵が攻めてくる。
大勢の人間が死に、我々も何人生き残れるかわからないだろう。
その話を聞いてから、私の毎日は荒れた。
被害を食い止める為に奔走する迅や忍田さん達。幼いながらに誰かの役に立とうともがく小南。
そして、家族の為に身を引いて大人しくしているべきだと言われた私。
じゃあどうして、今までなんの為に頑張ってきたと言うんだ。
「戦わせてください」
私なら力になれる。確かな自信がそこにはあった。
ーーパチン。
大きな音が響いて、頬に痛みを感じる。
「ぇ……」
あぁ、今叩かれたのか。
「そういうとこ、大嫌いだ。」
叩いた本人の迅は、酷く冷たい目を向けていた。
最上さんは私を見た後、その場を去った。
……私はなにを間違えた?
◇
別日、機密機関であるボーダーを公に公表すべきかどうかの議論がされていた。
子供だからと話し合いには参加させてもらえなかったけど、部屋の外でこっそり話を聞く分には問題ないだろうと勝手に話を聞いていた。
「迅曰く、隠し通せる未来はないと言ってもいいだろう」
「批判は殺到するだろうな」
「どれだけ被害を食い止められたとしても、いずれ民間にバレる」
何だか凄い話をしているな。おれはこの先待ち受けている未来に、自分たちはどうなってしまうのかと頭を抱えたくなった。
「楓奏はいいんですかねぇ、最近めっきり顔見せにこなくなりましたけど」
「噂ではここらで年上とつるんで喧嘩ばっかしてるって…」
「やりたいようにやらせておけばいい。アレをここに引き留めた我々に責任がある」
友達の名前が出てきて、オレはこの前楓奏を叩いてしまった事を思い出した。
怒るかな、怒ってるよね。怒られる。うん…。
嫌われたら、どうしよう。
いやいや、楓奏には家族がいて、それを捨てようとしてるんだぞあいつは。
おれは何も間違えてない。間違えてない、よな。
「っ……」
ーー微かに視えた未来では、楓奏はいなかった。
「どうしたらいいんだよ……」
___________
そして、その日はあっという間にやってきた。
何が正しくて何が最善かなんて誰にも分からないまま、ずっと……いや、寧ろ一瞬だったようにさえ思う。俺達は守るべきものを守るために戦い、死んでいった。
「最上さん……!」
「迅、強く生きろよ」
伸ばした手は間に合わなかった。助けたいと思った人を救えなかったと思った時、その感情は自分に向けたものなのかどうかなんて関係なく涙は溢れる。
泣き虫は嫌いだと、声が聞こえた気がした。