「あたしが先に約束してたの!!!!!」
「だから俺が先に言ってたんだってば!」
放課後、いつもの様にボーダーに寄ると、いつになくうるさいやり取りが聞こえてきた。
目の前で繰り広げられる小南と迅の言い合いと、それを見ながら「元気だなー!」と笑う林藤。それに呆れた顔の忍田と最上。
「何この状況」
それを眺めながらランドセルを降ろして呟いた。
「おかえり楓奏」
「うん、……ただいま」
「ちょっと迅!!!いつから楓奏のこと呼び捨てで呼ぶようになったの!?きーっ!ムカつく!!私の方が"せんぱい"なのに!」
変なところでこだわりが強い小南は置いておいて、今日は最上と訓練の予定がある。
時間がもったいない。急かすように最上に声をかけた。
「おー、そうだったそうだった、今日は楓奏と約束してたんだった!」
最上は思い出したかのようにポンっと手の平を叩くと、それを見た迅と小南が「「えっ!!」」と声を上げた。
「きょ、今日はあたしと特訓するって約束してたじゃない!!」
「違うよ、昨日俺が約束してた」
ーーなるほど
誰が最上に訓練指導してもらうかで争っていたのか、ようやくここで喧嘩の理由が判明し納得した。
楓奏は毎月最上、忍田、林藤、城戸達に訓練スケジュールというのを書いて渡している。それぞれが時間のある時に手合わせして貰えるように予め予定を立てておくのだ。
そうすればスムーズに訓練ができるし、誰の時間も邪魔することがない。
困ったように笑う最上を見て楓奏は
「じゃあ皆で訓練すればいいよ、今日は"ふぃじかる"の強さを鍛える日だから走り込みだし」
と口にした。
「お前は大人だな~、もっと二人の言い合いを見てたかった気もするが、今日は三人まとめて面倒見てやる!そうと決まれば走るぞ~!!」
「えー!走るのきらい!」
「じゃあ別に小南は留守番でもいいんだぞ」
「うーーー!!走るわよ〜!!」
楽しそうに会話する皆を眺めていると、最上にぐしゃっと撫でられ髪の毛で視界が閉ざされる。
ーー大人、ね
※ . * ˚
川に沿ってランニングコースを全員で走る。日々の訓練もあるのか今日はまだまだ走れそうだ。
それにしても、ここに来てからは暗い顔ばかりだった迅が小南と言い合いするくらいには馴染んでいて良かった。
ーー良かった?
ーーなんだこれ
「どうした楓奏、もう疲れたか」
「……ううん、大丈夫」
まるで親の気分だ。似た者同士の迅を無意識に心配していたのだろうか。よく分からない感情の芽生えに蓋をした。