今日は日曜日、学校も休みで訓練もない。友達がいない楓奏にとってはすることが無い日になってしまった。
小南や迅を誘って公園にでも行こうか、それとも忍田や沢村に遊んでもらおうか、いやダメだ。あの人たちは忙しいし、小南や迅はそれこそ今訓練中だ。
ふむ、と考えた結果、少し寂しいが一人で公園に行くことにした。
普段はボーダーに近い公園を利用しているが、今日は少し離れた学校に近い方を使ってみよう。
そうと決まれば行動は早かった。
全速力で走り辿り着いた公園は休日にもかかわらず人が少なかった。
友達がいないことに対するコンプレックスはなかったが、一人で公園に行くことによって周りからの目はやはり気になる。
いかにどう一人で遊んでても不自然に思われないかを考えていたのだが、その必要もなさそうだ。
ふと、砂場の方に見た事のある姿を見つけ、思わず声をかけた。
「嵐山くん?」
声をかけられた嵐山は作りかけの泥団子を持ったままこちらを振り向いて笑顔を見せた。
「出水さんじゃないか!こんなところでなにしてるんだ?」
「こっちのセリフなんだけど」
嵐山准、成績優秀、人付き合いも良し、楓奏からの印象は"なんでも出来るスーパースター"
友達も多いはずだし、公園で一人なんてそれこそ見たことがない。
「今日は天気がいいから公園に来たんだ!」
「一人で?」
「出水さんも一人だろう」
「まぁ……」と言葉を返せなくなり濁した。
楓奏も砂場に座り込み、嵐山と一緒に泥団子を作り始めた。
「どうして泥団子作ってるの」
「んー、何となく作りたくなった。この前弟と妹が泥団子作ってるのを見て、おれも作りたくなった」
「へー」
嵐山も相当な変な奴だな、と言いかけたが飲み込んだ。
「出水さんはいつも一人だが、それは何か理由でもあるのか?一人が好きとか」
「…いや別に、そういうのじゃないよ。ただ一人ぼっちなだけ」
「おれも一人ぼっちだ、一緒だな」
馬鹿にしているのか。いつも人に囲まれている人気者のくせに。
「どこが」
少し嘲笑うようにして言ってしまった。
気を悪くさせたら申し訳ない。
「おれ、学校では割と一人ぼっちなんだ。出水さんにはどう見えてるかは分からないが、周りから少し距離を置かれてる気がする。ちゃんとこうやって話したのは出水さんとーー先月転入してきた迅くらいだな」
楓奏と迅。よりによって校内の変人コンビだ。
「くっ、あはは、なにそれ」
面白くて仕方がなかった。
「なんで笑う!」
「いや、だって、よりによって変な奴って言われてる二人なんだもん」
「まぁ、だからってわけじゃないが、話しやすいんだろうな、二人の方が。他のみんなはおれを遠い存在かなにかだと思って接してくる。それが少し悲しい」
「………」
運動も出来るしリーダーシップもある。なんでも出来る完璧なスターだと思っていたのに、それがまさか本人にとってはコンプレックスだったとは。
「変な話をしてしまったな、これからも仲良くしてくれるとありがたい!」
ニコッと笑った嵐山の手には泥団子が握られている。これまたおかしくて、「もちろん」と答えた後に再び吹き出した。
※ . * ˚
すっかり日も暮れて、空は茜色に染まっている。
嵐山とはとっくに別れて今はボーダーへ続く道を歩いていた。
ーーボーダーに行ってから家に帰って、それから……
この後やることを指で数えながら右の角を曲がる時だった。
前から人影が見えて立ち止まる。
「あ、」
声を出したのは楓奏ではなく人影の方で、その姿を見て同じように声を上げた。
「びっくりした、おどかさないでよ迅」
「驚かしたつもりはないけど」
そういう本人もまさか鉢合うとは思っていなかったらしく、少しびっくりしている。
「てかなにその髪型」
「ああ、これ?」
迅は髪の毛を少し触って見せびらかすように見せた。
「最上さんの真似。今日最上さんにして貰ったんだ」
「へぇ、……なんか、似てるね」
「最上さんに?」
「いや、嵐山くんに」
「はぁ??」
嵐山に似ているのが不服だったのか、はたまた最上に似ていると言わなかったのが不服だったのか、そんなこと気にせず前を歩いていく楓奏を迅は慌てて追いかけた。