"花火をしに行こう"
その誘いは突然だった。
言い出したのは同級生の嵐山で、最近花火を沢山買って貰ったのだが、消費しきれなかったらしい。
そして、友達がいない楓奏、迅が花火などやったことがある訳もなく、その誘いを受けて今度の休みにいつもの公園で花火をやることになった。
「ーーなんで中原さんまでいるの」
「ふっふっふ、嵐山くんにお呼ばれしたのよ!」
「へー」
「そうだ楓奏、気軽に友恵って呼んでくれてもいいのよ、私達親友でしょ?」
「んんん、いつ親友になった???」
公園に集まったのは花火提案者の嵐山、そして誘われた楓奏、迅、中原。
更に、小学生だけで夜の公園は危ないから、と保護者枠でボーダーから風間進が同行してくれた。
「進さんごめんね、わざわざ来てくれて」
「あぁ、全然大丈夫だよ!小学生だけじゃ夜は危ないからね」
フッと微笑んでくれた進にほっとする。
夜とはいえ時刻は十八時。ちゃっちゃと終わらせて早く帰ろう。あまり遅くなると迷惑がかかってしまう。
「あ、私これやりたい。いいかしら」
「まずはロウソクに火をつけようか、それと、危ないから花火は人に向けちゃダメだよ」
中原が花火の袋からロウソクと花火を取り出し、進にロウソク、花火を楓奏達に配った。
進がマッチでロウソクに火をつけると、ボッと辺りが明るくなり、薄暗くて見えなかった嵐山や迅の顔が見やすくなった気がする。
「俺は線香花火したい」
「ダメだ、線香花火は最後に皆でやるんだ。誰が一番早く終わるか競うのが定番なんだぞ」
「そういうもん?」
楓奏は花火に火をつけて迅と嵐山の会話に耳を傾けた。
中原も花火に火をつけて、楓奏の隣に立って綺麗に火を放つ花火を眺めた。
「綺麗ね~、はぁ……嵐山くんと花火してるなんて夢みたい」
「……私も」
「え?」
「私も、誰かと花火なんて夢みたい。友達とか、呼べるような人いなかったし」
「まぁそうよね、楓奏ってば自分から話しかけてこないし、迅に比べればまだ絡みやすい方だけどさ!」
燃え散った花火は楓奏の方が先だった。進が用意していたバケツに入れるとジュッと音がする。
「私だって……友達とか、みんなと一緒に遊びたいよ!」
中原がぎょっとしてこっちを見た。
嵐山と話していた迅も花火を持ってこっちを向いた。
大きな声を出したことに気づいて顔が赤くなる。誤魔化すように新しい花火を手に取って火をつけた。
「でも今の楓奏には私や迅や嵐山くん、三人も友達がいるのよ!十分じゃない!」
「……まぁ」
「楓奏は成長したのよ!偉いわ!!」
中原に褒められるとちょっと微妙な感じだ。でも、言われてみれば確かに、いつの間にか楓奏には友人と呼べる人間がいるし、こうやって花火だって出来ている。
「怖いくらいに幸せだよ」
幸せな事があった後には、必ず不幸がある。
そう考えてしまう楓奏はひねくれているのだろうか。
ーー私はきっと誰かを不幸にしてしまう、そんな気がする
「何考えてるんだ、今はめいっぱい楽しむ時間だよ」
進は楓奏の肩を叩いてから花火を手渡した。
いつの間にか散っていた花火をバケツに放って、新しい花火に火をつける。
花火は赤、緑、青と色を変えて綺麗に燃え散っていく。
「花火って一瞬で散るんだね」
ーー綺麗なのに、もったいない。