9.きっと
「何か変わったよね迅くん」「こう見たら意外とかっこいいかも」「変とか言って悪かったなぁ」
秋に入る頃には迅の登校頻度は週に一回くればいい方になっていた。
初期に比べSEにも慣れたからかどことなく"余裕"が生まれ、周りからの評判も良くなっていった。私からすれば変わったところなんてよく分からないけれど。
「こうも体調不良だと何か大きな病気にでもなったんじゃないかしら」
「大丈夫だよ、迅強いから」
「そう?ならいいけど…そうだ、来週の修学旅行だけど____」
夏祭りのあの日、迅が結局本当に私に伝えたかったことはあれだけじゃなかったんだと思う。私と最上さんが死ぬのは分かった。けれどどうして死ぬのかとか、もっと他の大きな事を彼は私に告げなかったのだ。
ーー変な言い逃げされた
「ーー楓奏!!」
「は、はい」
バァンっと叩かれた机に驚いて中原さんを見る。この机も何度彼女に叩かれたことか。机よ、どうか卒業まで持ち堪えてくれよ。
「話聞いてた?」
「なんの話でしたっけ」
「修学旅行!!迅くんも同じ班だし、来れたらいいんだけど……」
来れたらいいんだけど、とじっと見つめられた瞳には"見舞いにでも行って様子を伺ってこい"という言葉が秘められている気がして、私はめんどくさいなと適当に返事をした。
「楓奏も、迅くんいないと寂しいでしょ?」
「うーん」
「だって迅くんくらいしか友達いないんだし」
余計なお世話だ!
*
と、まぁボーダーに寄ったは良いものの。迅はいない。
代わりに小南が抱きついてお迎えしてくれた。
「最近みんないそがしいみたい。どたばたしてるのよね」
そうなんだ。
訓練にも付き合う時間がないと断れるばかりで、忙しいというのは目に見えて分かっていたが、その理由を誰も教えてくれないので私は勿論小南もひたすら寂しいだけであった。
「わたし邪魔なの?」
誰にも構ってもらえない。ギュッと顔を私に埋めて呟く小南の頭を撫でた。邪魔じゃないよ。ただ今はちょっと忙しいだけなんだよ。
「……そんな事ないよ」
誰のせいでもない。誰も悪くない。
きっと後しばらくしたらいつも通りに戻れるよ。
「わたしもみんなのためになにかしたい」
ちいさな少女は強い目を私に向けた。
そうだよね、と。私も同じ気持ちだからこそ分かる、頼って欲しい想い。
何のためにここにいるのか、存在意義が分からなくなるほどに今、私達は寂しさを抱えている。
「落ち着いたらまたみんなで遊ぼう。きっとあと少しの辛抱だよ」
そう、きっと___