衝動的に書いてしまった。
反省も後悔もしていない。
ここは、とあるスタジアム。
今まさに、世界最強の男が決まろうとしていた……。
『さぁ始まりました! 本日のスペシャルマッチ! 実況はわたくし、毎度おなじみ【Mr.ジョン】がお送りいたします!』
『そして解説は私、【Mr.ブロー】です』
『よろしくお願いします!』
二人の掛け合いで、さらに会場のボルテージが上がる。
この二人は、この世界で知らない人はいないほどの有名な人物だ。
そんな二人が、こうして実況という形でイベントを盛り上げてくれるのだ。
彼ら無くして、この試合は語れないと言っても過言ではない。
『では早速参りましょう! 本日のスペシャルマッチ! まずは赤コーナー! その圧倒的なパワーで数多の敵をねじ伏せ、今回の戦いへの切符を手にした挑戦者! その名も――』
「ウォオオオオオオオオオオ!!!」
『【豪腕の勇者】! ブレッド・アーガス!!』
「「「「「「「「「「ワァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」」」」」
その名前に、観客たちが一斉に沸く。
赤コーナーに立つ大男は、まるで獅子のように雄叫びをあげていた。
その声だけで、地面が揺れているのではないかと錯覚するほどの迫力がある。
だが、それだけではなかった。
『猛者の象徴たる雄たけびを上げ、ブレッド・アーガス、リングイン!! しかしまだ役者はそろっていないぞ!!』
「待ってたぜ!!」
「早く呼べ―!!」
「チャンプ―!!」
もうすぐ始まる戦いを前に、観客たちは待ちきれない様子だった。
それはもちろん、俺も同じ気持ちである。
俺は、拳を握りしめながらその時を待つ。
すると……
ドォンッ!!!
突然の大きな音と共に、照明が暗転した。
『急かすんじゃねぇぜギャラリー! こいつは逃げもしねぇし隠れもしねぇ! そうだろう? チャンプさんよぉ!?』
スピーカーから聞こえる声と、それと同時に鳴り響くゴングの音。
暗闇の中で繰り広げられる、一瞬の出来事。
そして次の瞬間には、スポットライトが光り輝いていた。
照明は……マントを羽織る俺を照らし出している。
観客たちの視線が、全てこちらに向けられているようだ。
こんなにも多くの人に注目されるなんて、今までもあったが、今回のような人数は初めてかもしれないな……。
でも、緊張している暇はない。
俺は、これから戦わなくてはならないんだ。
最強を決める大一番――「ストロング・ザ・ファイターズ」の頂点を決めるための戦いに。
『史上最年少にして、勝利の栄光は数知れず! 現在のチャンピオン防衛戦にて――』
『――10戦無敗!!』
マイクを通したMr.ジョンの声に合わせて、スタジアムのモニターの映像が切り替わる。
そこには、多種多様な挑戦者たちと戦う俺の姿があった。
時にはボロボロ、時には圧勝。
様々な姿を見せる俺だったが、共通していることがある。
それは、どの試合も真剣勝負だということだ。
決して手を抜いたことはない。
常に全力で戦い、勝った時は喜び、負けたときは悔しい思いでいっぱいになった。
それらを乗り越えて、俺はここに立っている。
『体が小せぇ? 年も若い? 技も洗練されてるとは言い難い? だからどうした!! この男はそれらを飲み込んでここにいる!! 強者のプライドを持って、ここまで来た!!』
Mr.ジョンの言葉を聞きながら、俺は思う。
あぁそうだ。俺はここに来た。
世界で一番強い男になるために。
そして、最強の座を手に入れるために。
そのために今まで頑張ってきた。
だからこそ、
『人呼んで、現代のヘラクレス!!』
「ハァッ!!」
実況の声に合わせてマントを脱ぎ捨てた。
俺の体が大きく見えるように、そして会場にいる全ての人の目に映るように。
それが、俺の覚悟であり決意だ。
俺はこれから戦う。
目の前に立ちふさがる巨大な壁に向かって、一歩を踏み出す。
どんなに強大な敵であろうとも、最強の男になるために。
たとえ、相手が誰だろうとも。
『【ザ・キング・オブ・ファイター】!! リュウヘェエエエエエエエエエイ・コジマァアアアアアアアア!!』
「「「「「「「「「「ッ!! ワァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」」」」」
対戦相手の名前が出た途端、観客たちが一斉に沸いた。
誰もがその名を知っているのだ。
片や、最強の男をチャンピオンの座から引きずり下ろすため、並み居る猛者との激戦を制し、この場に立つ切符を手に入れた【豪腕の勇者】ブレッド・アーガス。
片や、チャンピオンの座を守り続けること十回。最年少ながらも白熱した戦いを繰り広げ、観客を沸かせ続けている【ザ・キング・オブ・ファイター】リュウヘイ・コジマ。
どちらも負けられない。
この試合は、どちらか片方が負け、もう片方が勝つのだ。
だが……俺は、 勝つ。
勝ってみせる。
その意思を込めて、俺は静かに構えをとった。
「……凄まじい人気だな。チャンプ」
「アンタもいるからこそだよ。チャレンジャー。結果の決まった戦いなんて、詰まらねぇことこの上ない。それに、俺だってここで終わるつもりは毛頭ないしな」
「そうだな……全力でぶつからせてもらうぜ。最強」
「望むところだ。勇者」
お互いに笑い合う。
そして、ゴングが鳴るのと同時に動いた。
ぶつかり合う拳は、ゴングなんかよりもはるかに大きい衝突音を放つ。
その衝撃は、観客たち全員の鼓膜を揺らすほどだった。
『ッ!! 遅れちまったが、本日のスペシャルマッチの始まりだ!! ギャラリー共!! 瞬きなんかすんじゃねぇぞ!!』
これは、世界の頂上を決める戦い。
その最初の一撃は、こうして幕を開けるのだった。
今のところありふれ要素皆無なんだが、これをありふれの二次小説と呼んでいいんだろうか……?