総司と部下が言っていたつけている魔法師2人。それらは総司と総司の部下の思惑通り誘導されていた。
それらの魔法師は新ソ連のエージェント……ではなく、ステイツ、USNAの魔法師だった。
「おい、チェイサーM。本国の上層部はなんて言っていた?」
「ブランシュの件でようやく決断した、一条総司をこちら側に引き込むらしい。どうせこの国では役立たず認定らしいしな、ナックラーS」
「なるほど、この国を捨てさせるのも簡単、ということか。日本も馬鹿だな……
「新ソ連のエージェントがこちら側に潜入してきた時に得た情報だったが、ウチの国にとって有益な話だな……しかもその魔法師は戦場で1人で戦っていたらしいしな」
チェイサーM、ナックラーSはUSNAの魔法師組織『スターズ』、その末端の『スターダスト』。実力の低い魔法師を無理やりスターズレベルまで戦闘能力を引き上げた寿命の短い魔法師である。
チェイサーMは
「おい、一条総司が動いているぞ、その先は行き止まりでカメラもほとんど無い」
「勧誘にちょうどいい、それに倒して連れて帰るにしても、な」
「じゃあ行くか!」
チェイサーMとナックラーSは知らない。総司が2人の存在を知って
「何の用だ?俺を数日前からつけている魔法師さん」
「……気づいていたのか、流石は
「……新ソ連…ではなさそうだな。大亜連合でもなさそうだし……ブリテンか?それともUSNAか?」
「皇帝、と言われるくらいの目もあるようだ……我々はUSNAのスターズの人間だ。君をこちら側にスカウトしに来た」
総司は心底驚いた、と言える顔をしており、チェイサーMとナックラーSは誇らしげにしている。寿命を短くする改造を受けているにもかかわらずUSNAに忠誠を誓っているのだ、『自分がUSNAにスカウトされるなんて』という顔をした少年を見て満足そうにしている。
「……USNAの魔法師、か。日本に大亜連合や新ソ連が潜入しているのは知っていたが表向きには条約を結んでいるUSNAが潜入しているとはね……ここで捕縛しないと」
「「は?」」
総司の隣に氷のハイパワーライフルを持った彫像が2体現れ、2人を攻撃しようと動き出す。
「は、ハイパワーライフルだと!どうなって……ガバァ!?」
ハイパワーライフルの銃身で殴る総司の氷の彫像。
「……家族がなんだって?俺の家族は俺を一度も役立たずなんて言わなかった。俺の家族は俺を1度たりとも見捨てたりしていない!!」
「そ、それは……!」
「国は知らんが、俺には友もいる、家族も俺を大切にしてくれている……そして大切な部下もいる!この国を捨てるなんて俺の選択肢にはない!」
総司が声高々に叫ぶとどこからともなく総司の私兵筆頭とも言える2人が現れてチェイサーMとナックラーSに対して、石山は空気弾、正雪は斬撃を放つ。
「大切な部下とは嬉しいことを言ってくれますね、石山」
「そうですねぇ、それならば我々も御期待に答えねば不忠というものです〜」
「……まさか部下を隠していたのか」
「お前らを捕まえるためにな……というか最近色々起こりすぎだろ!いやほとんど俺が起こしてるって言っても過言じゃないけどさ」
「……それについては否定できませんねぇ」
「否定するつもりないけどな」
総司と石山が連携してナックラーSに向かってハイパワーライフルの弾と空気弾を浴びせていく。石山の攻撃力が低いように見えるが、気にしてはいけない。
「ハイパワーライフルを撃つとは正気か、一条総司!」
「毎日毎日尾行してくる星屑に言われたくはなぁい!!」
ナックラーSは紙一重で総司の操る氷の彫像が放つハイパワーライフルの弾を避ける。当たれば即死だからだ。だがハイパワーライフルの弾に神経を使いすぎて空気弾を避けることが難しくそのまま被弾していく。
「……総司様を何日も尾行するとは許せることではない……腹を割くか首を断つか」
「ヒッ!きゃ、キャストジャマー!」
チェイサーMが『キャストジャマー』と呼ばれるUSNAが開発したCADの機能を無力化する兵器を使って正雪が持っているであろうCADを無効化する。
だが─────
「悪いが私の剣はCADでは無い……ただの剣だ!!」
正雪はそのキャストジャマーを意に介さずにそのままキャストジャマーを切り裂く。
「なんだと……現代の魔法師がただの剣を魔法を使わずに扱うとは……」
「ふん……私は西洋の剣術を学んだ剣士。魔法など必要ない!」
「「そうだったのか!」」
「なんで知らないんですか!特に石山!お前は私と何年も共に活動しているだろう!」
「……ずっとCADだと思ってました。すみません」
石山と正雪が言い合っている隙を突こうとチェイサーMとナックラーSが魔法を放つが、総司が氷の壁を作り出してその攻撃を防ぎ、氷の壁を今度は剣に変換、そのまま2人に一斉掃射を行なう。
「くっ、どうなっているんだ!明らかに魔法じゃないぞ!」
「それを答える義理はない!」
一斉掃射された剣は2人に刺さることは無かったが2人の周りに刺さっており、2人は一見、氷の剣に囲まれた状態になっている。
「そろそろトドメを刺す!」
総司は氷の剣一本一本に意識を集中させながら指を鳴らす。チェイサーM、ナックラーSは一瞬何をしているのかわからなかったがすぐに理解することになる。
氷の剣が順に爆発したのだ。
「ば、爆裂だと……!お前は一条の出来損ないと爆裂が使えないことを理由に、そう言われていたのでは……!」
「……俺は『爆裂』は使えないさ。一条家の代名詞、お家芸とも言える一条家の爆裂はな」
総司が爆裂を使えない、というのは本当である。だが水を司る力、なんて水に対して神のようなことができるようになる能力を持っているのに、水分を気化する爆裂が使えないなんてことは無い。
総司の場合、『一条家の爆裂、そしてその魔法の発展型』の術式を使う才能がないのだ。爆裂や叫喚地獄と名を持つ一条家が長い間保有している術式に。
子供の頃は今のように『神之怒』などの術式を作ることは出来ず、爆裂を水を司る力で強引に再現することしか出来なかった。
しかも精度が本当に悪い。周りの魔法師や剛毅達に被害が及ぶほどだ。それによって一条総司は爆裂が使えないというレッテルが貼られたわけだ。
今は総司が水を司る力を術式に組み込んだ成功率100%の爆裂を使うようになったので爆裂は使いこなせる。
「……流石は総司様というわけですねぇ、爆裂を御自身の力で完璧に使いこなすことができるようになった訳ですからねぇ」
「……さて、USNAのスターズのスターダスト、お前らを捕縛して情報を抜き取らせてもらうぞ」
「くっ、かくなる上は……!」
チェイサーMとナックラーSは口を動かして強く歯を噛むと、そのまま倒れて目を閉じた。
「毒を歯に仕込んでいましたか……」
「……仕方ないな。遺体はこのまま焼き尽くす、キャストジャマー?だったか?あれは持ち帰って研究する。他にもあったら持ち帰るかな……」
チェイサーMはキャストジャマーを持っていたがナックラーSは別にそういった兵器を持ち合わせていなかったのでキャストジャマーだけ回収しておく。
総司はスターダストの遺体を邪魔だと思って焼き尽くそうとしていたが、スターダストの身体は裏社会では価値があるという正雪たちの言葉を聞いて総司はスターダストの遺体をコールドスリープの要領で凍らせておく。
「では、この遺体は任せるよ」
「分かりました、必ず成果を持ち帰ってみせます!」
正雪達は闇に紛れて消え、総司は迎えに来た部下と監視カメラの対処をしてからそのまま一条家の別邸へと帰ったのだった。
答えは1.外国のエージェントでした。
USNAのスターダストです。新ソ連のエージェントが総司について尋問の時についでに吐いて、これ、優秀な一条の魔法師手に入るんじゃね?ブランシュも潰したっぽいし!
と喜びすぎて小躍りしたUSNAのお偉いさんがスターダストを密入国させて総司のスカウトに走ったということですね。
まぁ結果は御破算、ついでにキャストジャマーを持ってかれたわけですが…
総司の爆裂事情も書けたので、ここから九校戦を書こうと思います。
これからもよろしくお願いします!
追記:分子ディバイダーの部分消しておきました。兵器じゃなくて魔法だったんですね……