『九校戦』、それは各魔法科高校が一堂に会し、それぞれの学校の生徒が魔法を駆使して様々な競技を行なう日本の魔法師の中では一大イベントとして数えられている。
選手やファンから『早撃ち』と呼ばれ親しまれており、クレーを両サイドから2人の選手が割り、どちらが多く割れるかを競う競技『スピード・シューティング』。
テニスのような見た目でありながら、一球だけでなく複数の球を使用し、何回相手のコートにボールが落ちたかで点を競うテニスもどきの競技『クラウド・ボール』。
レースゲームのようなサーフィン、どちらが先にゴールするかそれだけで勝負が決まる。だが水に対しての妨害もOK、魔法師自身に魔法をかけてスピードなどにバフをかけてもOKな競技『バトル・ボード』。
氷柱を倒すことから『棒倒し』とも言われ、このゲームにおいては制限がかかっている魔法も使用OKな競技『アイス・ピラーズ・ブレイク』。
男子限定の競技で、三人の選手が草原や市街地、森林といった様々なステージに配置された互いの『モノリス』と呼ばれる板を専用の無系統魔法で割る。
そしてそこにあるモノリスに512桁のコードを打ち込むか相手選手全員戦闘不能にすると勝利になる、実際の戦場に近い模擬戦競技『モノリス・コード』。
九校戦屈指の人気を誇り、女子が専用の服をまとって空を飛び回って現れる光の玉を専用のバットで砕いて3ラウンドで1番多く砕いた人の勝ちな競技。
だがその競技に必要な体力はフルマラソンにも匹敵する『ミラージ・バット』。
以上六種目を十日間、二、三年生の本戦と一年生の新人戦に分けて、各競技に振り分けられたポイント合計が最終的に最も高い高校の優勝だ。
そんなイベントに、総司も選手として参加することになっている。参加選手はテストの順位で決まっているのだが、総司は総合1位だったために『アイス・ピラーズ・ブレイク』と『スピード・シューティング』、どちらも新人戦に参加することになっている。
アイス・ピラーズ・ブレイクには将輝が出る可能性が高いため、対抗馬として出されている。勝てなくても2位にはなれるだろうと考えられて。
今日は九校戦の会場に参加選手全員で行く日で、集合場所まで行かなくてはならないのだが、総司は集合場所には行かず、バイクで直接会場に向かっていた。
雫には悲しそうな目で見られ、一緒に行こうと言われたが、正雪達が九校戦に関わる大事な報告があると言われては聞かない訳には行かず、総司は雫を宥めて集合場所まで行くのをやめた。
そんな正雪達からの報告は、
『九校戦で様々な裏の有力者が1つの組織の賭けごとに参加した』
というものだった。これには総司も顔を顰めていた。九校戦は雫が楽しみにしているイベントであり、魔法師の卵が行う運動会のようなものだ。それが裏の汚い金が絡む賭けに使われるなど耐えられるものでは無い。
総司はバイクを運転しながら賭け事について考察する。
「……どこに賭けたのかは分からないが、一高のような気がするというかそうなるだろうな」
一高は生徒会長の七草真由美を初めとした3年の最強世代に2年にも実力者が揃っている。勝つためなら一高に賭けることは確定だろう。
「なら、親であろうどこかの組織は違う場所に賭けていると考えるべきか……」
全員が同じところに賭けたら賭けにならない。一高に参加者が全員賭ければ賭け事の親役は違う高校に賭けるだろう。
「……一高に妨害が向く可能性大だな……」
妨害するなら競技中が1番だ。総司は雫が妨害を受けてリタイア、そして魔法師としてドロップアウトすることも幻視してしまう。
「そんなことさせてたまるか……」
総司はその妨害を止めるためにバイクのスピードを上げて先に向かった選手と合流できるようにするのだった。
一高の九校戦の会場へ向かうためのバス内にて、3人の女性によって選手のほとんどがガクガク震えることとなっていた。
1人は司波深雪。深雪は敬愛する兄がエンジニアとして九校戦に参戦することは喜んでいた。だがエンジニア専用の車両に乗るなんて聞いていないとバス内の温度を冷気で冷たくしていた。
2人目は2年生の千代田花音。千代田は婚約者である五十里啓がエンジニアとしてエンジニア専用の車両に乗ってしまったことに対してイラつき、バス内の空気を悪くしていた。
そして3人目は原作で深雪の機嫌を良くしていた北山雫だった。雫はほのかがオロオロするほど眉を顰めており、どう見ても機嫌が悪そうだった。
この3人の生み出す不機嫌オーラと冷気によってバス内の空気と温度は最悪だった。夏で暑いから助かる〜なんてことはなく、幾人かの生徒はすでに気絶しかけていた。
そんな中、雫に電話がかかってきた。雫は端末を確認する。すると雫の不機嫌オーラは一瞬で霧散した。
「し、雫?(ど、どうしたんだろう……って、あ)」
ほのかが雫の端末の画面を見ると一条 総司の名前が書かれていた。
雫は電話に出て総司が喋るより早く喋り出した。
「し「総司、どうしたの?」……いや一緒に行けなかったから雫に申し訳なくてな……大丈夫かなと思って電話をかけてみたんだが……」
「私は大丈夫……みんな何故か気分悪そうだけど……」
雫は自分は関係ないかのように総司に伝える。ほのかは何故かの部分であはは……と笑っていた。
何故このタイミングで電話を掛けたのか。それは克人の差し金だ。千代田を摩利が諌めようにもほかの2人のオーラで動けずにいたために、総司の声を聞けば対処できるだろう雫を先に何とかするために克人は総司に連絡し総司に電話するよう仕向けたのだ。
そしてオーラが薄まって動けるようになった摩利が千代田を諌めて、その流れでほのかが深雪の機嫌を少し良くする。これによってバス内の空気は良くなった。
真由美は克人にグッジョブと手で表していたが本当にその通りであり、克人が総司に連絡していたことを知っている周囲の生徒は克人に感謝の念を送っていた。
「危ない!」
そんなことが起こっていると、千代田が指を前に向けながら大声を出す。何事かと生徒達が千代田が指を向けた方向を見る。
そこには大型車が火花を散らしてスピンして、それが壁に激突し、宙返りしながら突っ込んできていた。
急ブレーキがかかり、バスは止まり直撃は避けたが、大型車は炎上して此方に向かってきている。このままでは衝突必至だ。
「吹っ飛べ!」
「消えろ!」
「止まって!」
「っ!」
パニックを起こさなかったという点はは褒められる事かもしれなかいが、今回のような事態では、それが善しとはとても言い切れなかった。
無秩序に発動された魔法が無秩序な事象改変を同一の対象物に働きかけ、結果的に全ての魔法が互いの魔法を打ち消す『相克』を起こし事故回避を妨げてしまっている。
克人が大型車を止めようとするが衝突と火を一緒に防ぐことはできない。生徒達は死を覚悟したが…………
「!?氷の壁……深雪さん?」
「ち、違います」
とても分厚い氷の壁が幾重にもバスと大型車の間に現れて激突を回避する。その氷の壁は何枚も破られたが、その度に大型車は減速し、最後の氷の壁と大型車が激突する頃には大型車は動きを止めていた。もちろん炎も冷気に包まれて消えている。
何が起こったのか理解できない生徒達であったが1人だけ理解している者がいた。雫だ。今も電話が繋がっている総司が水を作り出し、氷の壁を生成して止めたのだ。雫の座標を見て。
「ありがと、総司」
「構わない。これくらい簡単に防げる」
雫は人知れず総司に礼をいい、九校戦の会場へと後処理を済ませてから向かうのだった。
さぁ、魔法科最強系オリ主特有の無双が始まるぞ!(始まりません、本戦終わるまでお待ちください)