九校戦前に行われる懇親会、それは生徒達の仲を深めるなんて理由で行われているものだ。それを総司はすっぽかそうとした。
理由は簡単、いても『出来損ない』やらなんやらと馬鹿にしてくる無能共に絡まれるからだ。なんならいない方があちらもこちらもせいせいする。そう思って総司は部屋にひきこもりながら自分のCADを調整していた。
総司の部屋は1人部屋だ。総司が嫌われているからという理由ではなく、ある事情で1人部屋なのだ。1年女子のエンジニアである達也が調整器具と一緒の部屋なのにも少し関係がある。
そんな総司の部屋をノックする者が現れた。正直出る気はなかったが、無視するのも忍びないので総司はそのノックに答えた。
「誰だ?」
「総司、私」
「……雫か、何の用だ」
「懇親会に出て欲しい。というより命令。七草会長が無理やりにでも連れて来いって」
「……断るよ」
総司は扉を閉じて帰ってもらおうとするが雫は力を入れて閉じるのを妨害する。念入りに身体強化を使って。
「ちょ、身体強化はずるだろ!」
「一緒に行こう?」
総司だって鍛えてはいるが、身体強化を使っている者が相手ではさすがに負けそうになる。だが負けてたまるかとドアを引っ張り続けて、ドアが軋み始めると総司は諦めた。
「……わかった。わかったから……」
「それでいい、早く行こ」
雫に連れられて総司は懇親会の会場へと向かう事になったのだった。
「……総司が居ないな。どこだ?」
「部屋にひきこもってるんじゃないかな?総司はこういう催しに出てこないよ多分……」
懇親会の会場にて、第三高校の1年エースの一条将輝と吉祥寺真紅郎は総司を探していた。2人とも久しぶりに総司と話したいためにあちこちを歩き回っていた。
歩き回っていると各校から憧れの眼差しや羨望の眼差しが飛んでくるが、将輝と真紅郎はそんなことはお構い無しに探し回る。
「ねぇ」
「……愛梨か、どうしたんだ?」
「私たちも総司を探しているのだけれど、見つかったかしら」
将輝と同じで三高のエースである一色愛梨が十七夜栞と四十九院沓子を連れて将輝と真紅郎と話し出す。
「わからん……正直出てくるかすら怪しいからな…」
「それは無いじゃろ」
「どういうことだ?」
将輝は沓子の言葉に首を傾げる。
「ブランシュを討伐したことを大々的に発表したってことは出てくる可能性がない訳では無い……という事じゃ。多分ここから評価を変えるために動くんじゃないかの?」
「……まぁ、一高の生徒に聞けばわかる事だと思うけど……」
沓子の言葉に全員がなんともいえない雰囲気をだす。総司の評価を気にしないスタンスを知っているが故に。そんな空気を払拭するために栞が案を出すと、将輝は周囲を見渡し、ある一点に釘付けになった。
「将輝?」
将輝の見ている方向を真紅郎や愛梨達が見ると、そこには絶世の美女が立っていた。本能的に畏怖を感じるほどに。
「……話を聞きに行きましょう、真紅郎、そこのバカは任せたわよ」
「バカ!?……わかった」
愛梨は栞と沓子を連れて絶世の美女───深雪の方へと向かう。そんな中、総司と雫も懇親会の会場に入った。
「……俺は空気、俺は空気……」
「……大丈夫、深雪が注目をかっさらうから総司は目立たないから大丈夫」
「……それ間接的に俺が地味って言ってない?」
「うん。でもそんな総司が私は好き」
「……ホクザンの娘がそんなことを軽々しく言うんじゃない。俺なんかに言うな……」
「……もう」
雫は深雪やほのかが居る方へと総司を誘導する。
「なんだ?」
「人が集まってる……」
「見てみるか……
神之怒でも使った水で作ったレンズで深雪達の方を見ると、総司は顔を青くした。
「総司?」
「……不味い。真面目に不味い」
「?」
珍しく顔を青くしている総司を見て首を傾げる。そして深雪達の方に着くと総司の身は白くなっていた。今にも消えそうな程に。
「第一高校一年司波深雪です」
「(司波……そんな家あったかしら……)あらぁ、一般の方!?───少し失礼しますね、総司、久しぶりね」
「久しぶり……さて、俺はまた部屋に戻るとしよう……!?な、何をするんだ、栞、沓子!?」
愛梨が総司を見つけると深雪との会話を中断して総司の方を向きながら微笑む。総司にはどう見ても悪魔の微笑みにしか見えなかった。
逃げようとする総司に愛梨は沓子と栞に合図を送ることで捕まえる。なんだなんだと周りの生徒が騒ぎ出していると将輝と真紅郎がようやくこちらに来た。
「総司!?」
「頼む、将輝!助けてくれ!」
その言葉に一目散に動き出そうとした将輝。だが次の瞬間、将輝の動きは止まった。
「……貴方もまたやられたいのかしら」
そんな底冷えする声に将輝は方向をクルっと変えて真紅郎の方へと戻ってしまう。そんな兄の様子に総司はというと……
「な、裏切るのか将輝!」
「……総司、悪いがもう俺は被害を受けたくはない!」
裏切られたショックでさらに白くなった。真紅郎の方を見るが、真紅郎にも顔を逸らされ、総司は涙が流れそうになる。
そんな中、総司に救世主が現れた。その救世主は雫。総司の前に立って愛梨を牽制する。
「……あら、誰かしら。そこにいる総司のお友達?」
「し、雫……!」
「友達(ゆくゆくは恋人になってもらうけれど)」
総司の雫の株は上がりまくる。いや元々天元突破しているが。
「総司を虐めるなら許さない」
「……何か勘違いされていませんか?私はただ総司に第三高校に入らなかったことを問いつめたいだけですよ?」
「……え?」
雫が総司とその周りの沓子や栞、真紅郎を見ると頷いていた。
「だ、だけど、総司は悪くない!一高に誘ったのは私!」
「……貴女だったのね……!どんな関係よ!」
「総司と婚約者になってもいいくらいの関係!」
「ふぁ!?」
この言葉には総司が仰天した。その言葉を聞いた将輝や栞らが総司に目を向けるが一生懸命に手を振って否定する。そんなこと知らないと、そんなふうに。
「……いいわ……なら貴女ごと……!」
「ここで来賓のご挨拶を始めます」
その言葉を聞いて愛梨や雫は少し落ち着く。
「(来賓の挨拶が終わったら決着をつけるわ)」
「(……総司を傷つけさせる訳にはいかない!)」
来賓の挨拶が次々と始まり、最後にとある人物が紹介された。
老師、『九島烈』である。
最初女性が出てきて焦っていたが、総司と将輝は気づいていた。後ろに烈がいることに。
烈が出てくると生徒達は騒ぎ出すが烈が喋り出すとその騒ぎは静まった。
「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。今のはチョッとした余興だ。魔法というより手品の類いだ。だが手品のタネに気づいた者は、私の見たところ五……いや六人。それだけだった。」
「もし私が君たちの鏖殺を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことができたのはその五、六人だけだということだ」
「魔法を学ぶ諸君。魔法は手段であって、それ自体が目的ではない。そのことを思い出して欲しくて、私はこのような悪戯を仕掛けた。私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。だが君たちは、その弱い魔法に惑わされ、私がこの場に現れると分かっているにも関わらず、認識できなかった。魔法を磨くことはもちろん大切だ。しかし、それだけでは不十分だということを肝に銘じてほしい。使い方を誤った大魔法師は、使い方を工夫した小魔法師に劣るのだ。明後日からの九校戦は、魔法を競う場であり、それ以上に魔法の使い方を競う場だということを、壊てておいてもらいたい。魔法を学ぶ若人諸君。わたしは諸君の工夫を楽しみにしている」
老師として魔法界で伝説とされているその人物の言葉に総司は感銘を受ける。魔法師の中でも尊敬する魔法師が現れたことだけでなく、その言葉を聞けたことに感動していた。
烈が壇上から消えると、周りの生徒達も消えていく。愛梨がなにか仕掛けてくるかと雫は身構えるが──
「……頭が冷えました。総司、賭けをしない?」
「賭けだと?」
「第三高校のスピード・シューティングには真紅郎が、アイス・ピラーズ・ブレイクには将輝が出る……2人に勝てたら許してあげるわ」
「……いいだろう」
「負けたら第三高校に転校してもらいますからね」
「……わかった、じゃあまた会えたら会おう」
「そうね」
愛梨は沓子や栞を連れて帰っていく。それを見て総司は雫を連れて部屋へと帰っていくのだった。
「…………あれ!?私たちは!?」
「蚊帳の外だったわね……」
氷のクイーン「私の出番はどこですか!お兄様との共同作業なんかを書いてください!」
光のエレメンツ「私と達也さんのイチャイチャは!?」
作者「言っちゃ悪いけど総司が風紀委員にでもならない限り君ら出番ほとんどないよ。なんなら横浜騒乱でも来訪者でも君らが出れるとこあまりないからね……」
氷のクイーン・光のエレメンツ「な、なんだってぇぇぇ!?」
作者「最初予定してた物語よりはマシだよ?だってヒロイン候補がだいぶ変わってる人だったんだから……なんなら出てくるのが描写だけかもしれなかったんだぜ?」
2人ともへなへな座り込んだ。
作者「……こんな小説ですがよろしくお願いします」