「ははは……あれは流石に……でもまぁ昔からあんな魔法を使ってたところは見てましたけど……」
「現代魔法と古式魔法、他にも色んな種類がある魔法ですが、あんな光のレーザーを大掛かりな装置も儀式もなしに発動できるとは……」
将輝と総司の決戦の終止符として放たれた神之怒・収束放射。その前にも使われた氷の兵士を操るその力、スピード・シューティングでも規格外な魔法を見せてきた総司だったが、今回のこれは総司の側近でさえも放心せざるを得なかった。
「昔総司様が見せてくださった沖縄の神業と同じレベルの御業ですよね〜」
「……あれですか、でもあんな力より私は総司様の方が恐ろしいと思いますけどね……」
「……1番長く一緒にいる貴女がそう言うってことは総司様の力の正体知ってるんですか?」
自分ですら知らない総司の力の正体を正雪が知っているのかと石山は問う。
「……最重要機密事項ですから言えませんね。それに人通りも多い。どこに総司様の敵がいるか分かりませんし」
「……まぁ国防軍の基地ですからね……それに公安の犬もいるみたいですからこんなところで話す訳にもいきませんか」
ここにはそれ以外にも総司の実力を知ってしまった数字付きの有力者達がいる。みだりに話して総司の不利益になることは避けたいと考える。
「さっさとドラゴンの住処を探しましょう。これ以上遅くなったら流石に寛大な総司様でも怒りそうですから」
「ドラゴンのやらかした跡ならいっぱい見つかるんですけどね〜」
「そろそろ総司様の堪忍袋の緒が切れそうと護衛役の人から言われてますからね……金沢の時みたいにはなって欲しくないです……工作員でも見つかりませんかね」
冗談を言いながら席を立とうとする2人に1人の魔法師が近づいてきた。その気配にひと足早く気づいた正雪が迎撃の構えを取ろうとした瞬間、その手が止められた。
「お久しぶりです、霧雨さん。話がしたいだけなのでその手刀を下ろそうとするのはやめてください。貴女の手刀は首を切断しかねないんですから」
「なんで貴女がここにいるんですか……遠山曹長」
「ここは軍の基地ですから……一条君の側近で余計なアポが要らない貴女達に話があるんですよ」
国防陸軍情報部首都方面防諜部隊所属の遠山つかさ。24歳で曹長にまで上り詰めている女性で、総司とたまに仕事することがある間柄である。
正雪は遠山のことが苦手であるが、総司の知り合いでたまに情報を流してくれるためにその気持ちを押し殺して話をしている。まぁ所々トゲが出てくるが。
「とりあえず、あちらの部屋で話しましょうか?」
「はぁ、わかりました。正雪さん、行きましょう」
「了解です……」
正雪は気乗りのしない表情で石山と遠山の後を追うのだった。
「ま、また負けた……なんだよあの太陽光のレーザー……あんなの使ってきたことないだろ……!」
「お疲れ様、将輝。まさかあんな方法で破壊してくるとは思わなかったよね……」
アイス・ピラーズ・ブレークを終えた将輝は控え室で頭を抱えていた。その横では真紅郎が背中をトントンと叩いて落ち着かせている。
「氷の兵士は知ってる。爆裂も最近使えるようになったのも知ってる。嬉しそうに親父や俺に言ってきたからな。でもあのレーザーは知らないんだが!?」
「多分佐渡の時の光の雨じゃないかな。それを集めたものだと思う。でもそれだけじゃないと思うんだよね……」
「俺は
最初はまだ落ち着いていたが徐々に取り乱し始めたので急いで落ち着かせる真紅郎。確かに防御方法はなさそうに見える。
「いや、あの水のレンズを爆裂で破壊すれば何とかなりそうではあるけど……」
「いやそう簡単には行かないだろうな、あいつは爆裂を抑えられるからな」
「……というより、総司はなんであんな回りくどいことしたのかな」
「どういうことだ?」
将輝と総司の決戦を回りくどいことという真紅郎に若干の怒りを覚えながら将輝は真紅郎に問う。
「だって総司の力なら氷を水に変えてさっさと終わらせるって手もできたんじゃないかな?魔法を超えた神の技とも言える総司の能力なら」
「……その事か」
「何か知ってるの?」
「……確かにあの力は氷を水に変えるなんてことは簡単に出来る。なんなら開始の合図が鳴った瞬間に俺を負けさせることなんて簡単だ。だけどそんなことを総司はしない。決して俺を舐めているわけでも、手加減してる訳でもないさ」
「あいつは化け物として扱われたくないと思っているからだ。水を操るなんて今の魔法じゃできるわけがない。そんなのがバレたら化け物として扱われる可能性が出てくる。まぁ親父はそれを言いふらしてたけどな…………まぁそれは俺も理解してるから文句言うつもりもないさ」
「将輝……」
文句を言うつもりはないと言っているくせして手を強く握りしめて血を流している将輝を見て真紅郎は将輝の悔しさを悟る。そんな時、将輝の端末が通知音を鳴らした。
「……愛梨からか、なんだろうな…………………………オワタ」
「将輝!?将暉ぃぃぃぃぃぃぃ!?」
何が書いてあるのか分からないが、将輝は愛梨から送られてきた文章を見て震えながら崩れ落ちた。真紅郎はそんな将輝を見て叫ぶのだった。
「……負けてしまった。深雪に……」
総司と将輝が激闘を繰り広げていたように、女子の方でも激闘が繰り広げられていた。同率優勝を得るのではなく、雫は深雪との戦いを望み、戦って負けた。
実力は拮抗していた、とは言い難い。達也から教わった2機のCADを使ったパラレルキャストを使って、上級魔法であるフォノンメーザーを使ってもたった一手で逆転されてしまった。
「……総司は勝ったのに」
雫は深雪に勝って総司とアイス・ピラーズ・ブレークとスピード・シューティングどちらも同じ順位という栄光を得たかったのだろう。ついさっきほのかに慰められたというのに悲しみが再燃してきた。
そんな折、コンコンと雫の部屋の扉を叩く音が鳴り響いた。ほのかならノックをしないで入ってくるはずなのにと思う雫。
「…………?どうぞ」
「入るぞ」
入ってきたのは総司だった。扉をゆっくりと閉めると総司は雫の元に寄ってくる。
「どうして」
「……雫が司波さんに負けたと聞いた」
「うっ!?」
「正直なところ、慰めの言葉なんてどう掛ければいいのか分からないし、雫の今の気持ちも俺には汲み取れない。悔しいと思ってるくらいじゃないかってことしか分からない」
「……」
総司は心なんて読めないし、雫のことを完璧に理解している訳では無い。それはほのかがよく理解しているだろう。
「俺としてはこんなことしか言えないかな…………悔しいと思うなら、来年こそ司波さんに勝ちたいと思うなら夏休みに俺のところに来ないか?俺のところでフォノンメーザーや他の振動系の魔法を司波さんに勝てるレベルまで鍛え上げないか?」
「……いいの?」
「それは雫次第だ。力をつけたいなら俺のところに来てくれ。雫を来年司波さんに勝てるレベルまで鍛え上げてみせるよ」
「わかった、総司のところに行く」
総司の言う俺のところと言うのはどこか分からないが、総司が言うならとその案に乗る雫。全ては来年、深雪にリベンジを果たすため。
「……雫の悲しさが収まるまでなにすればいいんだ?正直俺よく分からないんだけど……」
「抱きしめて欲しい……総司から」
「……わかった」
総司は雫を静かに抱きしめる。総司からこのようなことをするのは初めてだ。少々躊躇いの意思が見えるが、総司は雫が望むならと抱きしめた。
抱きしめたあと少し経ち、
「……ありがとう、落ち着いた」
「なら良かった。じゃあ夏休みここに来てくれ。あと衣装を返しに来たんだった。また明日」
「うん」
雫が離れると総司は雫に黒い軍服を返すとそのまま扉を開けて出て行った。
「総司が着てた服……後で保存しとかないと」
ほのかに慰められ、総司に抱きしめられた雫は深雪との戦いで付けられた敗北の悲しみを和らげさせて、いつもの雫に戻ったのだった。
総司が雫の部屋から出て少し歩くと、黒いスーツを着た男性……石山が総司の目の前に躍り出てきた。
「情報が出揃いました、ドラゴン討伐のお時間のようですよ?」
「思ったより遅かったけど……情報の出処は?」
「国防軍の遠山つかさ曹長です。思ったより規模が大きいから総司様に助力願いたいとのことです」
「つかささんか……で、アジトは?」
「大本命が横浜中華街の横浜グランドホテル、他のアジトが横浜中に散らばってるみたいです」
「わかった、行くぞ」
総司は石山を後ろに従えて歩き出す。
「……石山、他に嗅ぎ回ってるヤツらは?」
「国防陸軍第101旅団独立魔装大隊と公安みたいですね、なんか言われたらどうします?」
「あの時の残党が寄り添ったのがあの組織だった、とかでいい。どちらにせよ、優秀な魔法師の将来を潰そうとしたんだ、さっさと動けるウチが潰す」
「了解です」
総司は横浜中華街に向かう。九校戦を汚そうとした汚いヤツらを掃討するために。
雫の部分はこれが限界です。はい。
次回は無頭竜の話です。次回もよろしくお願いします!