水を司る魔法科高校の転生者   作:排他的

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雫の特訓①

「…………や、やっと終わったぁ…」

 

総司の気の抜けた声が総司の事務所に響く。周りには机に頭と腕を乗せて半分気絶している職員が沢山いる。

 

職員は全員総司の件について問い合わせてきた十師族や有力な魔法師の家……まぁ端的に言えば総司をこれまで馬鹿にしてきた奴らがこぞって文句やらなんやらを投げかけてきたのを一個一個丁寧に片付けていたのだ。

 

職員だけにやらせる訳にもいかないので総司もやっていたが、電話を掛けたのが総司なのがバレると厄介なので声帯を自分の体を操って変化させて違う声で対応していた。結果、ストレスと細かい操作で疲れてしまったのだ。

 

「やっぱり効かないんだよな……」

 

総司が回復薬を作れることを知った石山(総司の能力は知らない)がAP回復薬、俗に言うスタミナ回復薬を作れるか聞いてきて作ったものを口に含むが、総司には効かない。

 

回復薬も総司には効き目が薄い。どうやら自分の身体から生成したものは使っても身体に戻るだけなので効き目が薄いらしい。

 

職員には効くのだが、それを使うことはしない。もうずっとそれを服用して連勤しているので休ませてないといけないからだ。とりあえず総司は職員を寮の中に1人ずつ入れてきた。

 

「明日、雫が来る日だな……とりあえず準備しとくか」

 

総司は自身が持つCADであるアーカイブから抽出した魔法を入れて置いたCADを何個か用意したあと死んだように眠ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に忙しい時期に申し訳ないね、総司くん』

 

「いえ、こちらから申し出たことですから」

 

『そう言ってくれるとありがたいな、じゃあ雫のことお願いするよ』

 

翌日、雫が来る少し前に潮から連絡が入っていた。総司に起きた沢山の連絡を潮は知っていたらしく、総司の身を案じていたが、その心配が杞憂だとわかると雫のことを頼んで電話を切った。

 

ちなみに総司は今、分身体で動いている。本体は昨日までの怒涛の連絡で疲れ切っているため、本体の活動を停止させることで休養を取っているのだ。

 

「……とりあえず、仕事の方はもう一方の分身体に任せるとしようかな」

 

……前言撤回、休養なんて取ってなかった。ふたつ分身体を動かしている時点で休養なんてあったもんじゃない。

 

そんなことを考えていたら一台のコミューターがやって来て雫が降りてきた。

 

「おはよう、総司」

 

「いらっしゃい、雫。金沢まで来させて申し訳ないね」

 

「総司が忙しいのは知ってるから大丈夫」

 

総司の事務所には何回か来たことがある雫。総司が鬼電の嵐のせいで忙しいことも知っており、ここに来る前に達也達と海で遊んだりしたがそれには呼ばなかった。

 

総司が仕事やらで来れなくて申し訳なさそうにするのをいつも見ているからだ。

 

「今日から夏休み明けまでここにいるってことで大丈夫かな?」

 

「うん。私は大丈夫だけど、総司は大丈夫なの?」

 

「大体一段落着いてるから大丈夫だよ」

 

総司の予定を心配する雫だったが、総司は問題ないと言った。だがそれは嘘、総司は分身体を仕事のために1体動かしている。一段落着いているわけが無い。

 

「今から訓練を始める?それとも少し休んでからにする?」

 

「訓練やるから休みは大丈夫。コミューターで少し寝てきたし」

 

「わかった」

 

総司は雫を自前の訓練場にまで連れていく。その訓練場は今は私兵の魔法訓練に使われているものだが、大多数の私兵は夏季休暇を取っていて空いている。

 

つまりは使い放題であり、雫のために何時間でも訓練できるようになっている。

 

「基礎的な体力がまだ足りないからランニングを入れようか悩んだけど毎朝やってるみたいだからこれは除外して振動系魔法の習熟を進めるとしよう」

 

「具体的には?」

 

「俺が出す氷を破壊してもらう。形式はクラウド・ボールと同じ感じでね?」

 

「クラウド・ボール?」

 

「俺が氷の塊を雫の方に向けて流すからそれを振動系魔法で破壊していくんだ。どんどんスピードを早めるから振動系魔法……いや、共振破壊で1番効率的に破壊できる所を見つけられるよう頑張ってくれ」

 

「わかった」

 

総司は氷の四角い塊を雫がいる方向へとゆっくりと撃ち出す。雫はそれを共振破壊で破壊しようとする。だが共振破壊で破壊するために必要な共鳴点を見つけることが出来ずにそのまま雫のところまでたどり着いてしまった。

 

「この訓練は共振破壊をする上で必要な共鳴点を速やかに見つけるためのものだ。このスピードで破壊できるようになったら、スピードを上げたり、個数を増やす!いいね?」

 

雫は無言で首を縦に振る。総司はそれを見た上でまた同じスピードで氷を撃ち出す。

 

「(移動していて共鳴点が中々見つからない……!)」

 

この訓練の難しいところは移動している氷の共鳴点を見つけなければならないところだ。

 

共振破壊は対象物に無段階で振動数を上げていく魔法を掛け共鳴点を探し、「振動させる」という事象改変に対する抵抗が差異も小さい共鳴点を発見した時点で、対象を振動破壊する魔法だ。

 

達也が調整した共振破壊は地面から共鳴点を探すのでこの移動する氷を破壊するのには合わないために元々の共振破壊を使っている。

 

何回もトライ&エラーを繰り返しているうちにやっと1個氷を破壊できた。だけどその後また同じスピードで氷を撃ち出されたが、破壊出来なかった。

 

「同じ氷じゃないから共鳴点はまた別のところにあることを忘れるな」

 

「うん」

 

何度か挑戦しているうちに雫はこのスピードに慣れてきて、氷を連続で破壊できるようになった。

 

「そろそろステップアップと行こう。2個に増やすぞ」

 

「うん…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

3時間後、雫は魔法の使いすぎと集中しすぎでダウンした。2個の氷を破壊することが出来ずに一日目が終了し、雫は総司の事務所の居住スペースで寝た。

 

「総司様、この娘一応ホクザンのご令嬢ですよね?ここに寝かせていいんですか?」

 

「え?……紅音さんと潮さんのどちらもが俺がいつも寝てるところでいいって言ってたんだよ、なんでかはよく分からないけどね」

 

「……あ〜なるほど」

 

「……何がなるほどなんだ?居住スペースここしかないから俺どこで寝ればいいのかもわからん」

 

「ここで寝ればいいと思いますよ、事務所には総司様と雫さんしかいないんですから管理とかの問題もあります。この娘1人にするのはダメです」

 

「あぁ、それもそうだな。ありがとう」

 

「いえいえ……(つまりは総司様と雫さんがくっつくのを助長させたいんですね?唐変木な総司様が雫さんの恋心に気づく良い機会じゃないですか)」

 

総司にも恋人くらい居ても良いだろうと考える正雪は総司に悟られぬように一緒の部屋で寝ることを促す。

 

総司が変に配慮して一緒の部屋になるかよく分からないな、と潮達が思っていたところに察しのいいお姉さんがテコ入れした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、フォノンメーザーは使っちゃダメなの?」

 

総司の訓練を始めて早3日、2個3個同時に破壊することが10回に1回くらいできるようになってから、雫は総司に尋ねた。

 

「この訓練は共振破壊を迅速に発動するための訓練だからな。フォノンメーザーはもう少し経ってからにするさ」

 

「?」

 

「いや、フォノンメーザーを砲撃みたいに使えるようにする訓練を考えていたんだが、さすがに無理があるからな。とりあえず共振破壊を極めるのを第1に考えろ」

 

「わかった」

 

雫は総司の言うことを素直に聞いて、翌日には2個3個同時に破壊することがいつもできるようになったのだった。

 

「じゃあ次はスピードを上げて2個3個同時に破壊することができるようになってくれよ」

 

「…え?」

 

この後また苦戦する羽目になり、疲れ切って眠ることになるのだった。




雫の訓練は2~3話続く予定です。

総司の見合いは雫の訓練と仕事で忙しいからシャットアウトっていうことにしといてください。このまま行くと総司が同じ時間に4体いるなんてことになりかねませんし。

あと長すぎると横浜騒乱に行けないので正雪と石山の過去とかは横浜騒乱の後にやります。というか正雪の案は出てるんですけど石山の過去がまだ練れてないので……

こんな作品ですが、これからもよろしくお願いいたします。
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