水を司る魔法科高校の転生者   作:排他的

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虎と皇帝

恐ろしく早い貫手。それによって総司の心臓は貫かれたかのように見えた。だが実際には貫かれておらず、敵の貫手は空気を突いただけで終わっていた。

 

心臓を貫いたにしては変な感触に大柄な男は顔を顰めていた。そして総司がいつも通りの声を出すとその顔は驚愕に染まる。

 

「速すぎだろ……普通に見えなかったぞ!」

 

今度は総司が攻撃を放つ。氷のダガーが何十本も放たれ、敵の身体を貫こうとする。だが敵はそれを腕を振るだけで破壊してしまった。

 

総司はそれを見て攻撃の仕方を変える。右手に水を作ってそれを勢いよく放出する。超高圧水流、それを放出するだけで鉄を貫通できるそれが男に迫る。

 

だが男はそれを手刀で切り裂いてみせた。鉄を貫通させられるほどの意力を誇る超高圧水流を何もつけてないただの手でだ。

 

その様子を見てようやく総司の顔色が変わった。今まで倒してきた人間とは何かが違うと判断したのだ。

 

「……なるほど、確かに厄介だな。潰してこいと言われるわけだ」

 

「大亜連合でこれだけのことが出来るやつはそうはいないな、お前は呂剛虎か」

 

「どうだろうな」

 

「まぁ、答えるわけが無いか」

 

相手が呂剛虎だったとしてそれを認めるわけが無い。総司の問いかけに呂剛虎は答えず、総司もそれがわかっていたかのように振る舞うと今度は氷を両手に生み出す。

 

総司は呂剛虎が自分に向かってくるタイミングで氷からビームを撃つ。氷から撃ち出されたビームは呂剛虎に向かって行くついでに路地裏を構成しているビルを氷結させていく。

 

呂剛虎はそれをまた手刀で切り裂こうとするが、突如としてその動作をやめて横に飛んだ。ビームはそのまま直進し、呂剛虎の後ろのゴミ箱を凍らせた。しかも1秒も経たずに。

 

「……避けたか、ならこれならどうだ?」

 

氷の礫を生成し呂剛虎に向けて発射する。それは凄まじいスピードで進み、呂剛虎の左腕に直撃する。礫は着弾と同時に呂剛虎の腕を凍らせた。

 

「厄介だな……フンッ!!」

 

「おいおい嘘だろ?」

 

呂剛虎は凍った左腕を勢いよく建物の壁にぶつけることで腕を覆う氷を粉砕したのだ。本来ならば血管と骨まで凍らせる代物であるのだが、まだ砕くのが早かったため、最低限の血液を流すだけで済んだようだ。

 

「(物理がダメなら心理掌握だ、これで意識を落とす!)」

 

総司は呂剛虎が物理攻撃を当てても倒せないのを知ると夜鈴にも使った心理掌握を使うことにした。

 

「(……あれ?)」

 

「どこを見ている?」

 

心理掌握を発動させた総司。だが心理掌握を使った次の瞬間、総司は衝撃波を食らう羽目になる。呂剛虎に向けて心理掌握を発動させたはずなのに、心理掌握が効いていないのだ。

 

そして呂剛虎は学習していた。拳が効かないならと空気を殴ることで発生する衝撃波を飛ばすことで攻撃したのだ。総司は呂剛虎の放つ衝撃波で吹き飛ばされる。

 

総司は吹き飛ばされながらお返しとばかりに氷の礫を放つ。だがそれもあらぬ方向へと飛んでしまう。

 

「(どうなって……まさか精神干渉系魔法か?確かに俺に精神干渉系魔法は一定の効果がある。ここまで来たのも方向を誘導させられたからか?……なら!)」

 

鏡花水月を総司と呂剛虎の周りで発動する。そして領域干渉を全開で発動させ、総司にかけられている精神干渉系魔法の妨害と発動を邪魔する。

 

領域干渉で精神干渉系魔法を一度無効にし、鏡花水月で外部から総司のことを認識させなくしたのだ。総司はもう一度氷の礫を放って今度こそ呂剛虎に着弾したのを確認する。

 

呂剛虎は凍った腕をまた壁にぶつけて凍るのを回避したが目に見えて焦っていた。そしてその様子を見逃す総司ではない。

 

「今度は確実に止めるぞ」

 

総司は手を振ることで水を生成して氷の檻を作り出して閉じ込める。そして氷の風を吹かすことで呂剛虎の身体を凍らせていく。

 

呂剛虎も殴って檻を壊そうとするが、総司の作った檻は壊したらすぐに修復され更に強固になるため意味が無い。そして氷の風によって体力と身体の温かさが徐々に消えていく。

 

「このまま凍ってしまえ」

 

情報も大事だがこの男の場合はそれを優先すべきでは無い。情報を尋問している間に逃げられでもしたらまた捕まえなければならないのだ。

 

そんなことはありえない?大亜連合の戦力の1つと数えられる男なのだ。総司に襲撃をかけるような手間と危険が伴う作業をしてでも大亜連合は助け出そうとしてくるだろう。

 

万が一こんなのが戦場に投入されたら総司や正雪、石山、夜鈴はともかくとして他の部下が死にかねない。部下を守るためにもこの男は殺す必要があるのだ。

 

「!?」

 

霧と水流の乱反射によって総司達を見えなくしていた鏡花水月が消え去った。というか吹き飛ばされた。それを感じ取るや否や振り返るとそこには黒い犬が数匹いた。

 

黒い犬は襲いかかってきて、総司はそれを氷の刃と化した腕で全て切り落とす。切り落とした瞬間、後ろで爆発音が数度響いた。

 

振り返ると氷の檻は粉々に砕け散っており、そこには呂剛虎がいなかった。氷の檻は総司が意識を向けていなかったために修復できなかったのだ。

 

「……逃げられたか」

 

総司は手を虚空へと向け、何かを操作すると端末に手を伸ばして部下に連絡するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多分それは鬼門遁甲かと。大陸系の術師が使う意識を誘導する精神干渉系魔法ですね」

 

「鬼門遁甲か……」

 

呂剛虎に逃げられた総司は想定した時間より遅い時間に帰ってきていた。総司は風呂に入ってサッパリした後に総司に呼ばれていた大陸系の魔法と技術に詳しい古式魔法師の部下に話を聞いていた。

 

呂剛虎が使っていただろう技術の数々全てを聞くと総司は立ち上がって古式魔法師の部下にこう伝えた

 

「……御前に話を通すぞ、大亜連合を潰しに行く」

 

「え、御前にですか!?それに潰しに行くって……」

 

「楔は打った。後は掃討するだけだ」

 

「……かしこまりました」

 

御前とは総司の活動の支援者である。北山潮が総司の表での支援者なら、御前は総司の裏の支援者である。

 

総司は古式魔法師の部下を置いて部屋に戻り大亜連合を潰す作戦を立て始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手酷くやられましたね」

 

「全くだ……まさかあそこまで手酷くやられるとは」

 

「とりあえずスパイに任せて息を潜められては如何でしょう?」

 

「そうさせてもらう」

 

横浜中華街のとある店で40歳程の髭が特徴的な男と貴公子のような風貌の若者が話していた。

 

その策が無駄に終わり、これから直ぐにとんでもないことが起きるとは知らずに。




呂剛虎をちょっと強化しました。それに鋼気功とか組み合わせたらこれくらいできますよね。呂剛虎は近接戦最強格との事ですので

御前のイメージは大分前から決めていました。本当は来訪者編で初登場する予定でしたが、ここで登場させます。まぁ口調が難しいのでちょっと変えますけど……後元老院メンバーではないです。

これからもよろしくお願いします。
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