総司とその配下がブランシュを壊滅させたのは翌日の朝のニュースとなった。そこでは武器を集めて魔法師を害そうとしていたことや未成年に洗脳行為を行なっていた事も話されていた。
総司の行動に対しての世間の評価は辛口だった。魔法師からの評価も非魔法師からの評価も。
『未成年が出しゃばる問題ではなかった』
だがここでこの問題を防がなければ第一高校に被害があったのも事実であり、辛口の評価以外にも高評価してくれる人もいた。
総司にインタビューしようと朝早くから押しかけてきたマスコミが沢山いたが、総司の家に心配だからと言って泊まっていた石山と正雪のおかげで何とか切り抜けることが出来た。
まぁ石山の『
その後、総司の家に来たマスコミは潮の手によってこの件に関わらないように圧力をかけられた。一条家は関東地方で権力をあまり持っていないので、コレは一条家にとっても、総司にとっても助かることだった。
総司はこうしてマスコミに迷惑をあまりかけられることはなく、学校に来れた。
第一高校ではエガリテのメンバーとして名簿に記録されていた、司一に洗脳されていた二科生にカウンセリングを受けさせたり、首謀者の弟であり、剣道部部長の司甲を拘束したりと大忙しだった。
ちなみに今日は授業はなく、全ての時間が自習となっていた。
総司は自治会に入っていなかったのでそんなことは関係ないとばかりに雫とカフェでお茶を飲んでいた。
「……まさかここで差別を取り払うような発言をするとは思って無かったな……」
「ん、七草会長がこんな演説をするとは思わなかった」
いきなりのことで混乱していた一高生だったが、真由美が二科生と一科生の垣根を取り払うことを約束するという演説を行ない、この事件によって起こった混乱を収束させた。
「……あの人は扇動者の才能があると最近思い始めてきたよ……」
「それは確かに」
総司と雫はお茶を飲みきるとおかわりを頼みながら色々な話を2人でしていくのだった。
「あれ?わたしは!?」
翌日、司一によって洗脳された二科生の頭には何の異常も見当たらず、数週間入院するだけでいいと生徒達に伝えられ、生徒達は安堵した。一科と二科の溝は深いと言われているが、それでも心配する生徒はいるのだ。
勧誘期間の折、『壬生紗耶香』という剣道部の二科生に怪我を負わせかけた『桐原武明』が壬生の入院している病院に剣術部を休んでまで見舞いに行っていることが第一高校内のニュースにもなっている。
だが悲しいニュースもある。こちらはあまり知られていないが、ブランシュのリーダー司一の義理の弟であった司甲が学校を去るということもあったのだ。
「誰かが責任を取らなければならない」
司甲はそう行って退学し、母方の実家に戻ったそうだ。
そんな中、総司はと言うと……
「良くもまぁ勝手に動いてくれたものね……!」
「こうしなければ、第一高校は危険にさらされていましたから……」
「それはそうだけど、私たちに相談してくれても良かったでしょ!」
真由美と克人に怒られていた。理由は単独で動いてブランシュを壊滅させたから。結果的には何も無く終わったが、少しは相談してくれとの事。
「一条」
「はい」
「俺たちがいることを忘れるな、今度何かあった時、何かをやろうとした時は必ず俺たちに相談しろ」
「わかりました」
総司はその言葉を肝に銘じると、やっと解放された。2時間くらい説教されていた。
「師匠、頼んでおいた件ですが……」
達也は山の上の九重寺というお寺に深雪と来ており、そこにいる住職と話していた。住職の名は『九重八雲』。当人は自分のことを『忍び』と言って止まない、忍術使いである。
「一条総司くんの事だったね。調べておいたよ」
「それで結果は……」
達也は神妙そうな面持ちで八雲の言葉を待つ。だがその緊張感ある空間はすぐに破られることになる。
「彼は別に何か目的があってここ東京に来たわけじゃないみたいなんだよね……というか第一高校に通っている理由は北山雫という女の子に通うように言われたから……らしいね」
「「……は?」」
達也と深雪は拍子抜けした。第一高校に入学し、達也に接近、勧誘をしてブランシュを一瞬で殲滅した。これに関連性はないが、達也達は達也が勧誘されたことに何か裏があるのではと思ってしまっていたのだ。
「彼、投資とかに手を出しているみたいでね、魔法界ではあまり良い評判は聞かないけど、財界と政界、後芸能界でも結構名の通った人間だよ。多分そのつながりかな…ホクザングループの総帥の娘と知り合いなのは」
「……」
「……」
「ブランシュを潰したのもそのつながりから情報を得て、じゃないかな?私兵もいるみたいだしね」
「後は魔法師のスカウトにも力を入れているみたいだ。一芸を完璧にこなす魔法師をスカウトしているみたいだよ。達也くんを勧誘したのはそれが理由じゃないかな?」
「私兵も面白い魔法を使う人が多いみたいだね」
「………………え、それだけなんですか!?もっとあの……お兄様の秘密を知ってとか!」
達也と深雪のフリーズ、深雪がいち早く解けて八雲に質問を投げかけるが、八雲は首を振る。
「ないない。軍にも繋がりがあるみたいだけどそこまで深くはないみたいだしね……」
その言葉を聞いてから達也もフリーズが解ける。
「では一条はそこまで警戒しなくていいと?」
「多分ね。それに君にとっても一条くんは有益な人材だと思うよ?ここまで色んな界隈に繋がりがある人間、そうはいないからね」
「なるほど、ありがとうございました」
達也は礼を言うと深雪を連れて去っていった。こんなことを聞くために八雲に借りを作ったのかと少し後悔しながら。
「……司波くんとの繋がりが欲しいなー」
ちなみに総司は達也のことをとても欲しがっている。それは真由美から聞いた話であったり、ほのかや雫から聞いた話からだったり。
「ブランシュは壊滅……また一条総司ですか……」
場所は横浜中華街。そこは中華系の人間の巣窟となっている。そしてそこ1番の人気を誇り、様々な界隈の著名人が利用する中華料理店、そこのオーナーが1人愚痴をこぼしていた。
オーナーの名前は周公瑾。周はブランシュが壊滅したことを悔いているという様子は見えないが、総司のことを憎々しげに思っていることは確かなようだ。
「ここ数年金沢に潜むほとんどの中華系マフィアや私共が糸を引く組織が一条総司に潰されている……!あのお方にも怒られてしまいました……!」
周の脳裏に映るのはアーカイブを携えながらマフィアや組織の武装した人間を倒していくその姿。
1回だけ相対したことがあるが、周が使う術のほとんどが意味をなさず、逃げることを余儀なくされた。
「何が出来損ないですか!あれが出来損ないなら日本の魔法師は全員化け物ですよ!」
周はテーブルをどんどん叩く。とんでもない力を誇っている総司に対しての八つ当たりだ。
「ですがまだあの者を潰す機会はある……!九校戦に関わっている無頭竜を上手く動かせば……!」
「さて、賭け金の操作でも行なって第一高校に妨害をするよう誘導しましょうか……!」
周は総司を潰すために無頭竜を使うことにし、賭け金の操作を行なうために電話を取るのだった。
周公瑾にとって割と総司は胃痛の種。