トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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迷いに迷いましたが今を逃すとやる機会が無くなりそうなので思い切りました()

ゼロライブ続編です……前作を読んでくださった方にも初見の方にも、どうかお楽しみ頂けたらと思います


プロローグ 始まりの鼓動

 

 

三世ウルトラマン。親の七光り。温室育ち。思い起こせば、脳裏を過る言葉は数多くある。

 

嘲りや嫉心を吐きかけられる度に過るのは、強く、偉大な……父親の顔だった。

 

 

―――タロウの息子。

 

 

最も重く、醜い響きで掻き鳴り続ける不愉快なレッテル。

 

誰もかれもが俺をそう呼ぶ。背後の強すぎる威光は俺の名前すらも眩く覆い、翳ませる…………だからこそ俺が他でもない、˝俺自身˝であると証明したかった。

 

 

あの時の俺に纏わりついていたのはきっと、そんなしがらみだったのだろう。

 

 

***

 

 

際限なく広がる暗闇に星々が瞬く宇宙空間。

本来静謐が満ちるはずのそこに騒々しさを齎すのは、幾度となく上がる爆発と轟音だった。

 

『シュアァッ!』

 

光の軌跡が闇を駆け、咆哮が散華する。

宇宙警備隊に巨獣の群れ。蒼を湛えた惑星を中心に展開される両者の衝突に混じり、一人の戦士が飛翔した。

 

『ッッ――――――!!!』

 

『テェヤッ!』

 

迫る咢を回転運動で回避し、掌底を埋める。

戦場に置いた身体は鋭敏に敵の接近を知らせてくれる。360度全方位に存在する気配を知覚しつつ、射程に位置する影を的確に処理してゆく。

 

『うおおぉぉぉぉッッ!!!』

 

手甲を介した虹色の光線が巨獣を穿ち爆散。

勝利を告げる巨獣の断末魔が肌を震わせる度に沸き立つ自信が心地よい。自分はもう一人の戦士であると告げるようだった。

 

 

行ける。戦える。焔となって沈んでゆく骸を横目に強く思う。

上げた戦果は他の警備隊員に引けを取らない……むしろ勝ってすらいるはずだ。

 

 

だがまだ足りない。自分の存在を証明するためにはもっと派手で、大きな結果が要る。

 

 

 

……直後の悲劇を招いたのは、そんな焦りと慢心だったのか。

 

 

 

『˝タイガ˝ッッ……!』

 

『え……』

 

自分の名を呼ぶ声が張り上がった。

 

その主が誰であるかを理解すると共に、遥か彼方から飛来する青黒い稲妻を認識し―――、

 

『ぐあああぁぁぁぁッッ……!!!』

 

迸った轟雷に身体を貫かれる。

理解はおろか苦痛すら追い付く間もなく光となった肉体は霧散し、やがてはその粒子すらも宇宙の闇に溶けていった。

 

 

 

これがこの星でいう―――10年前の出来事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対岸の火事、などと言う言葉がある。

 

文字通りの対岸で起きた火事。当事者にとっては災難であっても、関係のない自分には少しも痛痒を覚えない様を例えた言葉。最早この世界では当たり前になりつつある考えだ。

 

例えそれが、誰かにとっての世界が壊れるほどのものであっても。

 

 

 

紅蓮の中で揺れる炎。

泣き叫び、救いを求めた声も届かず、何もかもを屠る厄災の影にただ震えた、ただ奪われるだけの悪夢が現実へと侵攻してきた日の記憶。

 

それでも世界は変わりはしない。そこにある文明には何ら変化を及ぼさず、社会は廻り続け、やがてはその厄災を忘れ去ってゆく。これがこの世界での普通なのだから。

 

 

 

けど、少なからず。

 

あの日、確かに俺の世界は………崩れ去ったんだ。

 

 

***

 

 

「……ん」

 

嫌な夢を見た。

目前に控えた春の気配に浮足立つ教室の中、ただ一人苦悶を滲ませた少年は額の脂汗を拭う。

 

「―――君達の高校生活最初の一年を彩れたならよかったです。学年が上がっても気軽に話しかけてください」

 

既に締めへと入っていた教師の答辞に遅れて状況を把握する。呼び起こされるのは自分にとっては中身のないその時間は少々退屈だったという記憶。

 

齎された不快感は、そうして眠りこけたことへの罰なのか。

 

「これで先生からは以上です。一年間ありがとうございました」

 

気まぐれに良心が働き、最後くらいはと耳を傾けたのも束の間だった。

語末に謝辞を据えた教師の言葉と共に教室を満たす解放と感慨の空気。クラスメイトの醸すそれに居心地の悪さを覚え、そそくさと最後の日となる教室を後にする。

 

「はぁ……」

 

溜息をつきつつ進む廊下は閑散としている。通過する教室ではどこもその時を噛み締めるような同級生が散見された。

もしや彼女達も……と一瞬の懸念が過るが、直後にそれは杞憂となって消える。

 

「あ、雄牙―!」

 

校舎と呼ぶには少々規模の大きい建物。全階に渡る吹き抜けの向こうに慣れた二人の少女を視認する。

間もなく歩みを重ねた彼女達の醸す空気に少年―――瀬良雄牙(せらゆうが)は、ようやくその表情を弛緩させた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー! 終わったねぇ終業式! 今日から春休みだぁ!」

 

東京、お台場の臨海部に構える逆三角錐の校舎。いつ見ても学校とは思い難いその建物から出で、今しがた合流した少女二人と並び歩く。

その一方、毛先の脱色した髪を二つ結びに纏めた少女―――高咲侑(たかさきゆう)は高揚気味に提案する。

 

「ねぇ歩夢、雄牙。帰りにどこか寄ってこうよ。ほら、高校一年生最後の思い出作りというやつに」

 

「……お前もそのクチか」

 

「どういうこと?」

 

「こっちの話。……てか、そういうの普通クラスの連中とするもんじゃないのかよ」

 

「ん~……そうかもだけど、私としては、歩夢と雄牙との方がトキめくなーって」

 

「…なんだそれ」

 

「まあまあ、侑ちゃん今テストも終わって舞い上がってるから、付き合ってあげようよ」

 

もう一方、今しがた小声で耳打ちをしてきたのが上原歩夢(うえはらあゆむ)。特徴的な淡い髪色とシニヨンを揺らし笑みを作る様ももう見慣れたものだ。

 

「侑ちゃんはどこか行きたいところあるの?」

 

「う~ん。そうだなぁ……」

 

などと侑が首を捻る間にも足は自ずと進む。

 

自分達の通う学校―――虹ヶ咲学園が位置するお台場は商業施設が多い。ショッピングモールやゲームセンター、映画館などレジャースポットは数多ある。とどのつまりお年頃の女子高生二人が遊ぶ分には申し分のない立地なのだ。

 

加え高校入学以降は放課後にこの三人での寄り道など常の事。こんな時にどこへ向かうべきかなど、自然と身体に染み付いているものだった。

 

「とりあえず適当にふらふらしようよ。私、歩夢に似合う服探したいな~」

 

「もう、たまには侑ちゃんの服も見ようよ」

 

女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだが、実際二人でも十分賑やかなものだ。

だがこの二人に限ってはそれも心地よい。普段通りに、旧懐にも近い感覚を抱きながらその背中を追わんとした瞬間、不意に音を鳴らした携帯電話に雄牙は眉を寄せた。

 

「ッ……」

 

取り出したそれを確認し、いの一番に意識を射止めた文字列。

 

「侑、歩夢」

 

その文面が何であるかを理解すると共に前方の二人へとその画面を向ければ、彼女達もまた同様の表情を作った。

 

「ちぇ~、こんな時に~」

 

「…仕方ないよ。こっちの都合が通じる訳じゃないんだし……」

 

「…残念だけどお預けだな。警戒区域はこの辺だけみたいだし、今日は大人しく帰るぞ。思い出作りはまた今度な」

 

雄牙のそれが皮切りとなるように、周囲の人々の懐や鞄からも同様の()()()が鳴り響く。

瞬時に空気感の塗り替わってゆく街並み。見上げた空ではその様を眺めるように、重低音を伴う影が飛翔していた。

 

「……また今度、か」

 

 

東京の街を満たした音の洪水は天へと向けた零しをも覆い隠す。

この声は今日もまだ、届きそうになかった。

 

 

 

 

 

 

˝光の巨人˝が地球を守り抜いた戦いの終結から、早10年。

移ろいゆく時代の中、世界は、人々は、新たな当たり前を受容しつつあった。

 

 




作中にもあった通り、今作は前作から10年後の世界となります
冒頭の描写は実はゼロライブのどこかと繋がっていたり……?

ともあれ数年単位で温めていた作品をようやく形にできました

全力で見切り発車ですがこれからよろしくお願いします!!
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