トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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ギャラファイ見たい……(クレカがないせいでスタンダードプランにすら入れない男の嘆き)


13話 糸口を探れ

 

 

油汚れのシミのように、嫌な記憶というのはいつだって脳裏にこびり付いて離れないものだ。

 

あの瞬間もまた例外ではない。今でも頑固に、この瞼の裏に居座っている。

 

 

「こんなの全然、可愛くないです―――ッ!!!」

 

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。無事活動に必要なメンバーも集まり、これからグループとして歩み出そうとしていた、その時だったと思う。

 

不仲であったとか、決してそんな訳ではない。むしろ部員同士の関係は良好だったとさえも思う。

 

けれど各々の持つ個性や理想が強すぎたあまり……その衝突は起きたのだ。

 

「けどこのままじゃファンの皆さんに私達の大好きは―――、」

 

「せつ菜先輩スタイルばっかり押し付けないでください! 熱いとかそんなのじゃなくて、かすみんはもっと可愛い感じでやりたいんです!」

 

最も主張の激しかった二人の間に生じた亀裂が最初の不破だった。その内の一人が優木せつ菜。最終的に同好会の廃部を決めた、実質的なリーダーだ。

 

彼女が何故その決断に踏み切ったかは定かではない。実際あの瞬間を境にメンバー間で溝が出来ていたのは事実であるし、それを危惧しての行動だった可能性もある。

 

だが彼女は誰にもそれを告げずに同好会を廃部にし、メンバーの居場所を一方的に奪った。それは揺ぎ無い事実あり、到底許すことではない。少なからず各自に想うことはあっただろう。

 

それだというのに―――、

 

 

 

 

 

 

 

高校のものとは信じ難い広さを誇る虹ヶ咲学園の食堂を満たしていたのは同様混じりの囁き声だ。それは自分達の居座る座席を中心に渦巻いていた。

 

当然だろう。校内一の有名人である朝香果林と、悪評の権化たる南雲昂貴が同じ席に腰掛けている。気にならない者などいるはずもない。また変な噂が経ちタイタスのお節介が増長すると思うと頭が痛かった。

 

「……私、やっぱりせつ菜ちゃんとしっかりお話したい。こんな終わり方なんて納得できないよ」

 

居心地の悪さなどとうに限界値へ達しているであろうに。それでもエマ・ヴェルデは淀みない意志と声で同席する3人の同級生へと訴えた。

 

彼女もまた昂貴同じ国際交流学科所属の3年生。そして解散した同好会メンバーの1人だ。

 

「愚痴るなり一発ぶん殴ってやりてぇって点でアイツに会いたいのは俺も同じだが……お前の場合は別に理由がありそうだな」

 

「せつ菜ちゃん、苦しそうだった。もしかしたら何か悩んでたことがあったかもしれないのに……私、何もしてあげられなかったから」

 

「確かにねぇ……彼方ちゃん達、3年生なのに」

 

「人が良すぎるんだよお前等は……確かに悩みか何かがあったかもしれねぇが、それとアイツのやったことは別問題だ。もっと怒ってもいいんだぞ」

 

「勿論怒ってるよ。でも仲間外れにはしたくないの」

 

強情なまでに姿勢を崩さないエマに頭を抱える。

 

母国であるスイスから留学してまでスクールアイドルを体験しに来た彼女の熱意は相当なものであるだろうに……それを踏み躙ったせつ菜を未だに案じるその心は度し難い。

 

「……また同好会を始めるなら、せつ菜ちゃんも一緒の方がいいに決まってるよ」

 

今になって彼女がその腰を上げた訳はきっと、同じく同好会のメンバーであった中須かすみからの連絡だろう。

 

5人でまた同好会を始めよう。一度昂貴が試みた方法にかすみも辿り着いたようで、先日生徒会から拝借してきた申請書と共にそう声を上げたのだ。

 

だがエマはそれに対する回答を先延ばしにしている。理由は語られた通りだ。

 

「そもそも俺は中須をまたメンバーに加えるってのも納得できねぇ。元はと言えばあの馬鹿と優木が意地張り合ったのが原因だからな。集団の不破に成り兼ねない奴は除外すべきだろ」

 

「…それ、本気で言ってる?」

 

「コウくーん……今のは彼方ちゃんもちょ~っとプッツン案件かな~?」

 

過ぎた発言だったようで口を噤む。この上級生共がそれはもう大層後輩達を可愛がっていたことを失念していた。

 

だが今の主張が間違いでないことも確かだと、抗議の意を示すように目を細めればそれを汲み取る形で果林が答えた。

 

「私も気にすることはないんじゃないのって言ったのよ? でもそれで納得するような子じゃないでしょ、エマは」

 

「じゃあ何か方法があるかってんだよ。あの自己主張の強すぎる連中を一つに纏める方法が」

 

「それはまだだけど……でも、それを考えるのはせつ菜ちゃんと話し合ってからでも遅くはないと思うんだ」

 

「彼方ちゃんも賛成~」

 

意見の合致した三人の視線が同時に昂貴へ向けられる。回答を求めている瞳だった。

 

「……わかったよ。探せばいいんだろ探せば」

 

異を唱えたところで多数決によって流されることはわかっている。

 

群れた女というのは想像以上に(したた)かで、面倒くさい。そんな教訓を胸に刻みつつ、一先ずは首を縦に振るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しず子の薄情者ぉ!」

 

場所を移し中庭。

自らの手作りであるコッペパン。その甘美な味わいを口の中に広げつつ、かすみは先刻の出来事に対し怒号を散らした。

 

「演劇部が演劇部がって、かすみんのことはどうでもいいの~? エマ先輩達も暫く答えは待ってって言ってくるし、どうすればぁ……」

 

折角同好会をまた立ち上げる手立てが整ったと思ったのに、肝心のメンバーが誰一人としてついてきてくれないのは完全に予想外だ。

 

これではスクールアイドル活動を再開できない。自身の可愛さを広めるためには、その土台となる場所が必須だというに……。

 

「今日も何もわからなかった……」

 

「落ち込まないで侑ちゃん。明日また探そう?」

 

自分以外誰もいないと思っていた中庭を横切る3人の話し声と足音。

一人だと思っていたから遠慮なく大声で愚痴っていたというのに。それが聞かれていたかもと思うと得も言われぬ気恥ずかしさがあった。

 

「スクールアイドルなんて他にもごまんといるんだし、また別の奴見つければいいんじゃねーの?」

 

「っ…!」

 

何か笑い話にでもされているのではないか。そんな不安から身を隠して聞き耳を立てるが、確認できた会話はむしろかすみにとって幸運だったか。

 

スクールアイドル、確かにそう言った。このタイミングで自分達の活動に興味のある人間が通りかかるなんてなんと好都合だろうか。

 

「そうかもしれないけど、やっぱり一回くらいはせつ菜ちゃんと―――」

 

「せーんぱいっ! スクールアイドルにご興味があるんですかぁ?」

 

絶好の機会を逃す訳にはいかないと、素早く飛び出したかすみは格別に可愛い笑顔で3人の前に立つ。

 

「どうもぉ、スクールアイドル同好会2代目部長の、かすみんこと中須かすみです♡ 先輩方、ちょーっとお話いいですかぁ?」

 

決まった。心の中で快哉を叫ぶ。これでこの3人は自分の可愛さに釘付けだろうと自信を持って閉じた目を開いた。

 

「かす…かす……えっと、何?」

 

「……暖かくなると変なの増えるよな」

 

「あ、あれ……?」

 

だが瞼の裏で繰り広げていた都合のいい妄想は、見上げた先にあった現実に容易くぶち壊される。

 

喜ばしいものを期待していたはずのそこには、困惑と冷めの混じった視線しか存在していなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おっほん! もう一度言いますが先輩方、スクールアイドルに興味はありませんか?」

 

一先ず仕切り直すのか、軽い自己紹介を済ませた後に改めて少女―――中須かすみは問う。

 

「でも同好会って廃部になったんじゃ……」

 

「諦めなければ同好会は永遠に続くのです! ……あ、取り敢えずこれはお近づきの証に、どうぞ」

 

賄賂のつもりかはたまた純然たる好意か。差し出されたのは包装紙にくるまれたコッペパンが三つ。

その真意を探るよりも早く侑達はそれらを口に含み、途端に瞳を輝かせた。

 

「美味しい……これってどこのお店の?」

 

「ちっちっち、そのパンはかすみんの手作りですよぉ?」

 

凄いでしょ、褒めて、と言わんばかりに()()()笑顔を作るかすみに異様な苛立ちを覚える。

 

誤魔化すように自らもパンを貪るが逆効果だったか。店で売りに出される代物と遜色のない味なのが余計に腹立たしかった。

 

「凄い! 流石スクールアイドル……こんなに可愛くて料理まで出来るんだ」

 

「……料理関係ある?」

 

「無いと思うぞ」

 

「へぇ~可愛いですかぁ~? そりゃあかすみんは可愛いに決まってますけどぉ……侑先輩、見る目ありますねぇ」

 

「どうしようコイツ等話聞かねぇ」

 

調子に乗ったかすみのテンションが上昇してゆくのがわかる。そして雄牙の血圧も健やかに上昇していくのがわかる。中須かすみという少女への本能的な拒絶反応を自覚した瞬間だった。

 

すぐにでも立ち去りたいところだが完全に乗ってしまっている侑がそれを許してくれない。置いてけぼり仲間の歩夢と共にただその成り行きを見守った。

 

「じゃあ先輩方ぁ、そんな可愛いかすみんと一緒に、スクールアイドル活動始めませんかぁ?」

 

だがあまりにも可愛いが連呼される頭の悪いやりとりに脳を溶かしていた頃。

気付けばいつの間にか飛躍していた話は再度の勧誘によって区切られていた。

 

「……大丈夫かなぁ」

 

「大丈夫です信じてください! かすみん、最強に可愛いスクールアイドル同好会にしてみますから! 皆さんも可愛いかすみん、見たいでしょ?」

 

「う~ん……」

 

「心底どうでもいい」

 

「はいはい見たい見たい!」

 

「じゃあ入部決定ですね! これから新しい同好会として頑張っていきましょう!」

 

都合の悪い部分は完全にシャットアウトしたかすみによって新生スクールアイドル同好会の設立が宣言される。既に人の意見を聞かない独裁体制が確立されつつあった。

 

「それじゃあ早速行きましょう! ()()のかすみんと一緒に、究極の可愛いスクールアイドルを目指して!」

 

「あ、同好会に入るとしても、私スクールアイドルはやらないよ。自分がステージに立つってよりは、誰かを応援してたいから」

 

「それってマネージャーってことですか?」

 

「まあ……やるならそうなるのかな?」

 

「えっへへ……かすみん、もうマネージャーさんができちゃいました……とにかくこれからよろしくお願いします! 侑先輩!」

 

手を取り合った二人によって完全に彼女達だけの世界が出来上がっていた。完全に蚊帳の外だった。

 

完全に締め出された世界で歩夢と顔を見合わせる。こうなった時の侑の止め方を教えろと目線で問うた。そんな方法があったら苦労しないと諦めの表情が返ってきた。つまりもうおしまいだった。

 

「いやお前……優木を探すんじゃなかったのかよ」

 

そんな中辛うじて直前の状況を思い出し、徐々に宗教染みてきた談義から引き剥がすように侑を踏み止まらせた。

 

「あー……そうだった。ついトキメいちゃって……」

 

「優木って……せつ菜先輩のことですか!?」

 

「やっぱり知ってるんだ! ねえ、せつ菜ちゃんのこと何か分かる? あの日のライブの感想伝えたいんだけど全然見つからなくてさ」

 

テンションはそのままに別ベクトルの方向へ進み始める侑。反してかすみには影が差す。

 

「わかりません……同好会が無くなってから一回も会ってないんです。かすみんも、ちゃんとお話したいとは思ってるのに……」

 

スクールアイドル以外の彼女を誰も見たことが無い。優木せつ菜を探す中で自分達が辿り着いたのはそんな都市伝説にも近い噂だったが、同じ同好会に所属していたかすみですらこの様子であるといよいよその話は本当らしい。

 

しかしこうなると完全に手詰まりだ。スクールアイドル活動を辞めてしまった今、せつ菜に辿り着く手掛かりは完全に途絶えてしまったと言っても過言ではない。

 

(いや…アイツなら……)

 

ただまだ一つ残っていた手立てを思い出す。望みはそう高くはないが、これまでのように闇雲に聞いて回るよりは余程現実的だ。

 

「まあでも、同好会が復活したらせつ菜先輩も戻ってくるかもしれませんし。今はかすみんと一緒にスクールアイドル活動頑張りましょう!」

 

既に舵を切り始めた彼女達には話さないでおく。侑が楽しんでいる手前水を差したくはないし、これに関しては雄牙一人で行動した方が都合がいい。

 

『……いいのか?』

 

(いいんだよ。……今の俺に出来るのは、これくらいだから)

 

唯一その考えが筒筒抜けであった体内の住民に問われる。蟠る感情を抑えるように返した。

 

これでいい。ウルトラマンとしての責務を果たす必要は無くなった。短い時間ではあったが、雄牙も一介の高校生に戻る時が来たんだ。だから今は目の前の高校生活に友人と一緒に取り組むべきだ。

 

(これで……いいんだよ)

 

それが己の心を誤魔化すための言い訳なのかもわからないまま、雄牙は僅かながら進んできた道を引き返すように自答した。

 




エママパイセンも登場。これで残るは演技派系スクールアイドルのみ……多分ですがもう少し先になると思います()

一応はアニメを準える形になりましたが現時点でアニガサキとの相違点はそれなりにあります(歩夢がスクールアイドルを始めてなかったり)
折角のクロスオーバーなので両者を折り合わせた話にしたい……
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