トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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今更ですがLiella!に新メンバーが加わるそうで
個人的には若菜と桜小路が気になっておりまする


15話 叫ぶ心

 

「それでは本日の役員会議を終了します。お疲れ様でした」

 

「「お疲れ様でした」」

 

自らの号令を皮切りに生徒会の面々が各々荷物を纏め、やがては会長室から退出してゆく。

室内に自分以外の気配がないことを確認すると、菜々は張りつめていたものを解くように脱力した。

 

「なんなんだろう……この指輪」

 

会議中も気が気じゃなかった理由が宿る左手の薬指に視線を落とす。

 

昨日の下校中、不信極まりない男に身につけさせられたものだが……どうしてか外すことが出来ない。まるで見えない力で固定されているかのように、指輪は菜々を捕えて離さないのだ。

 

「ドラゴン……いや、ロボットかな……?」

 

沸き立つ気味の悪さを誤魔化すように指輪の意匠に目を凝らしてみる。生徒会長である自分がこんな玩具のような指輪を填めて眺めている……傍から見たら気が狂ったとでも思われるだろう。

 

けどもうその心配もない。今しがたの会を経て、菜々の中にはそんな確信が生まれつつあった。

 

「失礼します。すみません会長、忘れ物をしてしまって」

 

「いいえ。お気になさらず」

 

役員の一人が生徒会室に駆け込んでくるが、菜々は最早左手を隠すことすらしなかった。彼女も特に疑念を示すことなく直ぐに立ち去ってゆく。菜々の手を見てなかった訳ではない。見えた上であれだ。

 

この指輪に言及する者は誰一人としていなかった。他の生徒、教師、強いては親までも、まるで見えてすらいないかのように、誰も反応すらしないのだ。

 

「宇宙人……なのかな」

 

荷物を纏めた後、再度指輪に目を落とす。

 

自分にしか見えていない指輪。一昔前の世界ならばパニックにでも陥っていた可能性があるが、今は違う。明確ではないが、この事象の心当たりとなる存在がいるから。

 

それが宇宙人。かつては空想の域を出ない存在だったが、10年前を境に広く認知されるようになった地球外生物。人類を遥かに凌駕する技術力を持つ彼等ならばこんな代物を生み出すのだって容易いだろう。

 

では何故それを菜々に……という話だが、これに関しては多発しているという宇宙人犯罪の文字が頭を過る。

 

現状私生活に影響が出ていないのは幸いだが、安心をするにはまだわからないことが多すぎる。宇宙人犯罪の一種なのかも知れないと思うと得も言われぬ恐怖があった。

 

とにかく次の休日にでもE.G.I.S.へ相談しに行こう。そんなことを考えながら自らも生徒会室を後にした時だった。

 

「朝香さん……それに」

 

「どうも、生徒会長さん。またお話したくて来ちゃったわ」

 

待ち構えていた果林。そしてその後方に伺えた同好会のメンバーに顔を顰めた。

 

このタイミングでこの面々が揃っている。つまりは、その時が来たということだ。

 

「お話、してもらえるわよね……優木せつ菜さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、結局あの指輪は何なんだ? 怪獣の力が込められていることはわかったが、それをあの女子に持たせる理由がわからん」

 

お台場に鎮座する逆三角錐の頂上。自らの頭身を遥かに凌駕した高度で腰を下ろしたオグリスは、怖じることなく見下ろした景色に零す。

 

「時限爆弾のようなものさ。少し細工を仕掛けてあってね。あれは装着者の精神に干渉し、かつ一定以上のマイナスエネルギーを吸収すると爆発するようになっている」

 

「まどろっこしい真似をする。奴等を刺激したいのなら最初からお前の手で呼び出せばいいものを」

 

「そうもいかないんだよ。実はあの指輪はまだ不完全でね。ああやって起動するのが最後の仕上げなのさ」

 

「つまり、人間の負の感情が必要だということか」

 

「そう……それによって()()()()()()

 

意図が見えない。どうであれ人間を介す必要はないだろうに。

 

元より互いの目的など明かし合ってはいないが、この男の抱くそれは何というか、自分ですら得体の知れない君の悪さを覚えるほどだ。

 

「そこで君にも協力してもらいたい。お呼びでないゲストに退場を促す役を引き受けてはくれないかい?」

 

「断ると言ったら?」

 

「いいや、君は引き受けるさ」

 

不可解なことはまだある。

怪獣の指輪もそうだが、最も解せないのはたった今手渡された()()()メダルだ。元は自分が光の国から強奪してきただけの技術だというのに。

 

「ヴィラン・ギルドと取引していたのはこの為か。だがお前、どうやってこんなものを……」

 

「手先が器用なのでね。仕組みがわかれば模倣することは容易いさ……それで、どうする?」

 

タネを明かすつもりはないらしい。人を食ったような目線がそう語っている。

 

だがまあそれはいい。不気味であることは確かだが、オグリスによって利用価値があるのも確かだ。

 

自分達はビジネスパートナーだという彼の言葉に従うのならば……袂を分かつその日まで、思う存分利用し合うと行こうじゃないか。

 

「いいだろう……乗せられてやる」

 

夕暮れの中に一筋、赤黒い闇が迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これで終わり」

 

東京湾から差す反射光が床を赤く染めている。さながらパズルの如く小綺麗に並べられた机が占拠する教室の中、最後の一台を抱えた雄牙は残ったピースを填めた。

 

週末の学校説明会で使用するという教室の準備を引き受けてから一時間程経ったか。その全てを一人で終わらせたのにも関わらず身体に疲労はない。これも自らに憑依している住人の賜物か。

 

『……雄牙、お前最近変だぞ』

 

だがその源であるタイガは何やら思うことがあるようで。

額に滲んだ少量の汗を拭う雄牙に対し、彼は神妙な声音で言った。

 

「変って、何がだよ」

 

『ここ最近、いくら何でも面倒事を引き受け過ぎだ。こんなこと続けてたらお前自身が持たないぞ』

 

「持たないって……タイガの力があるんだからそんなことは……」

 

『身体の問題じゃない。お前の心の問題だ』

 

基本的に日常生活を始めとした雄牙の行動には口を出してこないタイガだが、この時ばかりは違った。

 

自分の力が関わっていることが明らかになったからか、その態度は普段よりも圧を感じる。

 

『お前がどう思って行動しているのかは知らない。けど俺には何かこう、心に空いた穴をどうにかして埋めているように見える』

 

「別に、そんなことは……」

 

『大体お前、俺がいなくなった後はどうするつもりだ。それこそ今度は身体も持たなくなるぞ』

 

口に出された˝終わり˝の話題に返す言葉が出てこなくなる。

その沈黙を堪え切れず、足早に施錠した教室から退出した、その時だった。

 

『それはいけないな。何事においても、オーバーワークは禁物だぞ』

 

退路を塞ぐように浮遊する小人が視界の中央に居座る。

逞しく膨れ上がった黒い肉体に胸の蒼い光。忘れたくても頭から離れない筋肉ダルマの姿がそこにはあった。

 

『……何の用だタイタス。今少し立て込んでるんだが』

 

『む……それはすまなかった。昂貴に少し外してくれと言われてな。トレーニングをするにも今日の分は済ませてしまっていたし、ならば話でもと君達を探していたのだが……』

 

『自由な奴だな……』

 

言われてみれば確かにタイタスと一体化しているはずである先輩の姿はなかった。どうやら一定の距離までなら思念体だけを飛ばすことも可能らしい。

 

それだけでも驚きなのだが、多少なり揉めた相手の前に平然と顔を出せるコイツの精神はもっと信じられなかった。冷徹なのか、将又鈍感なのか。

 

『それで、私からも一言いいだろうか。聞き流すのには少々重い内容に思えたのでな』

 

『余計なお世話だ。誰が原因だと思って……』

 

『尤もではあるが責務なのでな、理解してくれ。それで雄牙、タイガも言っていた通り、今の君からは焦りのようなものを感じる。指標を失い迷ってしまうのもわかるが、何も戦うことだけが人生の全てではないんだ。これから君の打ち込めるものをゆっくり探していくのも、決して悪いことではないはずだ』

 

『なんか言いたいこと言われたのが癪だが……まあ、俺としても同意見だ。お前が無理をして心配する奴もいるってことも忘れるなよ』

 

突然始まったウルトラマン2人によるカウンセリングに顔を顰めるが、同時に思う。

確かにあの日以降手当たり次第に雑務や頼まれ事に手を出していたのは事実だ。タイタスはともかくとして、タイガに余計な心配を掛けるのは確かに好ましいことではない。

 

「…わかったよ、今度から気を付ける」

 

『余計な心労を掛けてしまってすまないな。詫びと言っては何だが、君に適した筋トレ方法でも教えようか?』

 

「前後の文脈繋げて話してくれよ頼むから」

 

『関係ならあるさ。筋トレというのはメンタル面にも効果があるからな。適切に身体を鍛えればそれに精神も伴ってくる。そうだな、君の体格ならば―――、』

 

「だあぁぁそれこそ余計なお世話だろ! もうこの後生徒会室寄って帰るだけだからそんな話聞いてる時間ねぇよ」

 

どうも身体を鍛えすぎると精神面もおかしな方向に鍛えられてしまうらしい。知的に思えていたタイタスの印象が瓦解していく音を聞きながら逃れるように進む足を速める。

 

『生徒会室? 確か、昂貴もそこに用があるとのことだったが……』

 

「なんでまたそんなとこに……」

 

『何も生徒会長に用があるらしい。どうやら彼等の探していた優木せつ菜という者の正体が彼女であるらしくてな』

 

「は……?」

 

さらりと告げられた事実に足を止める。丁度生徒会室の真ん前だった。

 

「優木せつ菜はもういません! もうこれ以上せつ菜として関わろうとしないでください!」

 

故に室内で交わされる口論も鮮明に聞き取れた。

馴染みのある旧友の上げた声が廊下にも響くと同時に、扉を突き破らん勢いで飛び出した少女が真横を駆け抜けていく。

 

『あの指輪は……!』

 

誰であるかなど、改めて確認するまでもなくわかっていた。

そしてその左手に宿る不穏な気配を見逃さなかったのは雄牙だけではない。遅れて顔を出した昂貴に向けてタイタスが叫ぶ。

 

『彼女を追うぞ昂貴! 何か……嫌な予感がする』

 

「は? お、おう……」

 

「ちょ……コウ君!?」

 

タイタスが戻った昂貴の身体が尋常ならざる瞬発力で菜々の後を追ってゆく。状況を理解出来ぬままの上級生達の困惑のみが残留する。

 

「……!」

 

状況は掴めないが、嫌な予感がするのは同じだ。一瞬だけ見えた旧友の表情を思い起こした雄牙もまたウルトラマンの力を介し、彼等に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてか抑えることのできない感情が昂るままに足が向かったのは、やはりこの場所だった。

最後のライブを行った場所。優木せつ菜として最後の姿を見せた場所。決めたはずなのに、まだ未練がましくもこの身体はここに残滓を求めてしまう。

 

「中川!」

 

そんな自分が情けなくて、嫌で、腰掛けた階段に蹲っていた時。

遠方から掛かった声に反応し、菜々は眉を揺らした。

 

「瀬良さん……」

 

横に流した視線の先で彼と目が合う。ここまで走ってきたのか、肩を大きく上下させている。

そう言えば生徒会室を飛び出してきた際に彼の姿が見えた覚えがある。そうなるとここへ来た理由は一つか。

 

「……朝香さん達に言われて来たんですか?」

 

「いや……でも、中川が優木せつ菜ってことだけは知ってる」

 

「ならやっぱり連れ戻しに来たんじゃないですか! 私のことはもう、放っておいてください!」

 

「いや、今の中川は放っておけない。だからここまで来たんだろ」

 

「…それは、高咲さんが望んでいるからですか」

 

「俺の意志だよ。俺が中川と話がしたくてここまで来た」

 

答えた彼の瞳に澱みはなかった。本心からの言葉だということは素人目で見てもわかるほどに。

 

「まずさ……なんで、スクールアイドルを辞めたのか聞いていいか? 俺はまだその辺も知らないからさ」

 

本当に自分がせつ菜だという情報だけでここまで追ってきたらしい。そんな彼の愚直さに呆れるが、同時に思う。真実を知れば自分への執着も消えるだろう。

 

これまでも、これからも、同好会の面々が自分を気にする必要はない。それが正しいはずだから。

 

「……私は、同好会の皆さんの大好きを傷付けました」

 

「大好き……?」

 

「ええ。だからこれ以上皆さんを傷付ける前に辞めるべき……そう考えただけです」

 

未練を引き摺る自分自身にも言い聞かせるように語る。

 

「待て待て話が見えない。もうちょっと具体的にだな……」

 

「そうですね……瀬良さん、何かスクールアイドルについて知っていることは?」

 

「学校でアイドル活動やってるくらいしか知らないけど……あ、あと学校ごとにグループあるってのも」

 

「そうです。だから私も同好会の皆さんとグループを結成しました。……けれど中々足並みが揃わなくて、それでも一つに纏めようと頑張りましたが……ただ衝突が増えてゆくだけでした」

 

初めて仲間と口論になったあの日のことを想起する。いつ思い出しても酷い出来事だ。自分のことに必死で、共に歩む仲間のことなど何一つ見えてはいなかったのだから。

 

「その理由は私にありました。私が、私の求める理想を皆さんに押し付けてしまっていたから、あんなことになってしまったんです」

 

「だから辞めたって?」

 

「ええ。スクールアイドルとして掲げていた大好きなんて、結局自分本位な我儘に過ぎなかったのですから。そんな私が誰かと手を取り合おうだなんて考えたのがそもそもの間違いだったと、今となっては思いますね」

 

言い切って軽く息を吐く。悲しい程に痛む胸は未だ残る未練の証だ。

 

でもそれも終わる。彼にトドメの言葉を放ってもらえれば、それで終われるはずだから。

 

「失望、しましたか?」

 

「そうだな……まあ、俺が思ってたほど優木せつ菜は立派な人間じゃなかったのはわかった」

 

そう、思っていたのに。

 

「でも、やっぱりお前は同好会に戻るべきだと思ったよ。優木」

 

初めてその名で自分を読んだ彼の言葉はまだ、中川菜々を優木せつ菜として留めてしまう。

 

「なんでですか……なんで皆してそんなこと言うんですか……!」

 

「優木に戻ってきて欲しいって思ってる人が大勢いる……それじゃダメなのか?」

 

「ダメに決まってます。私にもうスクールアイドルをやる資格は……」

 

「……お前はスクールアイドル続けたくないのかよ」

 

「やりたいですよ私だって! 続けたかったに決まってるじゃないですか! でもダメなんです……私がいたら、同好会の皆がスクールアイドルを続けられないんですよ!」

 

絆そうとしてくる雄牙の言葉を押し返すように捲し立てた。流れ出た雫が繰り返し地面を叩く。

 

でも硬いコンクリートに弾かれる涙と同じく、この悲痛な想いさえも雄牙には届くことはなく。

 

「甘ったれてんじゃねぇッ!」

 

突如として上がった怒号に菜々の訴えは掻き消されてしまう。

 

「たかだか一回失敗したからなんだってんだ。それで誰かがお前を責めたか? 誰かに辞めろって言われたのか!?」

 

「それは……」

 

「お前は皆に求められてる……まだやり直せるんだよ! もう誰にも期待されてない俺なんかと違って、応えられる力を持ってるんだよ! だったら四の五の言ってないで応えやがれッ!」

 

それは最早絶叫と化していたとすら思う。論理性などかなぐり捨てたただの八つ当たりだ。

故に、こちらも腹が立ってくる。皆から見れば自分勝手な決断だったのかも知れないけれど、それでも自分なりに悩んで、仲間のことを想って出した結論なんだ。

 

「あなたに……あなたに何がわかるんですかッ! 瀬良さんも私と同じですよ。ただ自分の我儘を人に押し付けてるだけです!」

 

もう止まれなかった。

˝優木せつ菜˝として残した未練、後悔、プライド、束の間の仲間への想い。その全部がぐちゃぐちゃに掻き回されている。

 

だから、気付かなかった。

 

「何度も言わせないで……。もう……放っておいてくださいッ!」

 

苦しくてたまらない。その地獄から解放されたくて上げた心の悲鳴。

 

その叫びに呼応するように、左手に嵌められた指輪が妖しく発光していることに。

 

「お前、それ……!?」

 

「え―――」

 

雄牙の指摘でようやく自覚に至るも、その時には全てが手遅れで。

 

膨れ上がり、菜々の指を離れた光は自分達の上空で眩く弾け―――、

 

 

 

 

●▲■――――――♪』

 

 

 

 

巨大な˝白˝が降り立った振動と共に、無機質な歌を街中へと響かせた。

 

 




全力で状況を悪い方向へと持ってゆく主人公ズ。現状誰1人幸せになってないってマジ?

そんな芳しくない状況の中出現したのは一体……(せつ菜との対比を意識したキャスティングとなっているので良ければ予想してみてください)


余談ですが結構忙しくなってしまい書き溜めの分まで使い切ってしまったので次回から更新頻度が落ちそうと予告しておきます
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