トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~ 作:がじゃまる
2週間も更新できずに申し訳ない……マジで書く時間が確保できず…………
『ヌウゥゥンッ!』
夕暮れ時の街に響く悲鳴を雄叫びと爆音が掻き消す。
知能を有した怪獣とウルトラマン。人知を超越した者同士の戦いの余波は、人々が久しく忘れていた苛烈な戦いを呼び起こさせた。
『……成程な。その名の通りゼットン、そしてパンドンの力を併せ持つという訳か。怪獣の力すらも扱えるとは、光の国の技術力には恐れ入る』
『ああ、同意見だな。新しい玩具というものは如何なる時も心を躍らせるが、コイツは格別だ。ゴクジョーというやつだな』
『貴様……そのアイテムは光の国の科学者達が平和への願いを込めて生み出したものだ。それを悪戯な目的で扱おうなど、私の
『世迷言を言う。平和だの正義だのを謳っておきながら、お前達が生み出すのは他者を圧するための˝力˝……目先の事象しか見えてない偏狭的な考えに囚われている証拠じゃないか』
傍から見ても互角の戦いであるとは思うが、昂ぶりを示すように鉤爪で口元を掻くゼッパンドンからは底知れぬ余裕を感じる。余力を残しているのはこちらも同じだが、奴の醸す雰囲気に底知れぬ気味の悪さがあるのは確かだった。
『それに平和というのは即ち退屈だ。リスクも刺激もない日々で貪る生など死んでいるのと同義……そう思わないか?』
『フン……それのみが楽しみだと考えているのなら貴様こそ視野が狭いな。世界は思っている以上に広い。世の摂理を語るのなら、もっと知識を付けることだなッ!』
会話が生んだ束の間の休息が終わり、大地を蹴り飛ばしたタイタスの突貫により戦闘が再開される。
殺到する火球をその身一つで弾き返しながら到達した標的の眼前。勢いを保ったままのタックルがゼッパンドンを薙ぎ払ったことを確認し、間髪入れずに右腕を突き出す。
『˝ロッキングフレア˝ッ!』
追撃の波状光線が爆音を上げる。だが手応えがない。
煙幕が晴れた瞬間に明かされたその理由。それはゼッパンドンを守るように展開された光の壁だった。
「バリアー……?」
『ゼットンの能力か……これは厄介だな』
『フフ……これだけではないぞ』
防御の間に体勢を立て直したゼッパンドンの側頭部に備わった器官に光が集約してゆく。
それがたった今吸収されたタイタスのエネルギーであることを理解した瞬間―――、
『ッッッ――――――!』
『ぐうぅッ……!』
数倍の威力で跳ね返された自らの光線をクロスした両腕で受け止める。踏ん張りを利かせる足元でアスファルトが砕けてゆく音が聞こえた。
『隙だらけだな』
「ッ……! タイタス!」
いつの間にか真後ろへと回り込んでいたゼッパンドンの凶刃が迫る。通常の怪獣と異なり伸びる鉤爪の数は一本だが、それが故に巨大だ。もし引き裂かれようものなら―――、
『何…?』
間延びた声が漏れた。今度は自分達ではなく奴のものだった。
振り下ろされた切っ先は確かにタイタスの背中を捉えている。だがそれは膨張し硬化した僧帽筋の壁を超えることはなく、完全に威力を殺されていたのだ。
『筋肉の鎧という訳か……つくづく楽しませてくれるな』
『私の筋肉を侮ったな……フゥンッ!』
奴に光線は厳禁。その学びからぶん回した裏拳がゼッパンドンへとミート。
だがまたもそれは次へと続かない。会心の手応えのままに仕掛けた追撃の殴打は空を切ることとなる。
「消えた……?」
直前までそこにあった奴の姿は消えていた。息もつかせぬ攻防戦の中でその行方を追う。
『こっちだ』
次に奴が姿を見せたのは真上。火炎弾をさながら雨のように降り注がせてタイタスを襲った。
手痛い攻撃ではあるが同時にチャンスだ。空中であれば回避行動は取れまい。そう判断し即座に殴り返そうとするが、またも直撃の寸前で奴の姿は消えてしまう。
『テレポート能力まで引き継いでいるのか……』
「ちぃ……!」
反則に近しい能力によるラッシュは続く。こちらも奴が姿を見せる度に迎撃を試みるが、その悉くは何も捉えられないまま終わる。屈強な肉体と言えど徐々に疲弊してゆくのを感じた。
『闇雲に攻撃をしているだけではダメだ昂貴。ただこちらが消耗する一方になる』
「…だったらどうする」
『無論だな。筋肉に不可能などない!』
淀みなく意味の分からない返答を口走ったタイタスはその場で動きを止め、全身の筋肉に緊張を走らせた。
鍛え抜かれた肉体は常識を逸した行為すらも可能とする。極限まで鋭敏となった筋肉は瞬間移動の際に生じる大気の揺れすらも感知し―――、
『そこだッ!』
弾き出した奴の居場所目掛けて全力で腕を振り抜く。
多少のインターバルがあるのか、回避が間に合わないと判断したらしいゼッパンドンが再度バリアーを展開。最強の矛と盾が衝突する。
『オオオォォォッッ!!!』
だが全てを砕くのが賢者の拳だ。
ゼッパンドンの張った障壁をギリギリでブチ抜いたタイタスの一撃は奴へと到達。限りなく鈍い重低音を伴ってその肉体を後方へと運んだ。
『ハハハ……! いいぞ、もっと私を楽しませろ!』
渾身の一発を受けてもなおゼッパンドンは余裕を含んだ様子で愉悦の哄笑を上げている。
改めて臨戦体勢を取りつつ後方を見やった。視線の先では尚もギャラクトロンが進行を続けている。このままでは奴の対処が間に合わないことは明白だ。
「くっそ……!」
危機感が焦りを加速させる。迫るタイムリミットを告げるように、赤色へ変わった胸の光が残された時間を刻むのだった。
「やめろ中川ッ……! 何する気だ!」
「離してください! 私は……!」
巨大生物同士の激突が齎す振動に震える街の中、雄牙は羽交い絞めにする形で進撃するギャラクトロンを追う菜々を制止する。
だが雄牙と菜々の体格差もあってか、身体をくねらせ上手く拘束から逃れた彼女はまたすぐに走り出してしまう。先程からこの繰り返しだ。
『雄牙コイツ……学校に向かってるぞ!』
「は……?」
菜々の指に嵌め込まれていた指輪からこのロボットが出現した。何度目かもわからない捕縛を試みつつ状況を立ち返った時、危機感を帯びたタイガの声が頭に響いた。
確認してみれば確かにそうだ。ギャラクトロンの進行方向を直線に結べば行き着く先は虹ヶ咲学園。恐らくまだ侑や歩夢が残っているであろう場所だ。
となると菜々がこうして必死になっているのは……、
「中川お前……何考えてんだ!? 無理に決まってんだろあんなモン!」
「でもっ、あれは私のせいで……!」
両端に涙を溜めた目で訴えてくる菜々に何かが奥底で揺れ動くのを感じた。
彼女のせいかどうかはさておき、このままでは学校にいるであろう生徒達が危険であるのは確かだ。
出撃したタイタスは今、別途出現した怪獣に足止めを喰らっている。よしんば突破出来たところでギャラクトロンを相手取る余裕があるようには思えなかった。
(……いや)
そこまで考え、今はどうにかして菜々をこの場から遠ざけるのが最優先だと判断し捕縛を再開する。
これでいいんだ。そもそももう自分が戦う必要性なんてないじゃないか。迷う心に無理矢理結論を添えつけた……その時だった。
「本当に止める必要があるのかなぁ」
「ッ……!?」
人影など他になかった歩道に現れた気配に悪寒が走る。
直前まで何者も存在してはいなかったそこに佇んでいたのは一人の男。その風貌や特徴的な白黒の衣服には見覚えがあった。
「この前の……」
タイガと出会ったあの日。雄牙の放り投げたキーホルダーをどこからか拾い上げ手渡してきたあの男性だ。
あの時はどうやってそれを見つけたのかということにばかり目がゆき、当人の様などさして印象には残っていなかったが……こうして対峙してみるとハッキリとわかる。少なからず一介の地球人でないことは明らかだった。
「やぁ。私からの贈り物、お楽しみ頂けているのなら何よりだ」
そしてその答えは直ぐに明かされることとなる。
男が語り掛けたのは雄牙ではなく菜々。薄ら寒い笑みを張り付けたその顔は、まるで嘲笑うかのように彼女を見下ろしていた。
「アンタがあの指輪を……!」
『宇宙人か……変われ雄牙!』
主導権が入れ替わると同時に跳躍した身体は飛び蹴りの姿勢で男へと直進する。
だがそれは敢え無くいなされてしまう。瞬時に第二撃へ繋ごうとしたタイガを突き出した腕で制止し、芝居染みた仕草で男は言う。
「おいおい酷いなぁ。宇宙人と言うだけで差別か?」
『あんなものを召還しておいてそれが通じると思うか?』
「私はただ贈り物をしたに過ぎないさ。最終的にあの選択をしたのは彼女だ」
『屁理屈を……!』
「屁理屈かどうかは君が決めることじゃない。そうだろう?」
大きく上体を反り返らせ、菜々へと注がれる視線。
「私は言ったね。君の迷いが良き方向へ向かうことを願ってこれを贈ると。そして現に指輪は君の心に答えた……それが何よりの証拠だと私は思うよ」
「どういう……ことですか」
「あのロボットは言わば、君の心の写し鏡だ。君の本心が思い描いたままに動き、その願いが果されるまで止まらない」
菜々の顔色が殊更に青くなる。
その変容が心底可笑しいと言うように口角を吊り上げる男の様は、最早度し難い何かでしかなかった。
「少なからず思っていたんじゃないのかい? 自分の足を引っ張る周囲が悪いと。実力もない癖に自分の邪魔をする彼女達が憎いと」
「そんなこと、ある訳……!」
「どうだろうね。胸に秘める真意とは時に無自覚であるものだ。それが受け入れ難いものであるほど盲目的になり、真理から遠ざかってゆく。君は仲間を疎ましく思っていた自分を受け入れたくなかっただけさ」
「ちがっ……私は……!」
並べられる言葉こそが屁理屈だった。
だが指輪の影響か、将又相当に精神が摩耗していたのか。今の菜々にそれを振り払う術はない。
「なぁに、決して悪いことではないさ。意志を持つ一つの生命体として当然の理、それに蓋をし封じ込めることはない……君もそう思わないかい? 瀬良雄牙くん」
故に纏わりつく一言一言は悪魔の囁きと化す。
曲解を生み、歪ませる。全てを己の思う方向へ進めんとする男は再度雄牙の方を向く。
「いや……ウルトラマンタイガと呼んだ方がいいかな」
『どうしてお前がそれを……』
「ずっと見ていたからね。君がこの星に降り立つ前……10年前のあの日から」
『ッッ……!? あの時のはお前が……!?』
タイガに走る動揺を感じた。
言葉そのままの意味だろう。10年前にタイガが肉体を失った理由……それがこの男だという。
「ウル、トラマン……?」
菜々の口にした小さな声が耳朶に触れる。
恐らくこれも狙ってのことだろうと、身体の主導権を自らに戻した雄牙は事態を煩雑にしてゆく男を睨んだ。
「話を戻そうか、雄牙くん。君も今、彼女と似たようなことで悩んでいるね。自分達よりも強いウルトラマンが来たから、もう戦う理由はない。それだというのに君の心はその選択に踏み切れずにいる……どうしてかわかるかい?」
そんな雄牙に、奴は尚も余裕を崩さないまま鷹揚に腕を広げた。
「それは嫉妬だよ。後から来た奴が何もかもを攫ってヒーロー面をしていることへの嫉妬。悔しい思いをしただろう? 惨めに感じただろう? 先に戦い始めたのは君だというのにねぇ」
心にもないだろう嫌味ったらしい慰めを並べられる一方的な同情は次の言葉で区切られた。
「君の気持ちはよくわかる。理解されずに苦しいだろう。認められず悔しいだろう……だから、私が機会をあげよう」
男が指を鳴らした直後。
突然進行を止めたギャラクトロンの双眼が煌めき、虹ヶ咲学園へ向けて赤い閃光を射出したと思えば―――、
『●▲■―――♪』
着弾地点に魔方陣が浮かび上がり、遅れて爆発が起こる。
「いや……やめてください!」
複数の悲鳴が重なって聞こえた。片方は縋るような菜々の声と、もう片方はウルトラマンとしての聴覚が捉えた虹ヶ咲学園からのもの。
やはりまだ多数の生徒が残っているらしい。その中にはきっと彼女達もいることだろう。
「さあ、ギャラクトロンを倒すんだ。そうすれば君はヒーローとして返り咲ける……もうあんな想いを繰り返さないで済む」
反射的にタイガスパークを出現させた雄牙を見下ろしながら、男は指示にも近しい口調で変身を促す。
その真意はまるで伺えないが……コイツは雄牙が、タイガが変身して戦うことを望んでいる。それだけは確かだ。
『雄牙……』
何が狙いかわからない。タイガが戦うことで生まれるコイツの利点とは何だ。
ただでさえ不信感を買っている現状だ。もしそれによって余計な被害を生めば今度こそ取り返しのつかないことになる。
「おいおい、仮にも光の使者がそれでいいのか? 今この瞬間にも数多の生命が危機に晒されているというのに……正義の名が聞いて呆れるなぁ」
『言わせておけばこの野郎……!』
自分で手招いておいて何をとは思うが、その言葉通りなのは事実。
タイタスもタイガと同じウルトラマンである以上活動限界時間はある。胸の光―――カラータイマーの点滅が始まっている手前これ以上の戦闘は期待できない。
いや待て。まだE.G.I.S.が―――、
「なんで……これ以上私に奪わせるんですかッ!」
「ッ……!」
なんて、現実逃避のように別な希望へ縋った心は―――次の瞬間に打ち砕かれた。
未だなお止まることの無い菜々の涙は、やはり悲痛なくらい胸に響いて。
だからこそ、雄牙の中で何かが崩れる音がした。
「まだそんなことを……受け入れれば楽になるというのに君は……」
雄牙を横目に流した男はにやりとその頬を吊り上げ、わざとらしく菜々へとと吐き捨てた。
「だがまあ……それもいいだろう。例え間違ったものでも、それを正しいと肯定できるのならそれは素晴らしいこと。10年前、私がこの目で見たものだ」
そして、パチン。
再度その指が音を鳴らしたと思えば、正面を180度入れ替えたギャラクトロンの砲台がこちらへと向けられる。
煌々と輝く紅は、次の瞬間に訪れる終わりを意味し―――、
「だから祈りたまえ。君にとって都合のいい……ヒーローが現れることを」
意図してか偶然か、訪れた最後のトリガー。
瞬間、全ての迷いは―――弾け飛んだ。
《カモン!》
レバーの引き抜かれたタイガスパークが霧散させた光。
「だあああぁぁッ!!」
淡い粒子の形成したキーホルダーを掴み取り、掲げる。
次に上がった光芒の柱は、殆ど絶叫に近い声を天へと轟かせた。
《ウルトラマンタイガ!》
『シュアァッ!』
立ち昇った光がギャラクトロンを浮き上げ、転倒させる。
不発に終わった主砲のエネルギーが行き場を失い暴発。次に起き上がった瞬間には抉り取られたかのように大きく欠損した胸部が確認できた。
「瀬良…!? お前なんで―――」
「……すみません。でもやっぱり、耐えられないんだ」
「はぁ……?」
タイタスの中から驚嘆に近い声を上げた昂貴に対し、雄牙は静かに紡いだ。
「別にアンタ等やE.G.I.S.を信用してない訳じゃない……けど、絶対にどこかで守り切れない時ってのはあるんだ。もしその時にまた何かを失えば、傷付ければ……俺はきっとそれをアンタ等のせいにする。後悔も、きっと」
助けを求める声に応えるヒーローは既にいる。自分よりもずっと強い力と心で、あの場に立っている。もう自分の出る幕なんてないのかもしれないけど。
それでもやっぱり、力を持ちながらそれを黙って見ていることなんて、我慢ならなかった。
「勿論俺が戦ってどうにかなる保証なんてない。だけど誰かに任せたせいで、何も納得できないまま終わるよりはずっとマシだ」
ずっと続けられる訳じゃない。タイガが星へ帰ればそれで終わる物語だ。でも彼がいる以上、自分には戦う力が、守る選択肢があるから。
「だからせめて、俺にその力がある内は……守りたい」
今は何を言われても引かないと示すように、低く構えたタイガはギャラクトロンと対峙する。
『何かを守れる状況でそれを放棄すれば、それこそ宇宙警備隊……強いてはウルトラマンそのものの沽券に関わる。そう思わないか? タイタス』
『ふ……仮にもタロウの息子か。度胸と建前は一級品らしい』
タイガが皮肉染みた含みで雄牙に続けば、タイタスもまた構え直すことでその返答を示す。
『正直今回ばかりは助かった。君達に戦いから退くことを強要した手前こんなことを言うのは筋違いかもしれないが……任せてもいいんだな?』
『ああ。任せとけ!』
巨人同士の視線が交錯する。
出自も思想も違う。けれど、今この場所において目指すものは同じ。共有する意志が両者を結びつける感覚があった。
『……だそうだ、昂貴。案外、君達の考えは似ているのかもしれないな』
「……うるせぇ」
それは巨人と一体化する者達にも伝播する。
少しの間の後、最後の禊を済ますように、昂貴はタイタスを介して雄牙と向き直った。
「…また下手な真似したら承知しねぇぞ。いいな!?」
「……はい!」
同時に大地を蹴った巨人。
方や知性を有する獣、方や無機質な傀儡に見舞った強烈な一撃は、衝突を次のラウンドへと運ぼうとしていた。
一時的とはいえ互いの在り方を許容したことによりタイガとタイタスの共闘戦線が結成
そしてさらーっと流しましたが事案おじさんの介入によりせっつーに正体がバレております雄牙くん。果たしてどうなるのやら……