トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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せつ菜関連、アニガサキ3話に当たる話は今回で一区切りです


19話 大好きを歌う

 

『フム……それがっ、中川菜々の光っ、からっ、生まれたっ、ブレスレットという訳……かっ!』

 

雄牙の左腕を見下ろすタイタスがスクワットの姿勢を取った零体を上下に動かしている。異様な光景ではあるがもはや誰もツッコもうとはしなかった。

 

手のひらに転がるのは二つのブレスレット。どちらも先日の戦いの中で手にした代物だが、その性質はまるで異なると言ってよかった。

 

『確かにこれは彼女から発された光から生まれたものだ。だがこれに込められているのは明らかに俺達ウルトラマンの力……どうしてただの地球人にこんな光が……』

 

『心当たりはあるにはあるが……この目で確かめないことには何も言えないな。一先ず、そのブレスレットは君達が持っているといい。ギャラクトロンから回収したという指輪も含めてな』

 

「それなんだけど……」

 

自身を挟んで何か難しい顔をするウルトラマン達の会話に割って入った。

当人の力に関してはやはり当人に聞くのが一番。そんな判断の元タイタスへと続ける。

 

「この二つのブレスレット、使った時の感覚が全然違ったんだよ。タイタスのは力を引き出すみたいな感じだったけど……中川のはこう、足りないものを満たすみたいな、そんな感覚だった。そっちの方は何かわからないか?」

 

端的に言えば、エネルギーの消費量に大きな差があったということだ。

 

タイタスレットの力は強力無比ではあったが、その分瞬く間に消耗しきってしまった。対して菜々から受け渡されたロッソレットは単発の攻撃にしか使用できなかった分身体への負担は殆どなかったと言ってもいい。

 

タイガ曰くウルトラマンの力という点では共通するらしいが……この差は一体何なのか。

 

『確かに、それは傍目に見ていた我々も感じたことだな。詳しくはわからないが……もしかすると、我々が共通のアイテムを使用していることが影響しているのかもしれない』

 

『アイテムって……タイガスパークのことか?』

 

『ああ。タイガスパークは装着者同士を強く結びつけるアイテム……その性質が故に、タイガスパークを介して生み出した私の力は同じ使用者である君の身体に効き過ぎてしまった可能性がある……ということだ』

 

『あり得るのか? そんなこと……』

 

『そこに関しては光の国の出身である君の方が詳しいはずなんだがな……まあ、あくまでも仮説に過ぎないさ。もしかすると、私達の体質の親和性が高しいのかもしれないしな』

 

『それはそれでなんか嫌だな……』

 

『なんだと?』

 

肝心のウルトラマン2人が喧嘩腰に突入したことで議論は幕を閉じた。明確な情報こそ得られなかったが、まあ性質の違いさえ頭に入れておけば今後の戦いで同じ轍を踏むことはないだろう。

 

最も、彼等が雄牙達が戦うことを容認するかどうかの問題もあるのだが……、

 

「……別に、役立ってる限りは止めねぇから安心しろよ」

 

「え……?」

 

その返答を求めるように視線を流せば、呆れたように昂貴が漏らした。

 

「…いいんですか?」

 

「お前から聞いてきたくせになんで驚いてんだよ……まあ、今回助けられたのは事実だしな。それによくよく考えてみりゃ、戦える奴は多いに越したことはねぇし」

 

取って付けたような方便を並べる彼の姿は少々歯切れが悪く思えた。

適当な理由を添えて何かを誤魔化そうとしている。そんな様子だ。

 

『昂貴が君の信念に共感してしまった。それだけのことさ』

 

首を傾げていれば代わりにタイタスが補足してくれる。タイガを締め上げながら発される穏やかな声音の温度差に風邪を引きそうだったが気にしないことにした。

 

『誰かに任せた結果、納得のできない終わりを迎えたくないからこそ戦いたい……昂貴もまたその想いの元私と戦うことを選んだのだからな。だからこそ、君のその想いを否定することが出来ない。私にはそう見えたぞ』

 

「…しゃべり過ぎだぞタイタス」

 

『はは、すまないな』

 

よくわからないが、戦うことを認めて貰えた……そう判断していいのだろうか。

 

『……タイタスはいいのかよ。俺はその……規律違反を犯してる訳だし』

 

『無論そこに関しては容認したつもりはない。宇宙警備隊への報告を取り下げるつもりはないし、光の国から使者が来れば君の処遇はそちらに委ねるつもりだ』

 

『まあ……そうだよな』

 

『だが現場での判断が一任されている以上、その時までは私の管轄だ。よって私は君が星に帰還するまでの間は共に戦うことを認める』

 

「……いいのか?」

 

『ああ。昂貴も言った通り、今回は君達の活躍に助けられたからな。……それに、タイガが肉体を失う原因になったという者と対面しているのは今のところ君達だけと考えれば、やむを得ない部分もある。これは地球での任を背負っている者としての判断だ』

 

タイタスが本来追っていた者とはまた別のようだが、見過ごすことも出来ないのもまた事実。そちらに対処するためにも出来るだけ人員は確保したい考えがあるのかもしれない。

 

『君に対して何かしらの目的があるのは明らかだからな。恐らくそう遠くない内に再び接触してくるだろう……10年前から暗躍しているような奴だ。十分に警戒してくれ』

 

『……わかってるさ』

 

肉体を失った教訓からか、答えたタイガの声色にはいつになく真剣味を帯びていた。

 

力を認められた訳じゃない。あくまでも敵を探る上での有益な存在であるとしての保留だ。どこかで失態を犯せば直ぐに否を突き付けられることだろう。

 

これまで以上に目の前の課題と向き合わなければいけない。決意の紐を固く結び直した。

 

「ま……この話はここでいいだろ。それより今はアイツ等のことだ」

 

対話を切り上げた昂貴がまた別の方向へと視線を流す。

見上げた先は虹ヶ咲学園の校舎―――その屋上。ウルトラマンの力によって強化された威力は、スクールアイドル同好会の面々と向かい合う優木せつ菜の姿を捉えた。

 

「……よく説得出来たな」

 

「いやまあ……俺もなんでなのかはわかんないんですけど……」

 

正直感情のままに当たり散らしただけなので何が彼女を突き動かしたかは全くわからないし、何ならウルトラマンであることがバレてしまったことによる焦りしかないのだが……まあ、今はこれでいいと、根拠はないがそう思った。

 

「でも……もうアイツは大丈夫だと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええぇぇぇッッ!? 生徒会長がせつ菜先輩だったんですかぁ!?」

 

放課後の屋上にかすみの絶叫が木霊する。

ケジメを付けるべくこの場所へ呼び出した同好会のメンバー。彼女達へまず最初に菜々が打ち明けたのは、自分の正体だった。

 

「はい……黙っていてすみませんでした」

 

果林を通じて既にそれを知っていた3年生達はともかく、あの場にいなかった1年生組、そして雄牙曰く自分のファンであるという高咲侑は驚きを隠せない様子でいた。

 

「それに……同好会のこと。私の身勝手な行動で皆さんに迷惑をかけてしまったことは、本当に申し訳なく思ってます」

 

そんな彼女達に深く頭を下げた。

こんな事で許されることとは思っていないけど、自分にはこれしか出来ないから。だから精一杯の誠意を込める。

 

「……わざわざエマ達を呼び出したってことは、何か考えに変化があったってことでいいのよね?」

 

「ええ。同好会に亀裂を入れてしまった私がスクールアイドルを辞める理由があっても、他の皆さんまでがそれを奪われる必要はない。だから私が悪役になることで同好会が復活できるならそれでいい……そう思ってました」

 

果林の問いに答える形でここに至るまでの心境の変移を語った。

 

「けど……気付いたんです。私はただ、誰かの大好きを傷付けることで他でもない自分自身が傷付くことを恐れていただけなんだって。ただただ、逃げ続けていた卑怯者です」

 

「そんなことないよ! それに、今回のことは私達の力不足でもある訳だし……」

 

「ごめんね。もっと彼方ちゃんに頼りがいがあれば……」

 

「…お二人の優しさは嬉しいです。でも元を辿れば原因が私であるのは確かですから。……だから、皆さんが嫌だと言えば、私はそれを甘んじて受け入れます」

 

すぅ、と。

一拍の間と共に深く深く吸った息の後。

 

「その上で言わせてください…………私にもう一度、皆さんと一緒に歩むチャンスをくださいませんか」

 

スクールアイドルを続ける決心はついた。けど、また行き過ぎた気持ちが誰かを傷付けることを恐れている自分がいるのも事実。

 

だから仲間達に委ねた。卑怯なのはわかってる。都合がいいのも承知の上だ。でもこれしかわからなかったから。だから次に掛けられるであろう言葉を待った。

 

「ほんっとうに面倒くさいですね……せつ菜先輩は」

 

最初に返ってきたのは、最も傷付けたはずの後輩の声だった。

 

「……今更せつ菜先輩抜きだなんてあり得ませんよ。お披露目ライブは流れてしまいましたが、一緒にステージに立ちたいって気持ちはまだ消えてませんから」

 

「そうですよ。確かに厳しすぎたところもあったかもですけど……それでもかすみん達にはせつ菜先輩が必要なんです!」

 

「彼方ちゃんも右に同じ~。また一緒に練習したいもん」

 

「今度はちゃんと頼って貰えるように、私達も頑張るね!」

 

せつ菜を拒むものはなかった。

次々に上がる声色の彩りは様々で、何一つとして同じものはなかった。この景色は自分がこの場所を壊したあの日と何ら変わらない。

 

「……雄牙から聞いてると思うけどさ……私、せつ菜ちゃんのライブを見てすっごいときめいたんだ。私も、そんなせつ菜ちゃんを応援したいって思った」

 

そこ加わろうとするのは新たな色だ。

ただでさえ纏まらなかったというのに、そこにまた新しい個性が加わることで何が起こるかなんて、まだわからないけど。

 

「確かにちょっとトラブルはあったのかも知れないけど、少しずつでも、皆の大好きを叶えられるようにしていけばいいんじゃないかな。スクールアイドルがいて、応援するファンがいる……今はそれで十分だと思うから」

 

「……いいので、しょうか」

 

「うん。私達もせつ菜ちゃんの大好きを叶えられるように努力する。だから、今度はせつ菜ちゃんも叶えてよ。私達の……大好きを!」

 

少なからず優木せつ菜の色に、スクールアイドルに魅せられた高咲侑はそう語ったから。

 

だから今はただこの声に………皆の大好きに応えるだけだ。

 

「……わかりました。なら、私も全力で叫ぶだけです」

 

封じ込めていたものを解き放つように眼鏡を外し、結われていた髪を解く。

もう誰の大好きも裏切らないために。正真正銘、他でもない優木せつ菜として―――歌うんだ。

 

「私の……大好きを!」

 

 

 

 

――――― ♪: DIVE!

 

 

 

 

蓋をしていた気持ちは炎へと変わり、吹き上がった。

全身で表現するように、見る者全てへ届けるように。ただ心のままに叫び、歌った。

 

高く、果てなく。大好きの気持ちを……全力で。

 

 

 

 

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会……優木せつ菜でした!」

 

全身全霊の大好きに魅せられ、いつの間にか集まっていたギャラリーを見下ろしながら、伝える声に全てを乗せた。

 

次の瞬間に上がった拍手と歓声の嵐。それは同好会に、優木せつ菜に。新たなスタートを告げるように絶え間なく、響き続けていた。

 




前書きにも書きましたがせつ菜周りと同好会再結成の話がようやく一段落……更新できてなかった時期も加味すると中々長く感じましたね()

クロスオーバーという関係上、せつ菜についてはアニガサキを踏襲しつつオリジナル方面で描く運びになりました。個人的には雄牙の葛藤含めそこそこ綺麗に着地できたのでは―、とか思ってます

そんな雄牙達も一先ずはタイタス達に認められる形になりましたが……忘れてはならないのが風のなんちゃらさん……
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