トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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虹5thのチケ、無事掴めて一安心だぜぃ……


20話 移り変わる時

 

「……どうする?」

 

高校に進学し、大きく変わった日常にもようやく停滞が訪れた頃だった。

 

「やってみる?」

 

ずっとこのまま続くんじゃないかと思っていた。そんな3人で進んでいた時に、また新たな時間が流れようとしている。

 

「愛さんは、やってみたい」

 

ある日、屋上から奏でられた一つの歌声。それは自分の周囲に大きな変革を齎そうとしていたから。

そこに自分の意見は介入しない。決めるのは˝彼女達˝だ。

 

「…私も、やってみたい」

 

肯定により、いよいよ歯車が動き出す。

 

この時から自分の……星海耀(ほしみてる)の、全てが変わろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の復活を告げた優木せつ菜の屋上ライブ。その翌日の教室は彼女の話題で持ち切りだった。

 

元々校内でもそれなりの有名人であったせつ菜がスクールアイドルを辞めるという話が瞬く間に広がっていたくらいだ。当然屋上ライブ、強いては彼女の活動再開の話題も拡散されるのにそう時間は掛からなかった。

 

「……人気者だな」

 

顔を赤く染め、むずがゆそうに口元を結んでいる隣席の友人に視線をやる。

 

せつ菜の話題に沸いている生徒の殆どはその正体が生徒会長、中川菜々であることを知らない。本人が見ているとは露知らずに盛り上がる様はさぞ楽しそうではあるが、その分菜々の方に予期せぬ被弾を齎しているようで、先程からずっとこの調子だった。

 

「こんなにも沢山の人の大好きを背負っていたんですね……私は」

 

「…そーだな」

 

申し訳なさの中に確かな感慨を含めて菜々が零す。

後々侑達に伝え聞いた話ではあるが、無事決裂していた同好会の面々とは和解できたらしい。事の起因を知っているだけにやはり安堵はあった。

 

「……それと、ゴメンな。中川がどう思ってたかなんて考えもせずに当たり散らして……」

 

「気にしないでください。今となっては瀬良さんの気持ちもわかりますし……それに、あなたは私に大切なことを気付かせてくれました。それでお相子にしましょう」

 

相変わらず彼女が雄牙の何に対して感謝しているのかはわからないままだが、そう言ってくれている以上はこちらからどうこうする理由はなかった。

 

「それにしても驚きました。まさかウルトラマンの正体が瀬良さんだったなんて……」

 

「言い触らさないでくれよ……どうなるかわかったもんじゃねぇ」

 

「そこは心得ています。ヒーローというものはその正体を隠すからこその魅力がありますからね! そしてその秘密を知る、言わばバディの立場に私が……燃えますね!」

 

語尻のみその声量を強めた菜々が心底楽しそうに目を輝かせた。なるほど。こうしてみるとやはりせつ菜と同一人物だ。

 

「……てか、優木せつ菜の正体を明かさない理由ってまさか……」

 

「はい……変身ヒーローみたいでカッコいいから……と思ったのがきっかけでしたね」

 

「…想像以上にしょうもない理由で逆に安心した」

 

ともあれ互いの秘密を知る者同士という、少々奇妙な関係が出来上がってしまった訳だが……まあ、この分では付き合い方に大きな影響を及ぼすことはないだろう。

 

「まあとにかく……今度とも、よろしくお願いしますね」

 

「ん……こっちこそな」

 

関係性の変化はもう一つあったか。

 

一連の騒動を経た結果、侑、歩夢、そして雄牙の3人は新たに同好会の部員として加わることとなった。

 

とは言っても歩夢と雄牙に関しては完全に侑に引っ張られる形になっただけではあるが、まあ別に、さほど嫌な気持ちがある訳でもなく。

 

それに同好会にはウルトラマンタイタスの変身者である南雲昂貴がいる。同じ場所に身を置くのは情報共有という観点から見ても、雄牙にとって悪い話ではなかった。

 

「今日の放課後から早速活動再開です。ファンの皆に私達の大好きを届けるためにも、鍛錬に励んで―――、」

 

「雄牙ー!」

 

菜々の声を遮る形で、別な声が教室内に響いた。

 

同時に騒めきも生まれる。それもそのはずだ。その声の主がこれまでこの教室に顔を見せることこそあれど、雄牙に声を掛けたことなど一度もなかったのだから。

 

「情報処理学科の宮下さん……? お知り合いだったんですか?」

 

「前に一回話したきりだけど……てか、俺名前教えたっけ」

 

「このクラスの子に聞いたら教えてくれたよ~」

 

菜々と共に斜め上へと傾けた目線の先で宮下愛はにぱりと笑う。

人脈と言い、遠慮なくファーストネームで呼んでくる辺りと言い、彼女は常人よりも壁というものが薄いらしい。

 

で、問題はそんな彼女が雄牙に何の用かという話だが……、

 

「それでさ、雄牙ってスクールアイドル同好会に入ったんだよね?」

 

「あぁ……うん。成り行きだけどな」

 

「やっぱそうなんだ! じゃあさ雄牙、もしよかったらでいいんだけど、愛さん達に同好会のこと色々教えてくれない? 昨日の屋上のライブ見て、愛さんワクワクしちゃってさ~」

 

興奮気味に語る愛の一方で今にも爆発しそうな勢いで鼻息を拭き荒らす菜々の姿が横目に映る。

 

今は生徒会長モードであるが故に抑えているのだろうが、自分のライブがきっかけでスクールアイドルに興味を持ってくれたという事実がこの上なく嬉しいのだろう。本当は今にでもその大好きを爆発させたいと目が叫んでいた。

 

「…でしたら、体験入部は如何でしょうか」

 

その代わりを務めたのは一つの助言だった。

今はあくまでも生徒会長として生徒のサポートをする。その切り替えの潔さには改めて感心するものだ。

 

「体験入部かぁ……いいね、それ!」

 

「お決まりのようですね……瀬良さん、案内の方をお願いしてもいいでしょうか?」

 

「まあ……それくらいなら」

 

せつ菜を捜索していた際に力を借りた愛が今はこうしてせつ菜のライブに魅せられて同じステージに立とうとしている。

 

そんな奇妙な縁を感じながら、雄牙は一先ず、注がれた二つの視線を前に首を縦に振るしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌の練習に、ダンスの練習。それに筋トレかぁ~。これぞアイドルって感じでアガるね! それじゃ早速やっていこーっ!」

 

「ちょ、ちょ、ちょーっと待ってください! 何で知らない人が仕切ってるんですか!?」

 

放課後になっても宮下愛の快活明朗さは衰えることを知らず。

ベクトルが違うため一括りには出来ないが、賑やかさで語るならばかすみと遜色ない。活動再開初日から喧騒が支配する部室に旧同好会メンバーも苦笑いを浮かべていた。

 

「ていうか、皆それぞれメニューが違うんだね」

 

「…まあ、色々あってさ。方針が固まるまでは、取り敢えず各々がやりたい練習をするってことになってる」

 

そのため皆で同じ練習を……という部活らしいものは暫くお預けになるのだが、旧同好会の一件を鑑みれば致し方あるまい。

 

体験入部の内容としては聊か不相応である気がしなくもないが、まあ理解の無い人物ではないのでそう気に掛ける必要はないだろう。

 

「……そっちの2人も体験入部?」

 

「うん、りなりーにテルくん。学年は違うけど、愛さんと同じ情報処理学科だよ」

 

「え、えっと……天王寺璃奈(てんのうじりな)です。1年生です」

 

「同じく1年の星海耀(ほしみてる)です。僕の方はその……付き添いで」

 

愛に紹介された2人の1年生。両者とも面識のある人物ではあるが、やはり片割れの少女が生む˝無˝には相変わらず慣れない。

 

『コイツやっぱり……』

 

『…君も感じたか、タイガ』

 

対し耀と名乗った男子生徒の方は小柄な点を除けば至って普通の高校生ではあるが、体内に宿るウルトラマン達にとってはそうではないようで。

警戒と呼ぶほどのものではないが、何か違和感を覚えている。そんな様子だ。

 

『この気配は……なんだ? まるで混ざっているような……』

 

『複数の気配が混在している、という点では同意だな。当人にその自覚のない可能性もあるが……昂貴』

 

(見張ってろってことだろ。部活の間だけでいいか?)

 

『構わない。どうであれ向こう側から接触してきてくれたのは好都合だったな。雄牙、君にも頼めるだろうか』

 

(……わかった)

 

ガヤガヤワイワイと他の部員達が会話に花を咲かせる一方でテレパシーを介し物騒な警戒網を張る。

 

タイタス曰く、自分達同様何かしらの存在がこの星海耀という1年生に宿っている可能性が高いらしい。彼も言った通り耀自身がそれを知覚しているのかは定かではないが、そうであれ用心するにこうしたことは無さそうだ。

 

「それじゃあいざ部活体験……レッツゴーッ!」

 

こうして不穏な気配も交じる最中、宮下愛の号令によって新生虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。その活動は幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、おおぉぉ……!」

 

「あら、彼方ったら随分と身体が硬いのね。ちょっと意外……ねっ」

 

「無理無理無理ぃ~! 彼方ちゃん壊れちゃうよ~!」

 

「その辺にしとけ朝香。後で迷惑被るのは俺なんだよ」

 

前屈の姿勢で悲鳴を上げる彼方を見かね、意地悪く笑う果林を諫める。

 

一先ず三つのグループに分かれることとなり、こちらは筋力トレーニング及びに柔軟体操のメニューに取り込んでいる訳なのだが……案の定絶望的に身体の硬い幼馴染に手を焼くこととなる。

 

「それにしても、果林ちゃんも入部してくれて嬉しいよ~」

 

「元々スクールアイドルに興味はあったから、丁度いい機会だと思ったのよ。パフォーマンスで言えば初心者だけど、身体作りには自信があるから任せて。ほーら彼方、もう少し曲げてみましょうね」

 

「ギブ! 果林ちゃんギブ!」

 

せつ菜の一件を経て入部したのは雄牙達3人だけでなく、この朝香果林もそうだ。

現時点で10人。体験入部中の3人も加わるとなれば13人になる。旧メンバーが6人だったことを考えるとこの短期間でまあ随分と大きくなったものだ。

 

「おおぉぉぉ~……!」

 

「……こっちにも随分と硬い子がいるのね」

 

彼方以上に身体の曲がらない少女が一人。ほぼほぼ直角の姿勢で固まっている天王寺璃奈には流石の果林も苦笑いを浮かべていた。

 

「璃奈ちゃん大丈夫? あんまり無理しない方が……」

 

「大丈夫。やる」

 

耀の心配を意気込んで跳ね退けた璃奈が何とも気の抜ける掛け声と共に再度前屈を試みるがやはり動かない。プルプルと小柄な身体が震えるのみで、その上体が微動だにすることはなかった。

 

(…警戒する程か? 見るからに人畜無害の小動物って感じだが……)

 

『彼の中にいる者の思惑がわからない内は何とも言えないな。少なからず、彼自身に何か邪な意思がないのは確かなようだが……』

 

宇宙人の中にはウルトラマンを始めとして、他者の肉体に憑依する能力を持つ種族が存在するという。

 

警戒され辛い彼の気質を利用した何者かが息を潜めている可能性もある。どうであるにしろ、タイタスの覚えた違和感の正体が明らかになるまでは警戒することに越したことは無さそうだ。

 

(直接聞けりゃ早いんだろうが……そう上手くはいかねぇだろうしな)

 

溜め息が空に昇ってゆく。

真新しさも交じる練習風景の中、昂貴は存在するかもわからない侵略者に果てしない徒労を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで皆が何をやりたいって話だけど……何かある?」

 

時と場所は移り部室。

出来る範囲で皆の活動を体験してみたい。そんな意見の元各所を回っている愛達が次に訪れた場所で行われていたのは今後の方針会議だ。

 

「はいはい! やっぱりかすみんの可愛さをたーっくさんアピールできるステージがいいと思います!」

 

「私は皆の大好きを爆発させたいですね! 火薬もドーンっと使って!」

 

「爆発って物理的に!? それは危ないんじゃ……」

 

雄牙達が見守る中で部室の一角の温度が局所的に上昇してゆく。

 

原因は優木せつ菜と中須かすみだ。熱くなる両名の主張に協調性はなく、一向に纏まる気配がしない。何故よりにもよって崩壊の原因にもなった喧しさの二大巨頭にこの役割を任せてしまったのか。

 

「白熱、してる」

 

「青春って感じだね~。劇を見てるみたい」

 

尤もこの宮下愛が加われば三大巨頭となるのだが。

 

「劇と言えば……、今日はしずくさんの姿が見当たりませんね」

 

「あ~…、しず子なら演劇部の方が忙しくなっちゃったらしくて、暫くは顔を出せないって……」

 

水と油が奇跡の表面張力でギリギリ形を保っている状態であるのがこの同好会であると改めて実感させられるというのに。

 

しかもこれでまだフルメンバーでないというのだから恐ろしい。これ以上どうカオスになれというのか。

 

「さっきエマっち達とも話してきたけど……やっぱり皆すっごいやる気だね!」

 

「でも、言ってることはバラバラ」

 

「それなんですよね……グループとして活動する以上、やはりどこかで統一性は持たせるべきなのですが……」

 

各々が爆弾並みの個性と主張を有するメンバーが一つになったグループというのも悪い意味で想像がつかない。

 

一体どこに向かっていくのか。再始動したばかりだというのに先行きが思いやられるばかりだった。

 

「…え? グループ……だったんですか?」

 

そんな状況に一石を投じたのは意識の外にあった耀だった。

そこでようやく彼の観察という本来の役割を思い出す。しまった。ヒートアップする連中に気を取られていて完全に存在を忘れていた。

 

「タイプも意見もバラバラだから、てっきりソロでやってるのかと……。昨日の屋上ライブも1人で歌ってましたし」

 

「ソロ……」

 

そして早くもその役割は再度忘却の果てへと消える。

彼の発言はある意味、この同好会の本質を突くものだったから。

 

「…アリなんじゃないか?」

 

続く形で会話に参入する。紡がれたのは肯定と提案だ。

 

「妥協案みたいになるのは優木達の気持ちに水を差すみたいであれだけど、誰とも衝突しない、思いっきりやれるって考えれば、仕方のないところはあるだろ」

 

「それは……そうですね」

 

せつ菜もそれを否定はしなかった。彼女自身、薄々思っていた部分はあるのだろう。

 

「ですが……私の一存だけではどうしようも出来ません。この件は一度皆さんと話し合って決めましょう」

 

「…だな」

 

スクールアイドルというのはグループがメインであり、一般的なイメージもそれで固められている。ソロアイドルも存在しない訳ではないが、それもごく一部。正直グループ活動の波に埋もれてしまっていると言っても過言ではない。

 

彼女達も元はグループでの活動を見据えていたのだ。それをいきなりソロに切り替える、となれば不安は付き纏うものだろう。

 

「おぉ、なんか急に真剣な雰囲気に……」

 

「…何かマズいこと言っちゃいましたかね」

 

「大丈夫、だと思う」

 

変容する空気感に新顔3名が首を傾げる。話題の発端となった耀には若干の混乱も滲んでいた。

その様はやはりただの高校生……むしろ若干弱々しくも思える。

 

『害があるようには思えないが……どうにも引っ掛かるんだよなぁ……』

 

いまいち掴み切れない部分がある彼だが、異様な気配を纏っているのもまた事実。

相方が蚊帳の外へと移る一方、タイガだけが抱く違和感に頭を悩ませていた。

 

 




5話辺りで顔見せをした愛さんとりなりー、そして星海輝くんの参入回となりました
そんな彼ですがタイガとタイタスは何やら妙な気配を感じ取ったようで……?

以前にも書きましたがアニガサキとは異なるルートを進むつもりですので相違点はそれなりにあります
果林さんが現時点で入部を決めていたり、逆に歩夢はまだスクールアイドルを始めていなかったりと徐々に乖離が進んでいますが……見届けて頂けると幸いです
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