トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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ゼロライブの頃から僕の小説を読んでくださっていた方にはお解りでしょうが、この作者はAqoursちゃんのライブの後はその余韻で2,3週間執筆が出来ません
とどのつまり本っっ当にすみません

ともあれようやっと再開です
デッカーも放送開始しましたし、楽しくいきましょう


23話 動き出すもの

 

 

『……ん?』

 

どろり、と。

全身に纏わりつき、這いまわるような気味の悪い感覚に目を覚ました。

 

『ここは……?』

 

知覚する不快感とは正反対に、タイガの開いた視界に映るのは色鮮やかな明るさだった。

広がっているのが人間社会であることはすぐにわかった。見慣れた場所に比べて少々閑散として風景ではあるが、内包する熱に大きな差は見受けられない。

 

「雄牙―!」

 

『え……?』

 

最も身近である地球人の名を呼ぶ声を察知し、反射的に振り返った先で言葉を失う。

そこにあったのは声の主であろう幼女と、どこか見覚えのある幼い少年。その後者が自らの一体化している人間であると理解した時、電撃に打たれたような動揺がタイガに走った。

 

『これは雄牙の記憶……いや、もしかして夢ってやつか?』

 

一瞬混乱が走るが、訓練校で習った知識が呼び起こされたことで平静が取り戻される。

 

人間というのは睡眠状態にある時、夢と呼ばれる空想を見ることがあるという。どういう理屈かは知らないが、どうやら今は雄牙の夢の中に迷い込んだ形になるらしい。

 

『へぇ~。これが子供の頃のアイツかぁ、今と違って可愛げのあるモンだな! こっちは……侑か?』

 

状況が理解できれば案外余裕が生まれるものだ。既に楽しむ方向へシフトしたタイガはまじまじと雄牙の記憶と思しき夢の中を見回した。

 

知識としてのみ持ち得ていた情報をこうして体感するというのは中々興味深いものだ。もしかすれば笑い話に出来るような雄牙の過去も垣間見えるかもしれないという期待も少々あった。

 

 

 

 

 

 

『ッ……!?』

 

だがそれもひと時のこと。

どこからか響いた何かが割れる音。直後に世界を飲み込んだのは全てを覆い隠すような黒だった。

 

「待って……待ってッ!」

 

混沌と呼ぶに他ならない闇色が夢の世界を侵食してゆく中、ただ1人幼き雄牙は泣き叫んでいた。

 

直前まで彼と共にあった少女の姿が黒の中へと飲み込まれてゆく。雄牙も離すまいと必死に手を伸ばすが、届くことはなく、その非力さを嘲笑うように小さな身体は虚無へと還った。

 

「1人にしないで……」

 

今にも押し潰されてしまいそうな声が漏れ出た時、タイガもまた強烈な浮遊感に誘われるように全ての感覚が覚束無くなってゆく。

 

次に視界を満たしたのは、何物をも無に帰す黒の色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ……!?』

 

文字通り弾かれたようにして意識が現実の層位へと戻ってくる。

今は霊体の状態だというのに、それでもはっきりと疲労を感じ取れるほどの何かが身体と心を巡り、残留していた。

 

『今のは……一体……?』

 

繰り返すが地球人の見る夢に関する知識など聞きかじった程度のものだ。本来夢とはこういうものであり、光の国の知識が誤りであった可能性もあるが……これはそんなものではないという確信があった。

 

『雄牙、お前……』

 

まだあの夢の中に在るのか、目を閉じたまま苦悶の表情を作る雄牙を見下ろすタイガにもまた、別な苦難が生じた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「侑さん達、遅いですね……」

 

「寝坊でもしたのかしらね?」

 

「それは果林ちゃんでしょ~」

 

週初め。本来憂鬱なものであるはずの月曜日の始業前だが、この虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会には関係がない。始業前時刻にも関わらず部室には喧騒が舞い降りていた。

 

だがまだ足りない。ある意味今の同好会を作り上げたと言える面々の到着を皆で待つ。

 

「ごめん皆! 遅くなっちゃって」

 

「いいえー、まだ朝練始まってませんから、ギリギリセーフですよ侑先輩♡」

 

「…すみません。俺が寝坊しました」

 

全員が揃ったのは暫くした後だった。雪崩れ込んできた3人はスクールアイドルではないため、本来練習の進行に影響はないはずだが、それでも待とうというのが皆の意見だった。

 

「……雄牙君が寝坊なんて珍しいよね。あんまり顔色もよくないし、体調悪いなら今日は休んだ方が……」

 

「いや……大丈夫。変な夢見ただけだよ」

 

遅刻組の1人である瀬良雄牙に耀は注視を向けた。不安気に歩夢が漏らしたように優れない顔色が理由ではない。自分の中にいる˝同居人˝からの忠告が故だった。

 

『やっぱコイツがそうだな。中からあのウルトラマン……角の生えた方の気配を感じる』

 

その同居人―――フーマと呼んでいる彼は低い声で言った。

ウルトラマンが人間の中にいる。膠には信じ難い話であろうが、耀にはそれを抵抗なく飲み込めるだけの条件が揃っていた。

 

『筋肉ダルマの方はあっちの柄の悪い兄ちゃんか……クッソ、よりにもよってな場所に来ちまったモンだぜ』

 

彼がどうして近くにウルトラマンがいる状況を忌避するのかはわからない。

だって、だって彼も―――、

 

(…フーマも、ウルトラマンなんだよね?)

 

『……だからどうした』

 

(……だったら、仲良くすればいいのに、って。同じウルトラマンなんだし)

 

直接彼から自らがウルトラマンであるという言葉を聞いた訳ではない。でも何年も同じ時を共有していると否が応でも察してしまう部分はあるし、フーマもそれを否定することはなかった。

 

『……前にも言ったが、一言にウルトラマンっつっても全員が全員自己犠牲の善意に富んだお人好しって訳じゃねぇ。俺は極力、面倒事には首突っ込みたくないんでな』

 

でもフーマは耀や世間の抱くウルトラマンのイメージとは外れた場所にいるようで。

2人のウルトラマンが出現しても……いや、そのもっと以前からも。どれだけ怪獣が街を襲おうと、本来の姿で人々を守ろうとすることは一度としてなかった。

 

(あの人達と関わりたくないのは、それが理由?)

 

『まぁ……な。正義感と同調圧力の塊みてーな連中だ。下手に正体明かせば俺まで正義の味方ごっこに付き合わされ兼ねねぇ。……それに』

 

(それに?)

 

一瞬、内にいるフーマの目線が自分に重なった気がした。

 

『いや……なんでもねぇ。まあとにかく気にすんな。俺は俺で上手くやる』

 

言い切ったのを最後に彼の気配が霧散してゆく。話はここまで、ということらしい。

 

「私達も、行こう?」

 

「あぁ……うん。行こっか」

 

気付けば既に部室から璃奈以外の姿はなかった。意識を内へと向けている間に練習場所へと向かったらしい。

 

「耀くん」

 

急がねば置いて行かれてしまう。そう思いすぐさまその後を追おうとするが、駆け出した直後に璃奈によって呼び留められる。

 

「……ありがとう。一緒に入部してくれて」

 

無機質な表情から投げ掛けられたのは意外な言葉だった。

特別感謝されるようなことをした覚えはなかった。これまでずっと璃奈と一緒だったから、今回もそうしただけ。ここにいるのは耀の意志でもある。

 

「ううん……僕も璃奈ちゃんがどんなスクールアイドルになるのか、見たいから」

 

だからそれを璃奈が嬉しく思ってくれているのは、やはり耀にとっても嬉しくて。自然と穏やかな熱が顔から広がってゆく。

 

「急ごう。練習始まっちゃうよ」

 

「うん」

 

でも、璃奈にも負けないくらい同じ時を共有してきた友もいて。

 

そんな彼から覚えた違和感は、この温もりを以ってしても拭うことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライブ?」

 

放課後になって少しその感覚も遠いものとなってきた頃。

針のように胸につかえていたしこりは、また別の事象によって上塗りされることとなる。

 

「うん。やりたい……というか、やる。約束したから」

 

「急ですね……その気持ちには是非とも答えたいところではありますが……」

 

部室についた璃奈が開口一番に伝えたのは自分もライブがやりたいという意志。休み時間の間に何人かのクラスメイトに囲まれている姿は確認しているが、その際に約束したことなのか。

 

どうであれその実行には多くの課題が伴うことは素人の耀から見ても明らかだった。

 

「色々足りないのはわかってる。でも、皆応援してくれるって言ってくれた……それに応えたい」

 

当人も現実的ではない申し出であることは自覚しているのだろう。でもその上で璃奈は言葉を連ねた。

 

「私は、言葉とか表情で、上手く思ってることを伝えられない。でもせつ菜さんのライブを見て、スクールアイドルなら出来るんじゃないかって思った。だからやりたい。皆に応援してもらえて嬉しいって気持ち、伝えたい」

 

吐露された真意が彼女をそうさせているのは耀が一番知っている。

ここでそれを打ち明けたということは、それだけの覚悟が彼女にあるということだ。そうなると背中を押したくなるのが性だった。

 

「いいんじゃない?」

 

「決めるのは、璃奈ちゃんだもんね」

 

「チャレンジしたいという気持ちは、大切だと思います」

 

紡ごうとした声は愛によって先を越される。それを皮切りに次々と賛同の声が上がった。

 

「それで、どこでやるかは決めてるの?」

 

「まだ……なんにも。だから協力して欲しい。勝手なのは、わかってるけど」

 

「そんなことないよ! 私達も協力する……皆で璃奈ちゃんのライブ、成功させよう!」

 

侑の号令で短く「おーっ!」と部室の中で声が重なる。

その瞬間に見た璃奈の表情に変化はなかったが、確かな喜びが秘められている。そう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り、未だ昨日の爪痕を残す街の中。特徴的な制服を着込んだ男女が揃ってタブレット端末に目を落としている。

 

「どう?」

 

「ここも何も反応がないっすね……やっぱり偶然だったんじゃ」

 

「そんな訳ないでしょ。パゴスはともかく、テレスドンとアーストロンは地中深く……地圧も地熱も地表とは比べ物にならない場所に生息してる怪獣。そんなのがわざわざ埋立地の地熱目当てに上がってくる訳ないし、やっぱり何かあるはずだよ」

 

チームの先輩である多達未央と共に出向いた調査任務は難航の色を指していた。

先日に同時出現した3種類の怪獣に何らかの関連性があると考えた上層部からの命令だが、未だ目立った結果は出ていないというのが現状で。

 

「やっぱり埋立地じゃ地層の方までは計測できないよね~……。もうちょっと内陸の方まで行って、そこでもう一回試してみよっか」

 

「おす。……てか先輩元気っすね。やっぱり楽しいですか? フィールドワーク」

 

「当然! こんなに楽しくて有意義な仕事他にないってのに上は解析調査ばっか……研究のなんたるかをわかってないって、遥也も思うよね!?」

 

「や、俺はその辺珍紛漢紛なんで……」

 

「勿体ないな~。知識はあるに越したことないのに……この際遥也もこっちの道に―――」

 

「先輩まだ任務の途中なんで後にしてください」

 

E.G.I.S.における未央の役割は主に怪獣の解析や調査任務全般の総括。基本的に戦闘員で構成されているメンバー内では数少ない役職を背負った隊員だ。

 

その強すぎる好奇心や探求心が故に一部からはマッドサイエンティストと称されてこそいるが、その悪評を補っても余りあるほど彼女は優秀だ。特に怪獣関連の造詣に限るのならば彼女の右に出る者はそういないだろう。

 

「……ん? ねぇ遥也。あれ雄牙くんじゃない?」

 

「え?」

 

そんな未央の提案から別な場所へと調査地点を移そうとした折、ふと何かに気付いたような彼女の声に釣られる形で指し示された方向を見やる。

 

「雄牙くーん!」

 

それが確かに自らの従弟であると認識した瞬間には隣にいたはずの先輩はそちらへと駆け寄っていた。遅れて遥也もその後に続く。

 

「よう雄牙、最近よく会うな……って、珍しいな2人か。侑ちゃんは?」

 

「ああえっと、ちょっと雄牙くん調子悪そうだったから、今日は同好会休みにしてもらって……。侑ちゃんはまだ学校にいます」

 

「大丈夫だって言ってんのに歩夢が無理矢理……」

 

そう言えば同好会に入部したと先日会った際に言っていたか。話を伺う限りだと雄牙の体調を憂いた歩夢に早退させられた形になるらしい。

 

「でも実際ちょっと顔色悪いよ? なんかあったんならお姉さん話聞くよ~?」

 

「いや別に……ちょっと嫌な夢見ただけです」

 

「嫌な……夢?」

 

「……」

 

雄牙の顔に陰りが差したのを遥也は見逃さなかった。そうして同時に察する。顔色が優れないのも、歩夢が少々強引に彼を連れ帰ったのもその夢の内容に起因していることを。

 

そしてその夢の内容とは、この場にいた全員が察することだ。

 

「…どうせだし家まで送ってくよ。向かう方角同じだし、いいでしょ遥也」

 

「そうっすね。俺も構わないです」

 

「いや2人とも仕事中なんじゃ……」

 

「困った市民助けるのも立派にE.G.I.S.の仕事だよ。いいからほら、乗った乗った」

 

答えは聞いてないと、未央が引き摺る形で雄牙を車内に連れ込んでゆく。癖の強い性格に隠れているが、やはり根の部分に芯は通っていると改めて感じさせた。

 

「歩夢ちゃんはどうする? 雄牙は俺等で送っていくから、部活の方戻っても大丈夫だよ」

 

「あ、じゃあお言葉に甘えて」

 

「うん。ありがとうな。雄牙のこと気に掛けてくれて」

 

謝礼と共に会話が途切れる。本来ならばここで互いに向かうべき場所へと向かうはずだった。

だが両者の間で蜷局を巻く空気がそうさせない。舞い降りたのは沈黙だった。

 

そして数拍の間の後、

 

「…本当にありがとうな。いつも」

 

「いえ……私も、私がそうしたくてやってるので」

 

いつかに交わした言葉が、押し潰されそうなほどの痛みを伴って駆け抜けてゆく。

 

その痛みを忘れるなと、教訓のように胸に刻み、遥也は重荷を背負わせた少女の背中を、静かに見守った。

 




雄牙の異変が目立つ回となってしまいましたが、昂貴の例に倣い今回から暫く耀くんメインのお話となります

彼の中にいるフーマはあのフーマです。ただ他2人と同様で彼も原典とは少々異なるようで……?

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